脳回路と駆動物質
307783 目標を達成しやすくするヒント -すごいアスリートも大きな夢はもってない-
 
文太 ( 25 建築設計 ) 15/09/16 PM09 【印刷用へ
よく大人が子どもに

「大きくなったら何になりたいの?」

と聞いたりします。

だけど、もしかしたら、その子の能力を伸ばしたいんだったら、

「今日1日でどうなりたいの?」

と聞くほうがいいかもしれない。

どんな大きな目標も、現実的で、実現可能な課題まで想像しきることが大事。
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石川 ぼくの研究テーマの一つに「目標設定の心理学」というのがあるんです。
というのが、ぼくらは生まれてから一度も「どう目標設定するといいか」を習ったことがないんですね。じつは「目標」という考え方自体、けっこう新しいものなんです。

糸井 あ、そうなんですか。

石川 19世紀くらいまでの人々には、村の規範に従うのがいちばん重要で、ふつうの人の人生に「目標」ってあんまり関係なかったんです。
大事なのは「目標」より「規範」だったんですね。「努力したら変わる」とか「夢を持とう、目標を持とう」といった目標型の考え方が出てきたのは、20世紀になってから。

そういった新しい考え方なので「どんな目標を持てば、とんでもなく遠くまで行けるのか」についての研究って、意外とないんですね。

糸井 ないものですか。

石川 そうなんです。

それで去年、為末大さんと一緒にたくさんのオリンピック選手のかたにその「目標」というテーマでインタビューをしてみたんです。それで為末さんは、直感的に「大きすぎる夢は危険なんじゃないか」と思ったらしいんですよ。

すごい人の例として、本田選手やイチロー選手の話がよく出ますけど、
ああいう人は、まずいないと。

糸井 たしかにいないような気がします。

石川 そして実際に、為末さんといっしょにオリンピックに行くような日本人アスリートの方たちに、「目標」との付き合いかたについて詳しく聞いてみたんです。すると実際に、すごいアスリートたちのほとんどは、大きな夢を持ってなかったんです。

糸井 でも、目標のことを考えないわけではないでしょう?

石川 はい、そこがポイントで、彼らは「その日の目標」を立てるのが
すごくうまかったんですね。しかも、彼らは毎日かならず前進しているわけではなく、自分のそのときの調子や感情に合わせてやっている。「今日はこれをやろう」と始めてみたけど、今がタイミングじゃないな、と思ったらすっとやめたりとか。目標との付き合い方が、すごく柔軟だったんです。

糸井 はぁー、なるほど。

石川 だから、よく大人が子どもに「大きくなったら何になりたいの?」と聞いたりしますよね。だけど、もしかしたら、その子の能力を伸ばしたいんだったら、「今日1日でどうなりたいの?」と聞くほうがいいかもしれないんです。

糸井 つまり、そのときの自分がちゃんとできる目標を考えさせるというか。

石川 そうなんです。うまいコーチや監督は選手にそういう問いかけかたをするんですよ。そうやって選手たちの意識を「勝ち負け」ではなく「プロセス」に向けさせるんです。

糸井 「プロセス」の話って生産性の話じゃないから、大人はあんまりしたがらないんですよね。大人たちが好きなのは「勝ち点がいくつ」とか「メダルがどれだけ」とか。だけど、おそらく選手本人たち自身もいちばん興味があるのは勝ち点やメダルよりも、やっぱりプレーやプロセスなんじゃないでしょうか。

石川 そんな気がしますよね。

糸井 いま、わりと、「プロセスをたのしみながら、同時に結果も出せ」
という考え方をよく聞く気がするんです。だけど、実際にはそれ、ちょっと無理がある気がするんです。ぼく自身の感覚としては、むしろ、「たのしければ結果はなんとかなる」というのが、事実に近い気がします。

石川 ほんとうにそうかもしれないですね。工場で同じものを作り続けるようなときであれば、「たのしい」って感情はむしろないほうがいいんです。ネガティブ感情で集中して作ったほうが効率は上がります。でも、それだけだと、大きなイノベーションはできないんですね。ちょっとはたのしい気持ちを持たないと。

糸井 ぼくは昔から「ノルマ」という言葉が苦手なんですね。ノルマってはなから「おまえは奴隷だ。これから過ごす時間をぜんぶこのことに捧げろ」と言われてるように聞こえるんですよ。やること自体は別にいいんです。

だけど、
「50個がノルマだからな」みたいに言われると、すごく気分が下がる。同じことを「この時間で50個くらい作れるんじゃない?」と言われたら、それだけでずっと楽なんですけど。

石川 ああ、そうですね。言い方だけで違いますよね。

糸井 腕立て伏せをぼくはやるんですが、そのときも最後に「あと10回」と思うと、ものすごい気持ちが辛いんですよ。だけど逆に、漠然と「50回くらいやろう」と考えていて「40、41、42‥‥」と足すようにすると、ずいぶん楽にできるんです。

石川 カウントダウン方式は、つらい。

糸井 カウントダウン方式って「自己犠牲」なんですよ。
やりたくないことを、我慢してやる発想。

石川 足し算のほうがいい?

糸井 足し算のほうがいいですね。40からひとつずつ足して50になると、終わったあとも「まだあんがい余力があるな」って51、52回までできたりするんです。でも、カウントダウン方式だと、終わったとき、尽き果てた気がするんです。数え方の違いだけなんですけど。

石川 不思議ですよね。
ぼくらはほんとに脳にだまされて生きてるんじゃないかと思うんですけど。
脳がそこをゴールだと決めると、急に限界が出てきますよね。

糸井 そう。そして、いまの時代はみんなが「限界から逆算する方法」ばかりを教えてくれるんです。おそらくみんな、「効率」と「確実性」の話をしたいんだと思うんですよね。
だけど「効率」や「確実性」って、そんなにいつでも大事なものなんだろうか。

石川 そうですよね。

糸井 たとえば腕立て伏せなら目的は筋肉に負荷をかけることだから、目標が「50回」だったらとしてもだいたい50回やれればよくて、ほんとは49回でも48回でもいいですよね。いろんな作業のとき、そのあたりまで探ってしまえば、無駄なつらい時間をずいぶん減らせる気がするんです。
 
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