現代意識潮流を探る
322976 日本の品質神話は崩壊?その原因は(2)
 
今井勝行 ( 中年層 東京 会社員 ) 16/12/30 PM09 【印刷用へ
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日本の品質神話は崩壊?その原因は(2)

【つづき】

――品質を作り込むための基本が理解できていないということですか

 そうなのです。多くの企業で、かつては出来ていた“あたりまえの事”が、いまは出来なくなっています。メディアで報道されるような品質問題の多くは、想像することも難しい思いもよらぬ原因で発生したのではなく、ものづくりの基本である5Sや品質作り込みの考え方、3現主義の考え方と言った“あたりまえの事”ができていなかった故に発生しているものが多いのです。

 分かりやすい例として、少し前に話題になった「異物混入」問題を考えてみましょう。もし、生産の現場に、今の生産には使わないものまでが置かれている状態、5Sで言う整理ができていない状態で生産したらどうなるでしょう。当然、誤ったものが混入する可能性が高くなります。そのような職場では、本来持ち込んではいけない物が安易に持ち込まれているケースもあります。整頓ができていないことから、チョイ置きされたものが混入する可能性が高まりますし、そもそもものが無くなったことに気付かない職場になります。それはすなわち異物が混入しても気付かないということになるのです。

 清掃という面ではどうでしょう。設備や治具などの清掃がきちんとできていないと、前に加工した屑や焦げなどが混入することになります。昔の日本の製造現場なら、どのタイミングでどのように清掃するのか、清掃状態のチェック・確認は、誰がどのようにするかといったことは、どの現場でも決めて実行していた“あたりまえの事”です。ところが、今の現場を見てみると、清掃のチェックシートそのものが無かったり、あっても、やったかどうかだけしかチェックしていなかったりというところが少なくありません。清掃の手順ややり方がマニュアル化されていなかったり、マニュアルがあっても、正しく清掃作業ができていなかったりという現場も散見されます。清掃は、設備の予防保全にもつながる“あたりまえの事”なのに、できていない現場が意外に多いのです。

 異物混入の中で最も多いのが毛髪なのですが、食品を扱う企業は、通常どこでも作業着やマスクや帽子とともに毛髪やほこりなどを持ちこまないよう、ローラーがけの仕方や手洗いの仕方を決めています。しかし、作業着やマスクを適切に着用していなかったり、正しいローラーがけや手洗いが実行されていなかったりというケースも見受けられます。

 本来は、金属検知器などで混入物をはねる検査の前に、そもそも異物が入らない現場を作ることが大切です。その基本は、”あたりまえの事”を愚直にやることです。問題の多い企業は、間違いなくこの基本が杜撰ですね。


――そうした問題の多い企業では再発防止策が適切にとられているのでしょうか

 根本的な対策が打てていないと感じることがよくあります。以前は、どの企業でも特性要因図(魚の骨図)を用いてトラブルの原因を探るなど、3現主義に基づいて現場で問題の要因を洗い出したものです。しかし、今はこの基本にのっとった検討が行なわれず、単に「作業者に注意するように指示した」といったお粗末な対策が多いのです。これでは全く対策になりません。3現主義に基づいて原因を把握し対策を行えば、「注意する」ではなく、異物そのものを現場に持ち込ませないような対策を打ちますよね。おしなべて問題への対策は、人に起因にしないようにするのが基本です。QCの基本と3現主義といった“あたりまえの事”がきちんとできていれば、真の対策は打てるはずなのです。

――日本の品質神話を取り戻すには、まずは“あたりまえの事”を実践するということですね。

 その通りです。そのためには、今一度、“あたりまえの事”を、しっかりと勉強していただきたいですね。基本ができていないことが問題だと気付いて教育を徹底している企業は、明らかに品質がよくなり、強い現場に変身しています。基礎・基盤をしっかり固めること、“あたりまえの事”ができる職場に変えることが、日本の品質神話を取り戻す原点ではないでしょうか。

QC七つ道具とは[1]パレート図、[2]特性要因図、[3]グラフ、[4]チェックリスト、[5]ヒストグラム、[6]散布図、[7]管理図──のことです。
一方、新QC七つ道具とは[1]親和図法、[2]連関図法、[3]系統図法、[4]マトリックス図法、[5]マトリックスデータ解析法、[6]アローダイヤグラム、[7]PDPC法──となります。
 
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