日本人と縄文体質
324285 「敵を欺いて勝つのは真の武の道ではない」
 
今野恵祭 17/02/14 PM11 【印刷用へ
日本最古の兵書「闘戦経」は平安時代末期に書かれたものである。そこでは「敵を欺いて勝つのは真の武の道ではない」と日本最古の兵書は『孫子』の兵法を否定したという。日本人の潜在思念はずっと前から「日本では真実をよしとする」精神、つまり事実追求が根付いていると感じる。


日本武人の闘い方 リンクより引用

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■2.「武」は秩序を生み出す力

『闘戦経』の第1章はまさしく、我が国を形作った「武」のあり方について述べている。
(中略)

 国家とは、人々が一緒に暮らしていくための「秩序」を支える存在だ。たとえば、湾岸戦争後のイラクでは国家が崩壊して、民衆を守る秩序が失われた。そこに多国籍軍の一環として自衛隊が進出し、荒廃した土地に住む人々のために飲料水を提供したり、学校を作ったりして、生活を支えた。

 残存する武装勢力がロケット砲を打ち込んでくることもあったが、それで自衛隊が帰ってしまうことを恐れ、140名の現地人のデモ隊が自衛隊宿営地に詰めかけて、「日本の支援に感謝する」「帰らないで」と懇願した。[d]

 自衛隊の「武」が支える秩序がなければ、これらの人々は武装勢力の餌食になったであろう。「武」は秩序を生み出すもの、これが『闘戦経』の大前提である。


■3.敵を欺く『孫子』の兵法は日本人のスタイルではない

『闘戦経』の著者の大江匡房(まさふさ)は、朝廷で『六韜』『三略』『孫子』などの中国の兵書の管理をしている兵法の大家の35代目であった。斎藤孝氏は「1」の冒頭で、『闘戦経』と『孫子』の関係について、こう述べている。

__________
 その当時は特に『孫子』が広く世に知れていましたが、大江匡房は『孫子』の説く「兵は詭道なり」つまり「戦いの基本は敵を欺くことにある」という兵法はどうしても日本人のスタイルではない、と考えたのです。

「戦いというのはただ勝てばいいのではない、ズルをして勝つのではなく、正々堂々と戦うべきである」と、中国ではなく日本の戦うスタイルを宣言しました、それが『闘戦経』なのです。

そうした思いを匡房は『闘戦経』を入れた函に金文字で書いています。
「『闘戦経』は『孫子』と表裏す。『孫子』は詭道を説くも、『闘戦経』は真鋭を説く、これ日本の国風なり」[1,p1]
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

「武」が秩序を生み出す力であるとしたら、単に戦闘に勝てば良いというものではない。敵を欺いて勝ったとしても、その敵は恨みを抱き、いつか復讐してやろうと思うだろう。それでは真の平和にはつながらない。まさに中国大陸のように戦乱の世が続く。

『孫子』は戦闘に勝つ方法を教えた[e]。『闘戦経』は世を治める道を教えている。そこに次元の違いがある。

(中略)


■8.数千年も続いてきた「日本武人の生き方」を説いた書

『闘戦経』の説く武人の生き方を見ると、その理想は中世以降に武士が登場してからも、そのまま受け継がれていったことが判る。

 後に武士の理想像とされたのは楠木正成だが、人々が仰いだのは戦いでの卓抜な機略もさることながら、あくまでも後醍醐天皇の理想に殉じ、最後は弟と「七生報国(七たび生まれ変わっても国に報じよう」と言い交わし、高笑いした後に差し違えて自刃した一途さだった。[f]

 身の栄達も、謀略による勝利も願わず、ひたすらに志を遂げんとする一途さは、幕末に多くの志士を振るい立たせた吉田松陰[h]、明治時代の軍人としてもっとも敬愛された乃木希典将軍[i]、さらには先の大戦の特攻兵[j]にも受け継がれていく。

 こうして見ると、我が国を創り護ってきたのは、まさにこうした武人たちの精神であることが判る。その「武」の精神は2千年以上にわたって、日本人の心の奥底を流れてきたのである。

 現代においても、黒田博樹投手や星野富弘氏のような生き方に我々が感銘を受けること自体が、我々の心の奥底に武人の精神が流れていることを示している。

『闘戦経』は「日本最古の兵書」というより、数千年も続いてきた「日本武人の生き方」を説いた書というべきであろう。それは現代社会においても、そのまま立派に通ずる生き方である。
(文責:伊勢雅臣)

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