乏精子の科学的研究
化学物質の精子への影響、子どものへの影響、性格への影響、種の存続への影響などが書かれています。長いのでいくつかに分けます。
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研究概要
1.はじめに(研究背景等)
最近、我が国の晩婚化、少子化の社会情勢と、医療技術の進歩により 、既婚者の15−20%が不妊治療を受けている。その40%は男性不妊(精子異常)で、漸増傾向にある。以前より、エストロゲン様作用を有する環境由来化学物質がヒトの性腺(生殖細胞)に影響を及ぼし、オスのメス化、精子数減少に影響を与え、種の存続に関わる事が社会的話題となったが、その関連性については、十分な科学的根拠がないため、未だ明らかにされていない。
(中略)
2.研究開発目的
低用量の環境由来化学物質(以降、化学物質)の長期曝露は、ヒトの生態(生殖細胞)系および性腺に対して深刻な影響を及ぼす危険性をはらんでおり、ヒトへの影響を明らかにすることは環境保全上の重要課題であり、早急な対応が求められている。
(中略)
3.研究開発の方法(略)
4.結果及び考察
(中略)
メチル化異常と精子性状(精液所見)との関連性:
メチル化異常を示す精子と精液所見(濃度、運動率、奇形率)を比較検討した。図2に示すように、メチル化インプリント異常は精子濃度、運動率と負の相関を示し、奇形率とは正の相関を認め 、メチル化異常の頻度は、精子所見と相関することが判明した。また、メチル化異常の程度についても重症型の乏精子症で最も高く、メチル化異常の頻度、程度伴に精液所見と相関することが示された。
(中略)
症例と対照群の間で濃度差が見られる化学物質を明らかにした。その結果、多数の化学物質の同時検出に成功し、血液中で初めて検出された化合物も多かった。
現在確認された有機物を以下に示す。
3〜10塩素化ビフェニル 、ヘキサクロロベンゼン、ヘキサクロロシクロヘキサン、DDE、DDD、DDT、ヘプタクロル、クロルデン、オキシクロルデン、ノナクロルトキサフェン(parlar26、32、50)、Mirex、TeBDE、PeBDE、HxBDE など(図3)、2群間で有意な差を認めたPCB(分画)についてさらに分析を進めた(図 4)。
(中略)
GC-TOFMS による解析より、PCBに着目した。PCBの測定値は正規分布をしないことも知られていることから 、統計学的な解析ではノンパラメトリックの手法を用いるか 、またはPCB濃度から3群に分割し解析を行った。なお、表2で「PCB検出率」とはいずれかのPCB異性体で検C-1008-vi出下限値よりも大きなデータが得られた場合の割合を示した。乏精子群では53件中52件で検出されたのに比較して、精子正常群では37件中26件であり、統計学的にも有意な差が認められた(p=0.0001)、また、仮に検出下限 値以下に下限値の半値を代入して計算しても同様に乏精子群で高い値が観察された
(中略)
以上の解析から血中PCBと乏精子症との間に関連性が認められたことから、PCB異性体と精子数 x 運動率との関連性を検討した(表3)。精子数 x 運動率との間に高い関連性が示されたのはPCB#118、#182+187、#180、#170であったものの 、 PCB#74を除きその他の異性体でも有意な関連性が示された。
(中略)
5.本研究により得られた主な成果
(1)科学的意義
本研究の結果から、血中PCB濃度が増加すると精子数 x 運動率などの指標が減少し、乏精子症の発生が増えることが示唆された。年齢、喫煙習慣などを調整しても関連 性は一貫したものであり、男性不妊においてPCBばく露の重要性が示唆された
(中略)
本資料は、曝露回避に必要な行政的な基礎資料として、国民に提示することができ、また、少子化対策、不妊症治療の技術向上と医療行政に貢献できると考えられる。
引用ここまで-------------------------------------------------------- |
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