学校って、必要なの?
326591 科挙の功罪〜あらゆる制度は自己目的化し、腐敗する〜その1 
 
橋口健一 HP ( 54 大阪 技術者 ) 17/05/18 AM00 【印刷用へ
リンクより引用します。

今回は中国の官僚登用制度の柱であり、現代日本にも大きな影響を及ぼした試験制度、科挙について見ていきます。

科挙は6世紀の隋(遣隋使でもお馴染みです)の時代に始祖の文帝によって初めて導入され、1904年の清朝末期に廃止されるまで、1300年以上続いた制度です。優秀な人間を選抜するとともに、皇帝の権力を強化するのが目的でした。

家柄や出自に関係なく、ペーパーテストの成績さえよければ高級官僚として登用するというのは、世界的に見ても画期的なことでした。事実、18世紀くらいまでのヨーロッパでは、高官は貴族の世襲が当たり前でしたから、中国の科挙は非常に優れた制度として紹介されていたようです。

この科挙ですが、最も効果的に機能したのは宋(960年−1279年)の時代だったというのが一般的な評価です。宋に先立つ隋や唐の時代はまだまだ貴族階級の力が強かったのですが、宋代にもなると、彼らの力は衰えます。宋の時代には、科挙の試験に合格することが、高級官僚へのほぼ唯一の道筋となりました。

中国における高級官僚の地位は、現代の日本のキャリア官僚などに比べると比較にならないくらい強大なものでした。古代の中国では伝統的に公金と私財の区別はありません。賄賂も当然のものでした。官僚は、税や付け届けで集めたお金や供物の中から一定額(一説には、集めたお金のたかだか1%以下と言われています)さえ皇帝に上納すれば、あとは私財とすることが可能でした。

時代にもよりますが、今の日本の金銭価値にすると、兆円から数十兆円単位の蓄財をした官僚も数多くいました。百億円程度の蓄財しかしなかった高級官僚が「清廉な人物」とされていたというのですから、あとは推して知るべしでしょう。出自を問わず、ペーパーテストに合格すればこの地位を得られるのですから、優秀な人間が科挙合格を狙ったのも当然と言えます。

とは言え科挙は、宋代までは、実際に優秀な実務者を選ぶ機能を果たしました。科挙の首席合格者が有能な宰相になったという例も少なくありません。南宋の三忠臣の1人とされる文天祥などがその例です。その理由には諸説ありますが、宋の頃まではペーパーテストとはいえ出題範囲も広く、また「志」を育むような文章も勉強しなくてはならなかったという説が有力です。

趣が変わったのは明(1368年−1644年)の時代です。この頃になると朱子学の影響が強くなり、出題範囲は四書五行(論語、孟子、大学、中庸、易経、詩経、書経、礼記、春秋)に限定されます。ひたすらこれを暗記したものが科挙に合格するようになったのです。

では、どのような人間が科挙に合格するかというと、記憶力が良く、親がお金持ちで、子どものころからひたすら科挙合格に時間を使った人間です。時代によって制度も変わるのですが、科挙にはいくつかのステップがあり、概ね30代後半で最終試験に合格するというのが、合格者の一般的なパターンでした。

子供のころからカウントすると、30年以上ひたすら科挙合格に向けて頑張った人間が合格するわけです。合格できない人間は、60歳、70歳まで試験を受け続けたとも言われます。一族からの期待があまりに高かったため、期待に応えられずに発狂したり自死を選んだりした人間も多かったと言います。
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その2へ続く
 
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