共同体社会の実現
30470 武力支配の統合限界
 
石野潤 HP ( 47 大阪 教務開発 ) 02/05/09 PM09 【印刷用へ
私権闘争は、生涯固定の身分の共認によってははじめて統合された。身分序列こそが私権統合の中枢である。(参照実現論2_4_03)

奈良時代の官僚は正一位から小初位までの階位により職が決められている。正一位の給与は最も低い小初位の約160倍になる。また、五位が12倍なのに対して、六位は2.6倍と大きな断層がある。上位5階位は貴族で占められ、高級貴族の子弟ははじめから五位が与えられる。

古事記を編集した大野安麻呂は従四位で、郡司は従七位になればいいほうであったとわれる。私権統合とは、財を収奪した少数の支配階級と、財を奪われ働くしかない多数の生産階級という二大身分制によって統合されている。そして、統合階級の中でも、実務にあたる多く官僚の給与は労働報酬ともいえるが、その上の一握りの高級貴族はまさしく支配、遊興、消費できる身分が保障された階級である。(参照実現論2_4_05)

私権闘争は力の序列共認によって止揚するしかない。しかし、同じ力の序列共認でも真猿たちの序列共認とは様相を異にしている。

真猿たちの序列は腕力というモノサシで計られるが、これは同類闘争の戦力度でもある。集団の闘争共認や役割共認と直結しており、闘争圧力に対応する能力と結ばれているがゆえに評価共認でもある。

努力してその能力を獲得することは役割充足を得ることであるとともに、序列の順位が上がることでもある。その開かれた可能性が活力源である。

これに対して、武力支配は、集団を破壊し社会のすべての財を占有の対象とする私権共認の上に成り立っている。バラバラに解体された個人の私権闘争を身分序列で止揚しているが、闘争に対する役割や評価として皆に認められているわけではない。

少なくとも、農業生産物を収奪され働かざるを得ない階級は、貧困という絶対的圧力ゆえに従っているだけであり、武力闘争の役割や評価の蚊帳の外にあり、まして支配階級へと上昇する可能性などほぼないに等しい。

さらに、遊興と消費できる身分を獲得した勝者階級は、外圧がゆるめば忽ち解脱収束し、堕落していく。(参照実現論2_5_04)また、序列は身分制さらには世襲制という形で固定されており、上昇可能性にも限界がある。

集団共認の内部において私権闘争を止揚しえた序列共認ではあるが、集団を破壊した私権共認の上では大きな限界を孕んでいることになる。また、貧困という強制圧力が二大身分制を支えてはいるが、富を独占した支配者階級は必然的に堕落するという弱点を孕んでいる。

そもそも、集団を超えた肥大国家に集団原理を適応したことの限界なのかもしれない。

 
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