政治:右傾化の潮流
303293 老人ホーム化する刑務所
 
志葉楽 15/04/22 PM09 【印刷用へ
「出るのが怖かった」−高齢化で医療費増も

(以下リンクより抜粋)

世界中の多くの刑務所は脱走防止に時間と労力を割いているが、日本では受刑者を出所させるのに苦労している。毎年約6400人があてもないまま出所、そのうち3人に1人は2年以内に戻ってくる。

日本政府は犯罪対策閣僚会議で昨年12月、帰る場所がないまま社会復帰する出所者数について、夏季東京五輪が開催される2020年までに3割以上減らすと公約した。犯罪や非行に手を染めた人を社会の一員として再び受け入れる社会環境を構築する一環だ。

高齢受刑者がこの10年間急増する中、かなり高い数値目標だ。自由を手にしても孤立する社会での生活より、仲間がいて衣食住を政府が提供する刑務所生活を選ぶ受刑者も多い。

長崎刑務所に入所している67歳の受刑者は、すりを繰り返して14回目の服役中だ。12月に満期出所予定だが、支援なしにはまた戻る可能性が高いと社会福祉士はみている。頼れる親族や友人がおらず、なけなしの所持金を食費や酒で使い切ってしまうからだ。福島刑務支所(女子刑務所)では60歳以上が全受刑者の28パーセントを占める。窃盗を重ねている最高齢91歳女性は、入出所を繰り返している。

■居場所
「日本の刑務所は劣悪な環境、ほとんどの施設で暖冷房が入らないので、冬は手足がしもやけでパンパンになり、夏は汗だく。どうしてこんな環境に戻りたいのか、それだけ社会に居場所がないということだ。刑務所には仲間がいて、食事と部屋が与えられ、健康管理も受ける、死亡しても手厚く弔ってもらえる」と龍谷大学大学院法務研究科教授で犯罪学専門の浜井浩一氏は述べる。(略)

人口10万人当たりの受刑者数を国際比較すると日本は49。米国の698、英国149、ドイツ76に比べると少ない。しかし、最近では高齢者犯罪が増加し、刑務所によっては内部が福祉施設化している。

■循環
高齢犯罪者は矯正施設の出入りを繰り返している。家族がいなかったり、金銭的支援がなかったり、障害があったりして地域社会から見放されているからだ。累犯防止に対応するため、日本政府は、帰る場所のない高齢出所者を支援するプロジェクトを進めている。

法務省によると、65歳以上の犯罪検挙は2013年度に4万6243件、20年前と比べると4倍以上に上る。高齢者犯罪の74%は窃盗で、刑務所人口のほぼ5人に1人が60歳以上だ。

「刑務所によっては老人ホームのようなところもある。受刑者が食事を作って食べさせてあげたり、歩けない人を支えてあげたりする。雑居房では体が痛くてうなされていたり、認知症で夜中に徘徊したりする人もいる。ひどいと排せつ物を投げたり、わざと布団に粗相をしたりする受刑者もいて、刑務官の負担が増加している」と、全国の刑事施設を半世紀以上にわたり慰問を続け、大スターながら法務省特別矯正監も務め、矯正施設の環境改善に尽力する杉良太郎氏は述べた。

■コスト
高齢受刑者に対して刑務所に代わる意味のある対応策を見つけることは、日本にとって喫緊の課題でもある。国内総生産の240%以上の債務を抱え、先進国の中において最大の債務超過国だからだ。

刑務所など矯正機能を充実させる14年度の予算額は約2300億円。法務省によると受刑者1人当たりの年間コストは約320万円、生活保護を受けた場合のほぼ倍に相当する。安価な商品の万引きなどのささいな犯罪でも再犯を繰り返せば最長で5年の実刑判決を受ける可能性もあるので、その場合、単純計算で5年間1600万円かかる。

「こんな公費の使い方をしても誰も幸せにならない。効率的な財政運営をするのであれば別の方法を考えるべきだ」と障害者施設を運営する社会福祉法人南高愛隣会顧問・理事で最高検察庁参与の田島良昭氏は言う。(略)

■医療費
受刑者の医療費も年々伸びている。法務省によると、14年度の薬剤費および医療機材費は過去9年で倍増し、年間60億円だった。受刑者の病院搬送も9年で倍増し、12年に1278件に上った。(略)

累犯者問題は06年1月、西日本旅客鉄道の下関駅が放火されて74歳の男性が逮捕されたとき、社会的にも注目された。容疑者は、事件の8日前に刑務所から出所し、空腹と寒さに耐えられず、刑務所に戻りたくて放火したと供述した。知的障害を持ち、事件それ以前も放火、放火未遂を繰り返し、10回服役した経験があり、人生の40年以上を刑務所の中で過ごしていた。

■病気
法務省矯正局総務課長の大橋哲氏は、「彼らはどこのセーフティーネットにも引っかからず、刑務所に落ちてきてしまった人たちだ。本来、福祉を受けていれば正常な生活をしていた人たちで、福祉へつなぐことでそこに戻していこうとしている」と述べた。

法務省によると、12年度の時点で、受刑者の3分の2は何らかの病気に罹患(りかん)していた。循環器疾患が一番多く、続いて精神および行動障害だった。

受刑者の高齢化に対応するため、刑務官は介護士のような役割も果たしている。福島刑務支所長の赤間ひろみ氏によると、高齢で障害を持つ受刑者の排せつ物清掃や、歩行補助を娘や孫の年齢の刑務官が担当している。(略)

■再出発
社会福祉士が過去に支援したある1人の元受刑者は社会での再出発に成功し、政府が進めるプログラム(09年からの地域定着支援センター設置と社会復帰支援活動)が一定の成功を収めていることを示唆している。その78歳男性は、空腹を満たすために無銭飲食、すりや万引きを繰り返し、15回服役した経験を持つ。(略)

社会福祉士の支援で5年前に長崎県諫早市の養護老人ホーム聖フランシスコ園に入所した。1日のほとんど園内の農園で野菜を育てることに費やし、テレビで喜劇を見ることが楽しみだ。入所以来、犯罪は一度も起こしていない。

「今が生きていた中で一番幸せだ」と男性は養護老人ホームの4畳ほどの自室で日に焼けた顔をしわくちゃにして恥ずかしそうに笑った。「食事はおいしいし、誕生日を祝ってもらえるし、毎日風呂に入れる。刑務所から出るときに世話をしてくれた人たちを絶対裏切りたくない」。

■「出るのが怖い」
高齢受刑者の多くは、孤児院で育ち、身体的、性的暴力を受けていたり、障害があるにもかかわらず家族の支援が受けられなかったりなど、難しい過去を背負っていると長崎県地域定着支援センター所長の伊豆丸剛史氏は言う。伊豆丸氏が以前に支援した元受刑者は「刑務所から出るのが怖かった」と彼につぶやいた。刑務所での生活は望んでいなかったが、外での生活はもっと嫌だったからだという。

「その言葉に、罪を犯さざるを得なかった当人と、社会的問題の根幹が濃縮されている気がした。服役を繰り返し、高齢化していくと社会復帰できる要素がだんだん削られていく。ある程度資源が残っている早いうちに介入する必要性を感じている」と伊豆丸氏は述べた。(略)

(抜粋終わり)
 
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