アメリカ:闇の支配構造と略奪戦争
300922 「成熟社会の経済学」(小野 善康 著より) 〜成熟社会に突入したことで人々の金を使おうという意欲が消滅した〜
 
ぴぴ 15/02/05 PM11 【印刷用へ
「成熟社会の経済学―長期不況をどう克服するか」(小野 善康 著)リンクの書評。
供給過剰とはどういうことを示すのか、具体的に提示してくれている。以下「知の快楽 (哲学の森に遊ぶ)」 リンク 
より。

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小野善康「成熟社会の経済学」

アメリカの金融危機やEUの債務危機に直面して、今まで大繁栄を誇っていた新古典派経済学が評判を落し、一時は青息吐息の状態だったケインズ経済学が見直されるようになったが、どうも、そのケインズ経済学でも、今起きている事態、とりわけ日本の長期不況のような現象を説明できていない、説明できないから不況脱出に向けての的確な処方箋も書けない。いったいどうなっているのかね、というのが筆者のような経済学音痴の正直な感想だった。

そんな疑問に明確に答えてくれる本が現れた。小野善康さんの「成熟社会の経済学」(岩波新書)という本だ。この本の中で小野さんは、日本が長期不況に陥ったのは、経済が成熟して人々の欲しいものが満たされ、今までのような旺盛な消費意欲がなくなってしまったことの結果だと説いている。その部分を引用してみよう。

「成熟社会とは、物やサービスがそろい、お金の魅力を放棄してでも購入しようという欲望は伸びなくなったのに、潜在的な供給能力は資本の蓄積や技術の進歩で拡大し、需要を超えてしまった状態です。日本は90年代以降このような状態に突入し、労働力をすべて雇って生産設備を稼働すると、物やサービスが売れ残ってしまうようになった。それで雇用が不足し、慢性的な失業が生まれて長期不況になったのです」

新古典派の経済学は、需要と供給は、たとえ一致していなくても短期間の調整で一致するようになり、その時点で完全雇用も実現されると説いていた。これに対してケインズ経済学は、需要と供給が一致した時に完全雇用が実現するのはレアケースで、多くの場合には不完全雇用下での均衡が見られるに過ぎない、それは有効需要が不足していることによるのであって、経済と云うものはセーの法則にあるような供給主導で動くのではなく、需要が問題なのだと説いた。

しかし日本の長期不況は、ケインズの理論でも解決されない。いくら有効需要をふやそうとする政策をとっても、不況からの脱出ができないのだ。それはなぜか。この疑問に小野さんの理論は答えてくれるわけだ。

小野さんによれば、新古典派の経済学も、ケインズの経済学も、比較的に短期間で需要と供給が一致されると考えていることは共通だ。新古典派は、需給の不均衡を放置していても、経済法則が働いて調整が行われ、比較的短期間で均衡が達成されるという。ケインズ派は、需給が不均衡なのは需要が不足しているからだから、政府が金をばらまいてやれば、それが需要を掘り起し、経済は均衡に向かうはずだ、という。ところが現実にはそうはならない。その基本的な理由は、成熟社会に突入したことによって、人々の金を使おうという意欲が消滅したことにある、そういうわけである。

人々は、もはや欲望に満足して、あえて金を使おうという積極的な動機をもたない。そんな人々を相手に、政府が金をばらまいたり、或は減税をしたりして、人々の可処分所得を増やしてやっても、それらの金はためられるだけで使われることにはならない。

それ故本当に問題なのは、人々の所得を増やしてやったり、あるいは企業の生産能力を高めてやる政策をとることではない。経済界の連中が言っているように生産力を増強したところが、それはせいぜい商品の価格を下げるくらいの効果しか持たない、価格が下がればたしかに輸出は伸びるが、輸出が伸びて国際収支が黒字基調になり、それが恒常的な円高になって、企業の活動に跳ね返ってくるばかりだ。本当に必要なのは、輸出に夢中になることではなく、内需を拡大することだ、そう小野さんはいうのだ。

今の日本が陥っている最大の問題は、国民全体が金の亡者になってしまったことだ、とも小野さんはいう。金とは一国全体にとっては経済を循環させるための血液の如きものであり、国民個人にとっては、物を手に入れるための手段である。いずれにしても目的そのものにはなり得ない。ところが今の時点の日本人は、金そのものが目的のようにふるまっている。

金は使わないでとっていても、何の役にも立たないはずだ。死んでしまったあとではあの世に持っていくこともできない。だから生きているうちに使うべきなのだ。それなのに貯めることばかり考えて金を使わない、金を使わないから当然需要が不足する、不足した需要に反比例して経済規模は縮小し、雇用は失われ、人々は不幸になる。本来人々を幸福にする手段であるはずの金が、今の日本では人々を不幸にしている、そうも小野さんはいう。いやはや、目からうろことは、小野さんのいうところを評して言う言葉だ。

こんなわけで、筆者は日頃から経済理論に対して抱いていた漠然とした疑問を、小野さんによって一気に晴らしてもらったような気になった次第なのである。

(以上)
 
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