社員の活力を引き上げるには?
327385 マツダ「目標を追わず理想をめざす」理由2
 
森浩平 ( 25 東京都 会社員 ) 17/06/17 PM06 【印刷用へ
■他社のクルマを目標にするな

――先ほど世界レベルという話の中で欧州車の話が出ましたが、開発に際しては欧州車を指標にしているんですか?

【藤原】目標を作る時には指標にしていません。自分たちの考えで目標を作れと言っています。ただし、作った後に自分たちがどこにいるかということを知るために、他車の評価をしても良いと。

――負けていないかどうかを見るため、ですね?

【藤原】自分たちがやりたいことが負けていないかどうか、今のレベルがどうかってことなら、やっても良い。ただ目標はそれで決めてはいかんです。「ヨーロッパの何とかのクルマに対して、この性能で5%勝ちます」みたいな、そんなことを書類で上げて来たら破り捨て……いや、厳しく指導します。

――そういうベンチマーク的な開発手法は、今、やっている会社がいっぱいありますね。

【藤原】私がドイツの研究所にいた1989年に、ドイツの森の中をW124で走っていたんです。細い道だったんですけど、対向車がこちらにはみ出して来て「あっ、もうダメだ」って思った所から、無理やり曲がってかわしました。その時の、接地感のある挙動がすごかったんですね。そこからW124のトリコなんです。30年以上、あれをやりたい、ぜひやりたいとずっと言い続けています。

――W124が今の言葉で言う「神グルマ」だったかというとそう言うわけではなく、ダメなところもあったんですが、ただ、いくつかのポイントについては本当に感動する様な美点がありました。そういうクルマは、今探してもないです。お金があっても欲しいクルマがない今、マツダがそういうものをもう一度作ってくれるとしたら素晴らしいです。だから、目標として日本の自動車文化のための良いクルマ作りがあり、そのための方法論としてコモンアーキテクチャーがあるという話には、非常に希望を感じます。

【藤原】ありがとうございます。でも、まだまだです。CX-5でもまだ全然満足していません。だからもっと良いクルマにしていくようにしごいて……いや指導しているんですけどね。


――確かに、数値のベンチマークを置くと分かりやすくはなりますが、大体ロクなことが起きないですよね。

【藤原】そうなんです。数値に置き換えると大体失敗しているので。エンジンでもそうです。アクセルペダルを踏んだ時の素直な力の出方が大事なのであって、加速タイムが何秒とかではありません。素直な特性が大事なんです。(数値ではなくフィーリングの方に)集中させているものですから、カタログ燃費は落ちたりしますけどね。でも実用燃費は上がっているんです。

――カタログ燃費というのは、国交省届け出のJC08モード燃費ですね。まさにあれは、数値設定による弊害ですね。“お受験対策”の数字であって、クルマの本質とは関係ない話で。

【藤原】カタログ燃費の向上に特化してしまうと、特殊な運転の仕方に合わせたセッティングになって、お客さまにとってもっと重要な、実用燃費やドライバビリティが悪くなります。だからあんなもの、止めてしまえ、と。
数値目標に意味がない理由

――藤原専務のお話を伺っていると、クルマ作りへの基礎的な考え方が、過去のマツダも含めたこれまでの自動車メーカーの考え方と違うと強く感じます。私の理解では、それはバブル末期の5チャネル構想※の失敗や、リーマンショックの失敗で何度も経営危機に襲われたことの反省がベースになっているように思うのですが、それは理解として合ってますか?

※5チャネル構想……国内販売を強化するため、販売網を「マツダ店」「アンフィニ店」「ユーノス店」「オートザム店」「オートラマ店」の5系統に増やし、多車種展開を行った。

【藤原】そうですね。もちろんそこからつながっています。ああいう経験は、もう二度としたくないという思いがあって……何度も浮いたり沈んだりしていますから、もうホントに嫌なんですよ。二度と落ちたくないという思いが強くあり、落ちないために何をするんだと考えた時に、競合車と対比して勝った負けたと右往左往すると、おごったり、目先の事にとらわれたりするので、競合車と関係なく、自分たちで考えた普遍的な高い目標……目標を理想と言い換えてもいいと思うんですが、そういう外部要因に影響されない目的を置いて、それに向かってモノ作りをしていくべきだと考えています。

――競合車を分析して数値目標化すると、開発の間に新たな競合車が出てきたら、ゴールが動いてしまいますからね。それだと開発中に何度も目標が変わって、開発が手戻りしてやり直しになってしまって、無駄な仕事ばかりが増えるということですね。

【藤原】その通りです。フォード時代はずっとそれをやり続けていたんです。もうそれは二度とやりたくないんです。それをやっている限り「追いかける側」であって、それは心理的にすごくつらいんですね。周りをキョロキョロ見るのではなく、唯一の理想に向かって開発を行う方がはるかに健全です。



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