世界各国の状況
293327 「共同富裕」を実現した中国一の金持ち村、華西村2
 
ハイネケン 14/08/08 PM09 【印刷用へ
293326の続きです。


■厳格な集団主義体制

村に建つ別荘のような高級住宅街。そこにすむ27歳お若い夫婦の邸宅の様子。
床面積500平方メートル3階建て。2歳の息子と3人暮らし。玄関を入ると吹き抜けのロビー、リビングには大型液晶テレビとソファがある。3階の部屋は使われていない。

家の価格は200万元(約2400万円)ほど。しかし村の電気関係の工場で働く夫の年収は約8万元(約94万円)ほどしかないが、大学を卒業したとき、村に結婚の報告をしたら、この家を与えてくれたという。

実は、華西村の発展を支えてきたのは、厳格な集団主義体制にある。

村民の就職は村が管理し、村営企業に振り分ける。給料も現金で支給されるのは二割だけで残りの八割は「株式」として分配される。「株式」は自由には使えないが、たまれば車や家に交換できる仕組みになっている。この若い夫婦の場合は、夫の両親が貯めた「株式」と交換で家を与えられたのだ。

また、村営企業の実績によってボーナスを分配することで、社会主義が陥りがちな「働いても、働かなくても同じ給料」という労働意欲の減衰を防いでいる。

一方で、大学までの教育費や医療費は、村が負担。年に一回、海外旅行も支給されるなどの福利厚生があるという。

先ほどの夫婦は、村の外にある大学の同級生。妻は遠く離れた遼寧省の都市の出身で、都市戸籍を持っている。都市戸籍を持つ女性が農村戸籍しか持たない男性と結婚するのは稀。ここからも華西村の豊かさがわかる。


この高級住宅街、家のデザインや色は、ちょっとずつ違ってはいるものの、大きさや形はほとんど同じ。村がまとめて建設し、村民に分配しているからである。

つまり、この村は、資本主義的なやり方で経済発展を遂げつつ、社会主義的なやり方で富を公平に分配しているのである。

中国そのものも、改革開放政策によって市場原理を導入した。経済的には資本主義へと舵を切り、猛烈な勢いで経済発展を遂げてきた。しかし、富の分配は上手く行かず、貧富の格差の拡大が深刻な社会問題となって横たわっているのだ。


■今なお根強い毛沢東の思想

華西村は、毛沢東時代の中国がもともと理想としていた、マルクス主義の「人類史の発展の最終段階としての社会体制である共産社会」を実現しているかに見える。

「共産社会」とは、言わば「ユートピア(理想郷)」だ。華西村のスローガンは、まさに「共同富裕」。つまり「共に豊かになろう」なのだ。

この華西村の成功を学ぼうと、連日、全国各地から視察団が押し寄せる。省、市、県、村といった自治体の役人たちである。

その視察団に最も人気なのが、呉さんの講演。
「社会主義とは何か?一言で言えば、人民を幸せに生活させることが社会主義だ」と熱弁をふるう。


■村の合併に見る旧村民と新村民との経済格差

華西村は、ここ数年、周辺の20の村を吸収合併してきた。華西村としては、事業の拡大で村営企業が増え、従業員の確保が必要だった。一方周辺の村としても華西村と一緒になったほうが、恩恵を得られるからだ。

華西村の旧村民は約2000人。2011年で2万8000人にのぼる。

ただし、旧村民と新村民の間には、収入にも福利厚生にも差を設けている。これに新村民は不満に思わないのだろうか。
新村民の村長にあたる人物曰く「華西村は、50年間も奮闘してきたわけだから、合併された村がすぐに同じ待遇を受けるのは、かえって不公平だろう。」

この旧村民の村長は、現在では村役場の一職員として働いている。


■華西村に存在する3つの格差

村が拡大し、出稼ぎ労働者が華西村の工場で多く働く。彼らの収入は、例えば鉄鋼工場で12時間の労働なら月給5000元(約6万円)。2011年当時、北京で大卒の初任給が3000元、広東省の工場労働者なら熟練工で1500〜3500元が相場。

5000元はかなり待遇が良いと言えるが、その収入のほとんどが生活費で消えるという。先の高級住宅とは違って安普請のアパート(トイレ・フロ共同)で、村の中心の商店街からも遠く離れ車も所有できる経済的ゆとりがないらしい。

中国の戸籍制度は、市や村単位で細かく分類され、基本的には自分が生まれた自治体でしか、行政サービスを受けられない。出稼ぎ先に長く住んでも、そこでの公共サービスや社会保障は受けられないのだ。しかも、親の戸籍によって子供の戸籍も決まってしまう。

もっともわかりやすいのが「都市戸籍」と「農村戸籍」の分類。都市戸籍のほうが、社会福祉や公共サービス、就職などで圧倒的に有利になっている。

最近では、戸籍の変更を認めるケースも一部に出てきたが、まだ、ごく一部に限られている。

華西村は農村戸籍だが、その裕福さと充実した社会福祉によって戸籍を希望する人は多い。以前は村民と結婚すれば戸籍を取得できたが、今はそれも難しい。「特別な才能や技術など、村の発展に役立つ人にしか戸籍を与えない」ことになっているという。

「共同富裕」を掲げる華西村だが、現実には3つの階層が存在している。旧村民と新村民、そして出稼ぎ。出稼ぎの家族は、5年以上も華西村で働いているが、戸籍を取得できていない。

リーダーの呉は、2013年3月18日に肺がんで逝去。84歳。後を継いだのは四男。他の家族も村営企業のトップや村の要職に就いているものの、協力なリーダーを失った華西村の将来はどうなっていくのか。
 
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