試験・身分制度の根深い害
317639 いい学校を出て、いい会社に入って… 子どもを「成功」に追い詰めることの大きな弊害2
 
近藤文人 16/07/24 PM00 【印刷用へ
金融日記のサイトより、「いい学校をでていい会社に務めるという価値観が依然として強固な理由(リンク)」からご紹介します。
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以上のように、いい学校をでていい会社に勤めようとする学生やその親御さんたちの行動様式は昔から全く変わっておりません。むしろその傾向がさらに強くなっているとさえいえます。さて、それではいい大学をでて有名大企業に務めるということが成功かどうかということを考えていきましょう。

僕はそうやって日本の有名大企業に就職したところで、日本の若者が少なくとも金銭的に報われる可能性は非常に低いと考えています。実際に日本の「一流企業」に就職した人たちを観察していると、20代は非常に薄給で働かされています。手取りが20万円切るとかいう世界です。そして30代になれば年功賃金で給料が急上昇するといわれていましたが、現状を見ると30代になっても大して給料が上がっていません。一流企業はその歴史故に一流なのであって、どこも年功賃金で給料が高止まりした中高年を多数抱えています。そのトップ・ヘヴィーの構造を一流大学を卒業して一流企業に見事に就職した若年層が支えるので、今後は年功賃金で給料も上がらずさっぱりおいしい思いができないのはあまりにも明白です。

さて、このような金銭的な側面にも関わらず、今でも大学受験の様子と、大学生の就職活動の様子が全く変わっていないという点は、やはりパズルだいわざるをえません。僕は、そのパズルは経済合理性を超えたところにあるのではないかと思っています。すなわち日本では大学名や会社名がある種の身分を示す家紋のようなものとして機能していると推測しているのです。あるいは高級ブランドみたいなものでしょうか。シャネルやエルメスのブランド物を身につけているとなんだか自分の地位や「格」みたいなものが上がったような高揚感が得られます。大学名や会社名はそれにとても似ている気がします。

江戸時代には士農工商という身分制度があったことはあまりにも有名ですが、そういった身分制度は近代化とともになくなっていったわけですけど、300年も続いた徳川幕府の時代に、日本人のDNAに身分のようなラベリングを求める心が刻み込まれたのではないでしょうか。そういった身分制社会では、正論をいってお上に反抗的な人間よりも、むしろお上に阿って身分制社会の中でうまくやっていこうとする人間のほうが成功して子孫を残せる確率が高まります。また女性もなるべく高い身分の男性と子供を作ったほうが、同じく子孫が残せる確率が高まります。このように日本人の心のなかに身分を強く求める心が生まれたと考えられないでしょうか。そして近代社会では、そのような身分の代替物としての大学名と会社名が機能しているのです。このようになるべくいい大学に入る、そしてなるべくいい会社に入るというある種の強迫観念が、日本人の心に深く刻み込まれているのかもしれません。

一方で、世の中は資本の論理で動いている一面もあります。人間のあらゆる性質を利用して合法的に利益を最大化しないといけません。よって企業というのは、ブランド志向の若者が会社名というブランドに大変弱く、そのために薄給で長時間働くということを熟知してるので、その点を徹底的に利用していきます。ヨーロッパの老舗ブランドが日本人女性に高い身分になったような気にさせて、法外な値段でハンドバッグなどを売るのも同じですね。

なるほど大学名や会社名がある種の身分を示すシグナリング・デバイスであり、それがDNAレベルで刻み込まれているとしたら、世界が大きく変わり経済構造が変わってもなお「いい大学をでていい会社に務める」という価値観が非常に強固なのも頷けますね。

以上のように、大企業の正社員というゲームは、入り口の段階からいい大学の学生に圧倒的に有利で、またそこに務めたからといって若い人がいい目を見られる確率は非常に低いですし、ゲームとしても経済合理性を超えた激しい競争ですから、少なくとも上にでてくる大学以外の学生はそんなつまらないゲームからは早く降りたほうがいいですね。

そんなゲームに参加していい会社に努めている若者も、会社を「金を貰える学校」だと割りきって、とっとと独立するなり、転職するなりして、中高年を支える人柱の生活から抜け出すのが経済合理的でしょう。
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318042 身分 寺嶋眞一 16/08/05 AM10

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