生命原理・自然の摂理
29690 多様化戦略(機能)の持つ意味、その2
 
吉国幹雄 ( 49 鹿児島 講師 ) 02/04/30 PM00 【印刷用へ
「可能性の蓄積をめぐる問題点」(28445)とも関連するところですが、私は、基底構造(生物学的構造=種)には、構造を付加したり転換させたりする原因(つまり意志)を孕んでいると思います。もちろん、付加構造(例えば亜種)ができたり構造転換するきっかけは、地殻の大変動や種間闘争という環境の劇的な変化(場の大転換)にあるのでしょうが。

このような大進化を説明するには、潜在適応能力が構造内部に可能性として秘められている(蓄積されているから)として考えた方がすっきりします。“同類他者を生み出す”という積極的な意味での多様化戦略は、その可能性の蓄積機能としてあるのではないかと思うのです。

カンブリア紀に一気に多様な生物種が出現したことは、付加構造にしても、転換構造にしても、「基底構造は一気に変わりうる」ことを示しているのではないでしょうか。そのためには、その転換以前に転換可能性が蓄積されているわけです。もちろんそれは、既にほぼ明らかにされているように「多様なDNAの変異蓄積(DNA量の増大も含みます)が、カンブリア紀の大爆発以前に起こっていた」というような遺伝子に着目した視点だでけはなく、生物学的構造内部、つまり同一種のレベルで個体・細胞・DNAに潜在化する多様性を通して、可能性(転換エネルギー)が蓄積されていたのではないかと思います。
 
そうすると、次の疑問が起こります。つまり、多様化によって構造は変わるのか? 多様性によって基底構造が変化するのではないのか?

まず、多様化がそのまま構造転換を引き起こすようでは、そもそも基底構造が成立していない(種の存立基盤がない)わけで、それでは協働性を持った同類にならないわけです。だから、万が一そのような因子が発現されれば排除されるだろうし、それを生み出さないような(集団を突き抜けない範囲での)多様性の確保ということになります。その一つの維持システムが「性システム」なわけです。多様な同類他者を生み出すシステムであると同時に、変異可能性を蓄積するシステムであり、同一性を保持するシステムです。

それでは、構造が転換されるとき、あるいは構造付加されるとき、どのように引き起こされるのか。私は以前、パラダイムシフトについて以下のように述べました。

>その転換は現象的にはゲシュタルト転換のように、あるいは今西が「種は変わる時がくれば変わる」と言ったように、転換エネルギーがある閾値を超えれば一気に変わるもの。それは不連続線を超えるというよりも、社会ももちろん個人も意識が少しずつ転換しながら、ある時期に一気にパラダイムシフトするというイメージですが…。<(21214)

おそらく、生物学的構造変化もこのようなパラダイムシフトを行うのだと思います。ただし、これは多様化した個体(要素)の一つから、個体そのものが新たなる構造を生みだすのではないという点に注意する必要があります。この点は 「多様性」の意味を理解する上で重要だと思います。ここが不十分だと、多様性と同一性の戦略的意味に矛盾を感じてしまうのではないでしょうか。

『生命を捉えなおす』(清水博:中公新書)では、個体と要素の関係において各要素に入ってきたさまざまな情報に反応しての要素のさまざまなリズムがあり、それらが一気に引き込み現象を起して同調し、新たなるリズムを起す(一種の創発性)と述べています。私は、このような個体に注目しての言明だけでなく、むしろ種(生物学的構造)と種内の多様な個体との関係にこそ、言及されべきではないかと思います。集団内のさまざまな多様な個体、それらが集まって単純なΣではなく、一つの新たなる適応機能(答え)を生み出していくのが、生命体の集まりなのだと。

このことは、最近の認知観であるところの、「分散表象の処理」を核とするコネクショニズムでも触れられている点です。分散表象とは分散(多様化した)ニューロンがAという事象に対して分散して(Aを分断して別々の箇所を)認知するのではなく、それぞれがA全体を認知して、それらを重ね合わせて新たなる認知を生み出すという仕組みです。

つまり、多様性であるがゆえに、新たなる適応(一つの突破口)が可能となり、種の同一性が保たれというわけです。

だから、構造を変える可能性蓄積といっても、それは全く違うシステム上で起こるのではなく、むしろそのシステムそのものが可能性蓄積システムなのではないかと思います。つまり、多様化戦略(多様化認知システムと呼んでもよいが)を推し進めること。そのシステムがあるがゆえに、環境の劇的変化などの「きっかけ」で、それぞれが認知した状況が集約され一気に同調されることで、既存の構造を転換あるいは付加するのではないでしょうか。
 
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