> 外圧が低下しても、上手く統合に成功してる例とかってあるんでしょうか?
典型例としては、佐藤さんが紹介されたワオキツネザルや他のマダガスカルの原猿類のほか、以前、男女会議室でも話題に上った例のボノボでしょうか。
序列性が強く、オスが圧倒的に優位な近縁種のチンパンジーと対照的に、ボノボ社会は序列性が希薄で、かつメスの地位が高いことで知られています。集団間交渉もメスが積極的で、またメス同志が連合してオスを採食場から追い出してしまうこともあるそうです。遺伝子はチンパンジーと殆んど一緒ですから、これは明らかに本能ではなく共認内容の変化によるものです。
ボノボの場合、乱婚的なセックスやホカホカ(メスの性器こすり合わせ)といった頻繁な性行動が重要なコミュニケーション手法となっています。また発情中のメスの性皮腫脹はチンパンジーより大きく、性的存在としての度合いはより高くなったようです。
これは、序列秩序に代わって親和関係を強化することで群れの秩序維持を図った例と言えると思います。外圧が低下し、性闘争の止揚が唯一最大の課題となった集団は、個体間の性闘争や序列、したがってそれに結びつく相互評価も、親和の接触頻度を上げることで極力顕在化させない、という方法論をとったのではないでしょうか。いわば「親和・性」が集団の第一義課題となり、そのためメスの性機能も発達したと考えられます。そして、このような親和の方法論と、メスが相対的に優位であることはおそらく無関係ではないのではないかと思われます。
ワオキツネザルやボノボの例は、いわば「外圧の無さ」にそれなりに適応した生態とも考えられます。しかし現在、マダガスカルの多くの原猿も、このボノボも、レッドデータブックで「絶滅可能種」や「絶滅危惧種」に指定されています。
直接的な外圧しか認識できない彼らにとっては必然的な変化だったのかも知れませんが、サルの世界でも、闘争(能力)適応の条件を欠くことは、長期的に見て種としての適応力を次第に失わせ、絶滅に向かわせる事態を招くようです。
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