宇宙・地球
312771 地球磁場生成の新しいメカニズムを発見
 
村田頼哉 ( 44 高知 企画 ) 16/03/01 AM01 【印刷用へ
地球外核中の磁場は、地球の自転軸方向に伸びたカーテンのように薄いシート状の対流構造により生成されるものです。このシート状の流れにより、磁力線がまっすぐに引き伸ばされることで磁場が生成され、同時にその磁力線の周囲にらせん状の電流が流れることが見い出されました。
海洋研究開発機構のHP(リンク)より引用します。

■背景
地球の中心部分、コアと呼ばれる領域は、鉄でできており、10億アンペアもの電流が流れています。地球の内部は高温なので、コアの外側部分(外核)は完全に融けて液体状態になっています。冷たい宇宙空間に浮かぶ地球は常に冷えていくので(地球内部に比べ地球表面は低温なので)、この液体鉄はいわゆる対流運動を起こしています。

液体金属も含め、一般に電気伝導体が磁場中で動くと電磁誘導と呼ばれる発電効果が働きます。つまり、地球は巨大な発電機(ダイナモ)と見なすことができます。このことから、地球外核の液体鉄による発電作用は地球ダイナモと呼ばれます。

地球ダイナモの詳しいメカニズムはこれまでわかっておらず、現在でも完全な解明には至っていませんが、スーパーコンピュータの進歩により、大規模で高い解像度を持つ計算機シミュレーションを行うことができるようになり、現実の地球外核に近い地球ダイナモ現象を計算機の中で再現することが可能となってきました。ただし、粘性率の低いものの対流をシミュレーションするためには、高い解像度を持つ計算機が必要で、粘性率の低い地球外核は、これまでより正確な対流の表現ができていませんでした。

■研究方法
 地球シミュレータの512ノード(4,096個のプロセッサ)を用い、これまでで最も高い解像度を持つ地球ダイナモシミュレーションを行いました。このような大規模な並列計算が可能となったのは、独自に考案した「インヤン格子」と呼ばれる新しい計算格子を使っているためです。高い解像度の計算が可能になったことで、これまでのシミュレーションよりも、より現実の地球外核に近い地球ダイナモシミュレーションが可能となりました。

このシミュレーションでは出力される数値データが非常に膨大(数十ギガバイトから数テラバイト)であり、しかも解析すべきベクトル場が4種類(流れ場、渦度場、磁場、電流場)もあることから、3次元ベクトル場の空間的な構造と、お互いの関係を正確に把握する必要がありました。

■結果
通常、地球の外核のように回転する(地球は自転しているため、外核も同じ速さで回転する)システムでは、熱対流はたくさんの円柱状の渦の集まりになると考えられています。実際、従来の解像度のシミュレーションでは、外核中の対流運動は円柱状になることが確認されていました。

ところが、今回の高解像度シミュレーション結果では、外核の対流構造が大幅に変化し、薄いシート状になりました。このシート状の対流構造は、これまで、金沢大学の隅田准教授による水を使った対流実験により示されていましたが、計算機シミュレーションでは再現されておらず、今回初めて再現されたことになります。

そして、このシート状の対流構造は非常に効果的な発電(ダイナモ)作用を持ち、外核内に多くの電流を生み出していることが確認されました。その電流は、理科の実験で使うようならせん型コイルのように流れる特徴的な構造を持っています。これは、これまで実験的にも理論的にも予想されていなかった構造です。そして、このらせん型の電流の中心部において、まっすぐに伸びた磁場が作られていることがわかりました。つまり、外核がシート状に対流することで磁力線を引き伸ばし、まっすぐに伸びた磁場を作り出すという、これまで知られていたものとは違うダイナモ機構が再現されたのです。

■今後の展望と課題
ハトやサメなど一部の生物は体内に小さな磁石を持ち、地球磁場を使って方位を感じています。また、地球磁場は宇宙空間から降り注ぐ太陽風や宇宙線(宇宙空間を飛び交う高エネルギーの荷電粒子)から地球を守る防護壁の役割を果たしています。このように、地球磁場は様々な局面で我々の生活にとって重要な役割を果たしています。

残念ながら、地球の外核内の流れや電流の構造を地上から直接観測する手段は存在しません。従って、今回発見されたダイナモ機構やシート状の対流構造、そしてらせん型の電流構造が、我々の足下の地球外核に存在するかどうかを直接観測することはできませんが、今回の発見は、地球磁場の謎の解明に向けた地球科学の基礎研究としての重要な一歩であると言えます。
 
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316287 地球空洞説 佐藤有志 16/06/13 AM00

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