試験・身分制度の根深い害
320730 「2020年教育改革」で潰れるのは、どんな塾か
 
二郎板 ( 25 奈良 会社員 ) 16/10/19 PM03 【印刷用へ
今後、“学力”の中身は
@従来の知識・技能
A思考力・判断力・表現力 ←「正解のない問題を解決する力」
B主体性・多様性・協働性 ←「知りたい!」「やりたい!」と思っていること、その生徒の志
に移るという。
つまり、@に固執する詰め込み型の塾は淘汰されていくということ。
これからは子どもを主役にした、志を育てる教育サービスが勝っていく時代になる。

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(前略)

●入試の変革が、業界を変える

大学入試そのものを変えてしまえば、それをゴールとしてトレーニングする人たち、つまり、学校の先生・受験産業はやり方を変えざるをえない。入試方法を変え、学力が意味する内容まで変えて、これまでの詰め込みドリル教育を時代遅れにしてしまう。そんな構造的なアプローチで既存の教育をひっくり返そうとしているのだ。

では、入試や学力の内容はどう変わるのか。詳細は検討段階ではあるが、すでに方向性は示されている。

まず、「より多く覚え、より早く解く」というこれまでの学力は、「知識・技能」の学力と名付けて、今まで同様、試験で測られる。その意味では「詰め込みドリル教育」がなくなるわけではない。計算問題の練習や歴史人物の名前の暗記といった勉強はこれからも続く。しかし重要なのはここからだ。

世の中に出たら、答えのない問題に取り組まなければならない。少子高齢化問題や経済政策に始まり、企業の商品開発やPRの仕方まで、今や正解はひとつではない。知識は重要だが、むしろ自分なりのアイデアを作り出さなければならないのだ。

そこで「正解のない問題を解決する力」が重要になってくる。文科省はこの力を2つ目の学力として「思考力・判断力・表現力」と定義し、それをより一層重視する試験を用意する。今までのセンター試験は廃止され、記述式や、コンピュータを使って受験するシステムであるCBT(Computer Based Testing)方式、科目の枠を超えた総合型の試験が検討されている。

そして3つ目の学力。これは「主体性・多様性・協働性」と名付けられているが、具体的には以下のようなイメージだろう。

その生徒が「知りたい!」「やりたい!」と思っていることは何なのか。研究したいテーマや、将来、就きたい仕事は何なのか。将来の目標に対して今までどんなチャレンジをしてきたのか。リーダーシップやフォロワーシップを発揮したことがあるか。自分の資質をどのように社会に役立てようとしているのか。

その生徒のビジョン・意欲・経験を、学力として測り評価するのだ。この3つ目の学力は、各大学が実施する個別試験で測られる。具体的には面接・プレゼンテーション・志望理由書の作成といった、就職試験にも似た方式が検討されている。

この大学入試改革のシナリオは、受験産業にとっては何を意味するのだろうか。それは今後もひとつ目の学力ばかりをトレーニングするならば、時代に取り残され、最後には「潰れる」ということを意味する。

因数分解のスピードを速くする。英単語を大量に暗記する。さまざまな解法テクニックをマスターする。こうしたトレーニングを通して身につけられる学力は、2020年以降は合格に必要な学力の3つのうちの1要素でしかなくなる。したがって残り2つの学力を育てるための、新たな教育手法の開発に取り組まなければならない。

●ネガキャンはもう通用しない

いや、そんなことをしなくても、前回同様、改革に対して徹底的なネガティブキャンペーンを張り、消費者を味方につけ改革を阻止するという手もある。しかし、世論を味方につけながら、文科省が入試改革制度という「戦略拠点」を押さえた今、ここからの反撃はかなり難しい。受験産業は大きなピンチを迎えているのだ。しかしあきらめることはない。ピンチをチャンスに変える方法がいくつかある。

まず、2つ目「思考力・判断力・表現力」と3つ目「主体性・多様性・協働性」の学力を育てる教育手法は、実はすでに存在する。その筆頭が「アクティブラーニング」という手法で、先生は基本的に問いを与えるだけで生徒が主体的に調べたり話し合ったりして学んでいく授業をする。先生が黒板の前で板書して生徒は黙々とノートに写すといった授業ではない。主役を先生から生徒に変える、という手法を、まずは学ぶべきだろう。

ほかには「好きなことを見つけて伸ばす」というニーズに応える手もある。現在、小学生以下の子どもを抱える保護者の多くは、子どもの将来に「好きなことを見つけてチャレンジしてほしい」と期待している。そのニーズに対して具体的に応えることができれば、3つ目の学力を育てることにもつながる。そしてこのニーズは、これまでの「成績を上げてほしい」「いい学校に行ってほしい」というニーズとは異なる、新しい市場の到来を意味している。

特に、小さな個人塾や新たに教育市場に参入するベンチャー企業にとってはチャンスだろう。大企業化した塾は、これまで詰め込みドリル教育をマニュアル化することで成長してきたため、新たにイノベーションを起こしたくても既存のビジネスモデルは壊せない、いわゆる「イノベーションのジレンマ」を抱えているからだ。その隙間を縫って、新しい教育サービスを世に問うチャンスが、今、目の前にある。

2020年教育改革の波は、これまでの常識にすがりつく塾を敗者にし、新たなイノベーションを起こす塾を勝者にするだろう。しかし大事なのは、誰が勝つか負けるかということではない。入試制度改革を機に、受験産業全体が自らを改革できるかどうかなのだ。なぜなら受験産業も今や教育の重要な担い手、その改革抜きに、日本の教育改革は成し得ないからだ。

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