次代の活力源は?
319437 追い込まれた状況こそが、人を成長させる
 
中 竜馬 ( 24 会社員 ) 16/09/10 PM05 【印刷用へ
大学卒業後、青年海外協力隊からマッキンゼーを経て起業した小沼大地氏が、シリアでの過酷な経験を通じて実感した「ビジネスパーソンの成長」について語る。

大学卒業後、僕は青年海外協力隊に参加した。当初の任務は中東シリアでの「環境教育」だった。ここではいろいろな経験をした。ビジネスパーソンとしてのスキルや仕事をする上で大切なことは、すべてシリアで教えてもらったように思う。

■「働くことの目的」を自ら設定する

また「働くことの目的」を自ら設定するという姿勢も、シリアで学んだことだ。僕がシリアに行く前に日本で必死にやっていたのは、偏差値偏重の学歴社会の中で、とにかく勉強をして「いい志望校への合格」を目指すということや、部活でひたすらに練習をして「目標とする大会での優勝」を目指すということだった。もちろんそれはそれで大変で、そこからの学びも当然あったのだが、ある意味では、すごく楽な勝負をしていたという感覚もある。

目の前には誰かが決めたニンジンがぶら下がっていて、僕はそのニンジンを、決められたルールのもとに、食べられるようがんばっていればよかった。でも、シリアでの経験は、自分で目の前にぶら下げる「ニンジン」を設定するところから始めなければならなかった。それに、何もしていないときや怠けたときに叱ってくれる顧問の先生や上司もいない。また、プレッシャーをかけてくるライバルや同僚もいない。言ってみれば、完全に「放置プレー」の環境だ。

この「放置プレー」状態で道なき道を進む中で、悩みながらも自分なりに覚悟を決めて一歩一歩を歩んでいけたのは、僕にとってはとても大きなことだった。正解がわからない中で進むのはすごく怖いことだ。でも、あるときから、どうせ決められた答えはないということにあきらめとともに気づき、自分が決めたことを正解だと思えるように、自分の覚悟したことを全力でやり切るという姿勢を、この青年海外協力隊の経験で僕は学ばせてもらった。

■追い込まれた状況こそが、人を成長させる

「何かを成し遂げなければいけない追い込まれた状況こそが、人を成長させる」という信念も、シリアでの経験から教えてもらったことだ。

人というのは、「これをやらなければ大変なことになるので、どうにか成し遂げなければ」という状況に追い込まれたら、その状況を脱しようとして、あらゆる意味で必死に成長をしていく生き物なのだと思う。そうした状況になれば、必要なスキルを死に物狂いで本人が勝手に学んでいくものだ。

日本における教育や人材育成の考え方は、「まずはスキルを磨いてもらおう。その上で、成長したら責任を持たせよう」となりがちだ。また、何かの行動を起こそうとしている人も、「まずは経験を積んで、準備が整ったら挑戦しよう」という思考パターンが多い。

当然のことながら、当時の僕にとって、語学にしろ何にしろ、何かのスキルを伸ばすということは目的ではなかった。ただ、そのスキルを伸ばさざるをえない状況に置かれていたから、必死になって学んだだけだ。

■シリアの村人たちから教わった「働くことの意味」

もう1つ、僕がシリアの村人たちから教えてもらったのは、「働くことの意味」についてだった。家庭訪問をしている中で、僕は村にいる人たちに「なぜその仕事をしているのか?」という質問を投げかけていた。その答えが、みんなあまりにもカッコいいのだ。農業をしている村人からは、「この野菜を美味しく作って、村の八百屋で売ってもらって、村のみんなに食べてもらうんだ。そしたら村が豊かになるだろ」という答え。また、大工をしている村人からは、「この家を頑丈に作ったら、隣の××さんが喜ぶからさ。俺が家を作り続けて、村が少しでも豊かなところになればと思っている」という言葉をもらった。誰もが村のことを大好きで、その村がよくなるために働いていると誇らしげに語ってくれた。

中でも、僕の同僚だったアリさん(当時45歳)からは、「働くことの意味」について、とても大切なことを学ばせてもらった。彼は僕の暮らしていた村の村長の長男で、そのままでいれば村長という村の安定した名誉職に就ける立場にいる人物だった。にもかかわらず、彼は村長になる道を選ばず、僕の所属していたNPOの職員として働く道を選んだ。そして、文字どおり、馬車馬のようにがむしゃらに働いていた。シリアの人は概してそこまで長時間働いたりしないものだが、彼は毎日首都ダマスカスと村とを行き来しながら、本当に一所懸命働いていた。

あるとき、僕はそんな彼に、村長にならなかった理由や、なぜそんなに一所懸命働いているかを問いかけたことがある。そのときに返ってきたのは、こんな言葉だった。「私ががんばって働けば、その分だけこの村はよくなるんだ。この村が、シリアという国が、少しでもよりよくなっていく姿を、私はどうしても見たいんだ」

このときのアリさんの目を輝かせながら語っている顔は、今も僕の脳裏に焼き付いている。自分が働くことが自分以外の誰かのための役に立っているのだと、こんなにも自信を持って言えること。こんなにカッコよく働く人が世の中にいるということを、僕は知らなかった。

はたして日本でそう胸を張って言える人は、どれだけいるのだろうか。僕は彼のカッコよさにはっとさせられると同時に、自分も彼のように目を輝かせながら働ける人間でありたいと、心に誓ったのだった。

シリアで暮らす人たちの幸せそうな笑顔を見ていると、ここには大切な「何か」があると直感的に思えたのだ。もちろん、いわゆる先進国のほうが持っているものも多い。安定的な経済や生活の利便性、優れた技術など、挙げたらキリがない。ただ、そうしたことが本当に人々の幸せにつながっているのかというと、あやしいところかもしれない。いったい、「豊かさ」とは何なのか。そんな答えのない問いについて、僕は今日に至るまで頭の中でぐるぐると考え続けている。

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