私権社会の婚姻制
3097 資本主義とセックス
 
岩井裕介 ( 29 山口 再開発プランナー ) 01/04/11 PM09 【印刷用へ
矢野聡子さんの「夜這いの解体と一夫一婦制の確立」2795279628752876を読んで、夜這いの解体と近代化に関連して、ちょっと思い出したことがあるので書いておきます。

岸田秀は、ヴェーバーの「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」を題材に、これに接続するかたちで次のように述べています。

――以下、「性的唯幻論序説」より引用――
要するに、西欧近代は性的禁止を強め、さらに女には性欲がないことにして、素人娘や素人女が結婚しないで、またはお金を取らないで気軽に男と寝ないようにした。そして、女をいずれにしても男にとってはお金のかかる清純な乙女と売春婦に二分した。もちろん売春婦は昔からいたが、無料セックスを排除して、セックスの有料化を徹底したのである。その結果、男たちは、性欲を満足させようとすれば、清純な乙女を相手にするにせよ、売春婦を相手にするにせよ、きわめて高くつき、お金をたくさん使わなければならず、そのお金を稼ぐため、常時働いていなければならないという状況に追い込まれたのであった。これは、言うまでもなく、資本主義社会を支える重要な前提条件の一つである。
<中略>
近代人も働くためには、かつての「神のため」に優るとも劣らぬぐらい強い働く動機となる目的が必要ではなかろうか。それが「恋のため」「セックスのため」ということだったのではなかろうか。実際、近代の恋愛は、恋人を理想化し、崇め、恋人を得るために生命をも賭けることがあるくらいで、これが、かつての神への信仰が崇拝対象を入れ替えただけに過ぎないものであることは、ちょっと考えればすぐわかるであろう。だからこそ、かつて神のために働くことができたのと同じように、恋のために働くことができるのである。
――引用ここまで――

資本制の生産様式は必然的に大量の労働力を必要とし、また資本主義が成立するにはその労働力が商品化されていることがひとつの条件になります。こうした(奴隷的な)労働者にとって、(少なくとも潜在的には)女の獲得がインセンティブとなっていたというのはおそらく間違いないのではないかと思います。(また私権の獲得と女の獲得が所有意識として不可分に繋がっている点は、統合階級も同じでしょう)

言いかえれば、労働力という商品(もしくは獲得した私権)と、商品化された女の性との交換関係であるといえます。

商品市場の拡大、資本主義の浸透の背景には、性市場の拡大、自由な性の欲求があったことは実現論にも述べられていますが、近代人の追求した「自由な性=私的な性」の実態は、上に引用したとおりの「みじめな性」だったのではないでしょうか。

またそうであるにも関わらず、「恋愛」という観念によって至上のものとされているところは、まさに「恋愛」が近現代における最大の宗教であることを証明しているのではないかと思います。
 
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