国家の支配構造と私権原理
32684 「公務」とは
 
中村朋子 ( 54 大阪 教育 ) 02/06/04 PM01 【印刷用へ
「日本国憲法」では、公務員は「全体の奉仕者」と位置付けられています。古い言い方で申せば「官吏」(勿論「官」と「吏」の地位・役割の懸隔は極めて大きく、「官」が「上意」とすれば、「吏」は「下達」の役割を果たすものでした。)ですが。

 中央集権の領域主権国家、特にそれが明確な形で現れた16〜18世紀ヨーロッパのいわゆる「絶対王政」の定義は「資本の原始蓄積期、国税・官僚・常備軍(または警察)を握る国王が絶対権を行使する政治形態」となっており、近代国家は「公務員ー官吏、官僚」の存在を必須としています。

 前近代でも当然和漢の律令体制下の官職、幕藩体制化の徳川家産体制の拡大の形での組織の官職はありましたが、「国家としての活動の担い手」というより国内統治の支配機構でした。

 それに対し、上記絶対王政下での官僚は、いわば「国益」−national interest推進の「担い手」でした。すなわち、「絶対王政」を生み出した商業資本家の活動を支え発展させる(Marchanterism)ための装置でした。国内の度量衡の統一、道路の整備、国内関税の除去、貨幣制度の改善等々。また対外活動の援助、そのための戦費の調達。これらはすべて官僚の任務でした。

 王の下の政府機関として、官職として明確に組織されたことで、国家活動とはどういうものか、何をどうすればよいのかが誰の目にもはっきり捉えられるようになったのが、この絶対王政下です。

 いわゆる「市民革命」はこの装置から王を除き、代わりに議会を置くだけで済んだのです。つまり行政は市場活動の「雇員」なのです。

 だから現在でも、社会科の教科書には経済活動の担い手として「企業(生産)・家計(消費)・政府(調整)」の三者が併置されています。

 18世紀前半、産業革命前夜には「夜警」であればよいとされた「国家」が「ケインズ革命」−ニューディ−ルを機に、市場活動そのものを「公益」、「レゾンーデートル」とすることを明言する。よって「公務員」はそのための装置となるのです。

 「公務」とは何なのか。現在の行政をもとに考えてはならないでしょう。現在の行政の欠陥を論っていても、何も生まれないでしょう。
 基盤の市場社会そのものが誤っているのですから。
 
 日々生産に励む人間が本来どうあることが望ましいのか、現状の問題点をどう解決してゆくのか、それを特別なこと、生活とは切り離されたものとしてでなく、考え実行してゆく、その営為が「公務」−「皆のための務め」でしょう。「期待」するのも「応望」するのも公務です。官と民の区別がなくなるーそうした社会が必要なのです。決して片手間に行うことでなく、日々の営為の一環として、「皆のため」とはっきり意識されたことを為す、それは必ず充足の喜びをもたらすはずです。
 
  List
  この記事は 32590 への返信です。
  この記事に対するトラックバックURL  http://www.rui.jp/tb/tb.php/msg_32684
  ※トラックバックは承認制となっています。

 この記事に対する返信とトラックバック
公務員が「なんで屋」にこない理由 「なんでやRADIO」 05/12/05 PM11
96836 公務員〜単なる私権獲得の調整役はもういらない〜 久保田彰子 05/09/05 AM00
96815 官が消滅する改革が本物の改革 高梨俊寛 05/09/04 PM00
95974 目先収束に対し一番に伝えるべきこと 谷光美紀 05/08/13 PM11
95928 本来の公務を生み出すためには? 小林有吾 05/08/12 PM10
33288 素朴な思い 大土裕子 02/06/11 PM01
33168 官僚組織の史的考察〜科挙について@ 山澤貴志 02/06/09 PM11

[過去の記事へ]
[一覧へ戻る] [新しい記事へ]


◆実現論本文を公開しています。
 実現論 : 序  文
 第一部 : 前  史
 第二部 : 私権時代
 第三部 : 市場時代
 第四部 : 場の転換
 参考文献

「合同板」必読記事一覧
01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28
ミス大爆発⇒警戒心発の集中力はガタガタ⇒共認圧力発の集中力を形成するには?
トラブルの根底に指揮系統あり。全てをネットへ
隠蔽・言い訳・誤魔化しの横行によって崩壊する私権体制
活力源は、脱集団の『みんな期待』に応えること
今後10年間は充足⇒活力を上げれば勝てる 
新卒者向けセミナー「経営者が語る」〜これからの時代企業が生き残っていくのに必要な力は何か(前半)
新卒者向けセミナー「経営者が語る」〜これからの時代、企業が生き残っていくのに必要な力は何か(後半)
自主管理への招待(1)工業生産から意識生産へ。時代は今、歴史的な生産力の転換を遂げようとしている。
自主管理への招待(2) 社会は、生産力の転換によってしか根底的な変革を遂げることはできない
自主管理への招待(3) 生産から離脱させ、消費へと逃避させるだけの近代思想
自主管理への招待(4) 「頭の中だけの自己」から「実現対象」への追求ベクトルの転換
自主管理への招待(5) 否定し要求するだけの「閉塞の哲学」から、実現対象を獲得した「解放の哲学」へ
自主管理への招待(6) 実現思考とは何か
自主管理への招待(7) 労働の解放のために:自主管理の原則
学生に与う1 いま、社会の基底部で何が起きているのか
学生に与う2 私権の終焉と市場の縮小と権力の暴走
学生に与う3 新しい活力源は、周りの期待に応える充足
学生に与う4 先行して共同体を実現した類グループ
学生に与う5 共同体の母胎は女性が生み出す充足空間
学生に与う6 この行き詰った社会をどう再生するか
供給発のカギは、ゼロから新しい供給者を育成してゆく仕組み
新概念を使いこなせて、はじめて供給者になれる
「観念力を鍛えるには?」(1) 話し言葉と書き言葉の断層はどこから登場したのか?
「観念力を鍛えるには?」(3) 「理解する」とはどういうことか?
「日本人はいつ物を考え出すのか?」(2) 学習観念が役に立たないのはなぜか?
出来ない、覚えられない
「みんなの成功体験」ならいくらでも積める
対面会議の欠陥
民主主義=会議という固定観念
集団統合の新たな仕組み:対面会議を超えて、全てをネットへ
企業革命の切り札は、社内ネット
経営者への提言:会議から社内ネットへ
行動方針4 まず身近な職場を改革してから、社会をどうするかを提示せよ
新時代を開くのは、共同体企業のネットワーク
共同体企業のネットワークをどう構築してゆくか
『類グループが勝ち続ける理由』〜まとめ〜
協同組合法:出資・経営・労働を一体化した働き方をしている人たちは10万人を越えている
「人口減少社会の衝撃!!これからの働き方はどう変わる?」〜今、なぜ労働法について考えるのか?〜
感謝の心を損なう「有給制度」に代わる、『有給休暇一括買取方式』

『るいネット』は、46年の実績を持つ起業家集団・類グループが管理・運営しています。るいネットワーク事務局(Tel:0120-408-333, E-mail:member@rui.ne.jp