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294527 ミツバチに影響、だけじゃない?農薬ネオニコチノイド最新事情まとめ
 
りんいちろう 14/08/28 AM02 【印刷用へ
 ミツバチ大量死の原因とされている「ネオニコチノイド」ですが、ミツバチだけでなく人体にも影響があり、既にEU、米国だけでなく、中国、韓国でも規制の対象になっています。それに引き換え、日本では相変わらず野放し状態です。

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ミツバチの減少との関係が指摘されている農薬「ネオニコチノイド」。海外では規制に向けて動く一方、日本では野放し? 最新情報をまとめました。(斉藤円華)

■無色で無臭 神経に作用

 地球のココロでは、これまでもニュースでネオニコチノイドについて取り上げたことがありますが、改めておさらいしましょう。ネオニコチノイドはその名の通り、タバコに含まれるニコチンとよく似た性質をもつ物質として開発されました。神経伝達物質であるアセチルコリンと同じようにふるまうことで、神経の正常な働きを阻害します。神経毒性が強いのがネオニコチノイドの大きな特徴です。

 また、ネオニコチノイドは無色・無臭で水に溶けやすいことから、植物の内部にまで行き届く「浸透性」や、環境中で分解しにくいため殺虫効果が長い期間続く「残効性」にも特徴があります。このため、例えば作物の種をネオニコチノイド系農薬でコーティングして畑にまくと、植物の葉や茎や実などの内部にネオニコチノイドが行き渡り、虫を寄せ付けません。

■国内使用量、15年で3倍 人への影響も

 主なネオニコチノイドの種類にはクロチアニジン、イミダクロプリド、チアメトキサム、フィプロニルなど。ネオニコチノイドは日本の化学メーカーが開発したものが多いのですが、日本国内でのネオニコチノイド農薬の使用量はこの15年で3倍にも増えています。その大きな理由としては、効き目が長く続くために従来の農薬と比べて散布する量や回数が減らせることが挙げられます。

 ところが、ネオニコチノイドの使用が増えるに従い、各地でミツバチが大量に死ぬ、あるいは巣箱からいなくなるなどの現象が発生。ネオニコチノイドがミツバチに悪影響を与えるとする報告や研究が相次いでいます。

 また、東京女子医科大学の平久美子医師は「日本では、ネオニコチノイドによる環境中毒が発生している」と指摘。屋外散布などでネオニコチノイドを浴びた、あるいは同物質を含む野菜や果物、茶を1日に500グラム、しかも10日以上食べた人の中に、頭痛や全身のだるさ、手のふるえ、記憶障害などの症状が見られた、と報告しています(※)。

※出典:2014年6月9日 IUCN/TFSF「浸透性農薬世界総合評価書(WIA)」研究成果発表会配布資料「日本人とネオニコチノイド」

■食品残留基準値を緩和?

 このように昆虫だけでなく、人への影響も心配されるネオニコチノイドですが、日本では今、食品中のネオニコチノイドの残留基準値を緩めようという動きが起きています。日本の残留基準値はEUと比べて高い品目が多いのですが、厚生労働省が示した案では、クロチアニジンの場合、例えばホウレンソウで3ppmから40ppm(13倍)、シュンギクで0.2ppmから10ppm(50倍)に緩和。中には2千倍(カブの葉、40ppm)というものもあります。

 大手化学メーカーが政府に働きかけたことで始まった今回の緩和への動き。ところがパブリックコメントでは緩和に反対する意見が大半を占めました。しかも、欧州食品安全機関(EFSA)が一部のネオニコチノイドについて慢性許容量(ADI)や急性毒性の許容量(ARfD)を引き下げるよう推奨したことを受け、今年3月、緩和について再審議が決定。現在も審議中です。

■EUに続き米国もネオニコ規制へ

 日本では実質上、「野放し」とも言えるネオニコチノイドですが、海外ではどうなっているでしょうか。EUでは去年12月、3種類のネオニコチノイド(クロチアニジン、イミダクロプリド、チアメトキサム)について2年間、使用を禁止することが決まりました。

 韓国でも今年2月、EUの決定を受けて規制を強化。また、米国は6月、オバマ大統領が「ミツバチ、その他花粉媒介生物の健康を促進する連邦レベルの戦略の策定」という覚え書きを発表しました。この中で、ミツバチなどの花粉媒介生物を保護するプランをまとめるための特別委員会を立ち上げること、ネオニコチノイドが花粉媒介生物に与える影響を調べ、それらの生物を守るための行動をとること、などを政府に求めています。

■「現在の使用規模は生物多様性損なう」

 海外で規制に向けた動きが進むのは、植物の受粉を手伝うミツバチなどの花粉媒介生物が、農業、ひいては経済に大きな利益をもたらすことを理解しているから、と言えます。逆にいえば、ネオニコチノイドの使用が生態系に被害を与えれば、それは経済的ダメージにもなる、ということです。

 IUCN(世界自然保護連合)の科学者グループは6月、「浸透性農薬に関する世界的な総合評価書」を発表。この評価書は、ネオニコチノイドのような浸透性農薬が生態系に与える影響について、農薬メーカーが資金を出して作成した論文も含め、これまでに発表された850本以上の学術論文を検討しました。

 その上で、「ネオニコチノイドの現在の使用規模は持続可能ではない」「それらを使い続けることは、地球規模で重要な無脊椎動物の減少を加速させ、生態系の多様性、安定性などを損ないかねない」「広範な生物に影響を及ぼす浸透性殺虫剤を、大規模かつ予防的に使用することは見直さなければならない」などと結論付けています。

 ネオニコチノイドは農薬散布の負担を減らす一方、人を含む生態系全般に大きな影響を及ぼす可能性がある、ということが分かりつつあります。ネオニコチノイドの使用を今すぐ、全面的にやめるのは現実的でないにしても、必要以上、あるいは過剰に使うことは避けられるはず。

 日本でも、トキが生息する新潟県佐渡で、水田でのネオニコチノイドの使用量を2011年から2年かけて約9割減らすことに成功しています。ネオニコチノイドをこれからどうするか、関心を持って注目する必要があるのではないでしょうか。
 
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