試験・身分制度の根深い害
311119 学校教育が生み出す「暗記脳」と言語能力の低下
 
岡田淳三郎 ( 70代 大阪 経営 ) 16/01/07 PM01 【印刷用へ
現代人の精神を蝕んでいるのは、近代思想が作り出した「自分脳」と「否定脳」だけではない。学校制度が作り出した「暗記脳」も、現代人の思考力をドン底にまで劣化させてきた。そして、学校制度と近代観念が相俟って、人々を完全なる思考停止の檻に閉じ込めている。これは精神破壊とも言うべき所業であり、人類に対する致命的な犯罪である。

事実、明治以降、日本人の言語能力は低下する一方であるが、その最大の原因は、学校や塾の「教える教育」にある。
他方、例えば職人の世界では、師匠が弟子に教えるということはほとんど行われない。徹底して何も教えず、「どうすればできるか」を弟子自らの頭を使って考えさせる。そのような教育が、追求力を培い、世界でも群を抜くレベルの技(技術力)を生み出してきた。
しかし、学校教育が始まると、教育は答えを教える講義型スタイルに一変した。答えを一方的に教えられると、生徒は分かったつもりになり、そこで思考を停止する。
教える教育が恐いのは、答えを大量に詰め込めば詰め込むほど、追求力が低下してゆくという構造である。その典型が優秀生を集めた中学受験塾の詰め込み型授業だろう。その結果、言語能力を始めとする現代人の思考力は、惨憺たるレベルにまで落ち込んでしまった。

昔の一高生や三高生は、よくデカンショ節などを放吟していたが、デカンショとはデカルト・カント・ショーペンハウエルのことで、試験に出る訳でもないのに、彼らはそれらの難解な哲学書を読みこなしていた。つまり、昔の東大・京大生は余裕を持って入学してきた。だから、優秀な人が多かった。
しかし、’70年、豊かさが実現され、誰でも大学に行けるようになると、受験競争が激化し、中学受験塾が幅を利かすようになる。そこでは、小3の頃から勉強漬けにされ、全く追求力のない「暗記脳」が強固に形成されてしまう。勉強漬けにしないと、合格できなくなって終ったからである。その上、受験勉強を通じて、「自分脳」の極致ともいうべき歪んだエリート意識にも染められてしまう。
しかし、現実の社会でぶつかるのは、答えのない問題ばかりであり、決まりきった答えやパターンを暗記しているだけの暗記脳では、全く答えを出せない。かくして、暗記脳しか持ち合わせていない(かつ、己の利権を維持することしか頭にない)無能な受験エリートに率いられた日本は、わずか20年の間にガタガタになって終った。

受験圧力に押し潰され、生きる意欲を失っているのは、東大・京大生だけではない。大半の学生が、親や先生から「いい生活、いい大学」と言われ続けて来たが、「いい大学」を出た筈の父親を見ても、とても「いい人生」とは思えず、従ってそんな目的では意欲が湧いてこない。それに、教科書や問題集に書かれていることが、何の役に立つのか、よく分からない(実際、実社会では、殆ど役に立たない)。加えて、それらのテキストは大半が今や引力を失って終った近代観念で書かれているので、何の興味も湧かない。今や、志を持って勉強してきた者は殆ど居らず、親に言われて「仕方なく勉強してきた」学生が大半である。
それどころか、勉強だけではなく、部活にも、仲間づきあいにも意欲が湧かず、何の為に生きているのか分からないまま「仕方なく生きている」学生も多い。しかし、それは子供や若者だけではなく、40代の壮年も、同じなのかも知れない。(私見だが、若者が大学に行かなくなれば、それだけでもこの社会は随分と活力を取り戻すに違いない。)
 
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