国家の支配構造と私権原理
304406 米国に潰されたメキシコ農業〜日本もいずれ二の舞に@
 
荘家為蔵 ( 60代 大分 営業 ) 15/05/28 AM08 【印刷用へ
安部政権が進めるTPP交渉が妥結の大詰めを迎えています。
しかし一足早く米国とFTA(自由貿易協定)を結んだメキシコでは、農業が壊滅的な打撃を受け、国民の食と生活基盤が大変な深刻な事態に陥っているというレポート紹介します。記事は雑誌「選択」5月号から。
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>一九九四年に発効した北米自由貿易協定(NAFTA)により、米国の農作物に市場を席巻され、遺伝子組み換え作物(GMO)の襲来でも被害を受けている。日本が環太平洋経済連携協定(TPP)交渉で米国の要求を鵜呑みにすれば、メキシコの二の舞になる懸念がある。

  四月十一日、米国とメキシコの国境地帯の州では、農業労働者が各地で抗議のデモ、ストを行っていた。ソノーラ州では、カナネア銅山から排出される汚水をめぐって、鉱山と農業の労働者が共闘して鉱山を占拠。バハ・カリフォルニア州では、低賃金にあえぐ農業労働者が高速道路を占拠した。

 「抗議対象は様々ですが、根本的な原因は同じです。NAFTAでメキシコの農業が破壊され、農業労働者の仕事が消えている。仕事にありつけても、一日十時間で七ドル程度しか稼げない。米国の時給以下です」と、在ワシントン研究機関のある職員が言う。

【GMOトウモロコシが圧倒】
  メキシコは一人当たりの名目国内総生産(GDP)で見ると、米国の五分の一以下。両国が通商協定を結んで関税を撤廃すれば、本来なら米国がメキシコ農業に圧倒されるはずなのに、実際にはメキシコ農業の崩壊が起こった。

  メキシコへの農産物貿易は過去二十年間、ほぼ一貫して米国が出超だ。二〇一二年には米国の輸出百八十九億ドルに対して、メキシコからの輸入は百六十四億ドルと、二十五億ドルも差があった。NAFTA発効後の累計では、米国の出超は三百億ドル以上になる。

  どうなっているのか。

  米国が巨額の農業補助金によって、主要な穀物、食肉をメキシコの市場価格以下で販売したのである。

  米タフツ大学が一〇年に、トウモロコシ、大豆、コメ、食肉などの農産物輸出が、協定発効前の一九九〇〜九二年と、発効から十年以上たった〇六〜〇八年で、どう変わったのかを調べた。

  結果は恐ろしいものだった。米国からメキシコへの輸出は、牛肉が二八〇%、豚肉が七〇〇%、鶏肉が三六〇%も増えた。さらに、トウモロコシは四一〇%、コメは五二〇%も増加した。

  メキシコは人類で最初にトウモロコシを食用に農耕し、それがコロンブスの米大陸発見後に、ヨーロッパに広まった。メキシコ人にとって、トウモロコシは特別な食物で、粉から作るトルティーヤ、それを使ったタコス料理は、国民食である。

  ところが、NAFTA発効後は、大規模栽培の米国産に席巻され、近年はGMOトウモロコシに圧倒された。メキシコの消費量の三分の一が米国産。コメに至っては、四分の三が米国産となってしまった。米政府の補助金は、トウモロコシが二〇%、コメは三三%、大豆は一八%。生産価格より一〇〜二〇%も安く、メキシコで売ることができた。

  地球開発環境研究所のティモシー・ワイズ所長は、「米国は、世界貿易機関(WTO)が定義する『ダンピング』の状態で農産物をメキシコに輸出している」と断定する。

  一方でメキシコが米国に輸出する新鮮野菜や果物は、国境近くにある米政府施設で厳しい検査を受け、「腐る寸前」「傷物」と判断されれば、埋め立て地に直行して廃棄される。その量があまりに多いため、米国内の慈善団体が特別な許可を得て、一部を引き取り、貧困層の生活支援に回すほどだ。

  メキシコの農業団体「全国農民連合(CNC)」は、協定を心底憎む。発効から十六年を迎えた際には、「NAFTAが過去十六年間でメキシコにもたらした災厄は、スペインが五世紀にわたってもたらした災厄よりも大きい」と、厳しく断罪した。各農業団体は、メキシコの歴代政権に「米国と再交渉してくれ」と強く求めたが、実現していない。

  メキシコ人の食生活も激変した。自給自足農家が土地を追われた結果、国内の貧困層は飢えに苦しむか、高脂肪・高カロリーの安価なファストフードに頼る以外に、選択肢がなくなった。米国のファストフードチェーンが激増し、格安タコスのメキシコブランドも成長した。

  その結果、メキシコ人は九〇年代から急速に太り始め、九九年には女性の六〇%、男性の五五%が肥満または過体重に陥った。一〇年には国民の七割が肥満または過体重。最近ではアメリカを抜いて、「世界一の肥満国家」になった。

  米国人研究者のローラ・カールセン「国際政策センター」所長は最近の論考で、「貧困層は、新鮮な野菜の代わりにポテトチップスを食べ、飲料水の代わりに安いコカ・コーラを飲まざるを得なくなった」と、肥満激増の原因を指摘した。一方で、農村部では所得激減と偏食によって、子供の栄養失調が深刻化しており、カールセン所長は「NAFTAがメキシコの飢餓を作り出した」と批判する。

米国のお先棒を担ぐ「亡国の徒」
                       以下Aに続く

  
 
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