国家の支配構造と私権原理
304798 「コーポラティズム」〜ひたすら宿主の体を貪り食い、自らだけが肥え太ろうとする寄生虫
 
蔦宇兵衛 ( 加賀 ) 15/06/09 PM09 【印刷用へ
「TPP」「アベノミクス」「国家戦略特区」「特定秘密保護法」・・・これら現政権の行動原理の背後にあるもの・・・大企業(金貸し)による社会支配。

リンクより

参考:「超国家・超市場論11 市場は社会を統合する機能を持たない」31251
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「コーポラティズム(Corporatism)」という言葉はあまりなじみのないものだろう。
 ひと言でいえば、大企業による社会の支配だ。
 大企業は社会の一部でしかないのにもかかわらず、その一部が社会全体を支配する。この現象がアメリカやヨーロッパはもちろん、日本をも蝕むしばんでいる。このコーポラティズムは、企業や経済活動の自由を最大限に尊重するという新自由主義とコインの裏表をなすものだ。

 コーポラティズムの最大の問題は、民主主義が損なわれてしまうことにある。
 民主主義の理念とは、国民一人ひとりが投票権という名の権力を持ち、国民が政治のあり方、方向性、政策を決めるということだ。「国民の、国民による、国民のための」政治を行なうための手段である。もちろん、民主主義が最善のものというわけではない。民主主義には様々な欠陥がある。かつて、英首相のチャーチルがいみじくも言ったように独裁制や貴族政治に比べれば「まだまし」なものに過ぎない。
 とはいえ、現在のところ、民主主義よりもいい方法は「発明」されていない。とりあえずは、民主主義をいい方向へ発展させるよりほかに、人々の暮らしをよくするための方法はないといえる。
 民主主義は、ご存知のように、投票によって政権を選択する。二〇〇九年に日本で起きた自民党から民主党への政権交代がそうだった。民主党は「民意」によって選ばれた政権だった。
 ところが、コーポラティズムに支配された社会では、この「民意」が民衆の知らないところで無視されることになる。大企業は政治家へ多額の献金を送って政治家をコントロール下に置き、自分たちに不利な政策の実現を阻止しようとする。または、民意が反対している政策を実現しようとする。
 民主主義の原則にしたがえば、政策を決定するのは投票権を持つ国民によって選ばれた代議士だ。しかし、企業は投票権を持ってない。投票権を持っていないものが政治をコントロールすれば、社会がゆがむのも当然だ。
 典型的な例が政府による大企業の救済だ。
 リーマンショックによる金融恐慌が起きた際、アメリカの三大自動車メーカーの首脳は政府の救済を求めて、ホワイトハウスへ駆けつけた。新自由主義においては、経済活動のすべての結果は「自己責任」ではなかったのか? 「自己責任」を主張し、多くの人々の生活を破壊した者たちがなぜ自分たちだけ例外扱いしてもらおうとするのか? しかも、最高経営責任者たちは、多数の従業員を解雇するリストラ策を発表する一方、自分たちの高額な報酬を契約だからと言い張り、カットされることを拒んだ。彼らは自分たちの金儲けが順調にいっている時だけ「自己責任」を標榜し、自らが行き詰まると民意もかえりみずに勝手にルールを破ろうとごり押ししたのだ。しかも、彼らの救済に使われたのは税金――つまり公共の財産だ。最高経営責任者たちは「大きすぎて潰せない」という大義名分によって公共の財産を使わせ、自らの私利を図った。無理を通せば道理が引っこむ。まったく、道理を外れた話だった。

 コーポラティズムは、政治家のほかにマスコミをも支配する。
 代表的な例が今回の原発事故だ。
 電気事業連合会という電力会社の関連組織から、毎年、多額の広告費がマスコミに流れている。この広告費があるため、マスコミは電力会社に対して物が言えない仕掛けになっている。
 東京電力は福島第一原発の事故から二か月が経過してはじめて、炉心溶融――メルトダウンを認めた。これは事故当初からさんざん指摘されたことだった。重大な隠蔽である。メルトダウンばかりでなく、様々な危険情報を隠し、ずいぶんと日にちが経った後で発表する。本来なら、批難轟々となってもいいはずだが、大手マスコミはなぜかこのことを正面切って深く追及しようとしない。東電を批難すれば電気事業連合会からの広告をとめられてしまうため、それを恐れているのだ。大手マスコミが世論に与える影響は大きい。コーポラティズムはマスコミをコントロール下に置くことで、世論を操作する。

 コーポラティズムの世の中にあっては、民衆とはかけ離れた場所で重大な政策が大企業の都合のいいように決定されてしまう。陰謀といっても差し支えない。民衆がいくら投票で民意を示しても、この陰謀によって様々なことがなしくずしにされてしまう。現在の日本の民主党もこのコーポラティズムによって蝕まれた状態にある。民主党のなかにもコーポラティズムに反対する一派がいるが、彼らの闘争はまだ成功していない。
 もちろん、企業が自らの私利利益を図るために社会へ働きかけを行なうことは昔から常にあったことだ。しかし、それがある限度を超えれば、社会そのものを破壊するようになる。なぜなら、企業の目的は利潤の追求であり、社会の構築や安定ではないからだ。社会を破壊すれば最終的には企業も潰れてしまう。いわば宿主と寄生虫の関係にあるわけだが、そのようなことはコーポラティズムの眼中にはない。ひたすら宿主の体を貪り食い、自らだけが肥え太ろうとする。
 出来事の表面だけを見ても、実際のところなにが起きているのか、正確なことはつかめない。その出来事の背後にある構造を把握しなければ、表面上のできごとや政府やマスコミのプロパガンダに振り回されるだけでなにも理解できない。社会全体に生じていることも、一個人の身の上に起きていることも。
 コーポラティズムの行き過ぎた世の中にあっては、「公利公益」がたえず企業の「私利私益」によって侵される。現在進行している日本の社会を蝕む様々な現象の背後にはこのコーポラティズムも大きな一因として潜んでいる。

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