次代の活力源は?
324182 職人仕事の本質A〜心・身の統合が肚の座った達人をつくる。
 
田野健 HP ( 56 兵庫 設計業 ) 17/02/10 PM09 【印刷用へ
先の投稿では職人仕事の本質に【職人仕事に共通するのは、他者との関係性を深め、究める「おもてなし」の追求である】を示したが、もう一つの重要な本質に【心・身の統合】という部分がある。
何かの本質を掴んだり、追求の果てに大きな成果を成し遂げる際、頭だけでなく心だけでもない、心と体が中心となった身体感覚が重要になってくる。これは職人に限らず何の仕事をする上でも備えておきたい感覚だ。

>■技を磨く
職人仕事の本質は技を磨くことだといえば、だれも異論はないであろう。
しかし重要なのは、技を磨く意味を深く理解する事である。職人仕事とは人間が主となって自分の身体と道具を使い、技を磨いて仕事を完遂させることであり、機械を主とする工業とは原理が根本的に異なる。
 技を磨くとは、身体を使って何度も繰り返し鍛錬し、身体で覚えることであり、そのための道具も自分の体の一部として使いこなす事である。
職人仕事に長年従事していると、たとえば絞り加工の熟練職人に聞けば「指先が勝手に動くようになる」などという。このことは自分の頭脳が命令や監督をしなくとも、指先の意識が覚醒されて、指先自らが判断力を持つようになる、と言い表せるであろう。現代人にとっては不思議に思える身体の感覚や能力であるが、「手に覚えさせる」などという表現は名人や達人の常套句である。自転車の乗り方を、頭ではなく身体で覚えるといえば、現代人でも分かりやすいであろう。職人の聞き書きを行っている塩野氏は次のように言う
「技は言葉のように短時間では記憶できないということは、職人たちは長い経験から知っていた。技はいくら言葉でいってもわかるものではない。やってみて体が覚えなくては仕方ないのだと。・・・そのために徒弟制度というまどろっこしく、時間のかかる制度が採用されてきたのである。」

技を体で覚えるとは、小脳に記憶することであり、そうなると大脳が意識せずに身体バランスや筋肉の調整などを小脳がつかさどるようになる。
大脳が言葉による情報入力で即座に理解しうるのに対して、小脳が機能するのは、身体を使う作業を繰り返し行う事によって、能と身体の回路が通じるようになるからであろう。
 多くの現代人は、手や指などの身体を「自己」と波認識せず、自己が支配し働かせる物体として見なしている。自己の範囲を、意識しうる頭脳の働きと随意になる神経に限定している。しかし全身を自己として感知しないことに由来する心身や葛藤のストレスは既に広範に認識され、多くの病弊の要因になっているようだ。それを克服する為に心身を統一する多様な道(修行)があり、職人仕事の中に統一の道が組み込まれる。

(中略)

職人仕事とは仕事上の技の上達をめざす過程に、分離しがちな心・身を統合させ、肚の座った達人をつくるという、人としての成長のプロセスが組み込まれているのである。

引用「2009年に出された立命館大学の経営学論説」
 
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