健康と食と医
291671 腸内免疫の恒常性は共生細菌と母体との相互作用で維持されている
 
西谷文宏 ( 37 和歌山 建築設計 ) 14/06/24 PM08 【印刷用へ
腸内細菌は、栄養吸収、免疫機能向上など、生物が生きていく上で必要不可欠な働きを行っている。

一方で母体(人体)からしてみれば、別の生物(異種)が腸内に存在していることになり、免疫攻撃の対象となる。特に腸内細菌は人類の場合で100兆個以上が存在しており、免疫機能をコントロールすることが出来なければ、腸内は免疫機能によって炎症を引き起こすことになる。(実際、腸内細菌のバランスが破綻したことによる疾患として、炎症性腸疾患が引き起こされる)

腸内細菌はこの母胎の免疫機能をコントロールすることで文字通り「共生」しているのだが、その免疫コントロールは、腸内細菌が栄養源の分解によって産出する代謝物質=酪酸によって、免疫活性化を制御する特殊な免疫細胞を分化(≒産出)させることで実現されていることが以下の研究から解った。
なお、この腸内細菌が産出する酪酸は、大腸上皮細胞の重要なエネルギー源として使われている。

免疫系の活性化と抑制のバランスを保つことで、腸内細菌の体内共生を可能にし、同時に母体の栄養吸収・免疫機能向上を実現している=母体・共生細菌一体となって生存力を上げている。その自然の摂理には驚かされるばかりである。

以下、「腸内細菌の産生する酪酸による制御性T細胞の分化の誘導」2013年12月25日 古澤之裕・福田真嗣・長谷耕二・大野博司共著より引用
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ヒトの体表や粘膜には体細胞の総数をはるかにこえる数の共生微生物が定着しており,恒常性の維持において重要な役割をはたしている.われわれヒトを含む動物の腸内には腸内フローラと総称される多種多様な細菌が棲息している.ヒトの腸内フローラは細菌種として1000種以上,その総数は100兆個以上と算出されており,腸管は潜在的な炎症の誘導の場となっている.

しかしながら,健常な腸管においては,常在細菌に対する免疫応答(免疫機能が働く)と免疫寛容(免疫機能を抑制する)とのバランスにより炎症応答は適切に制御されている.このバランスの破綻は炎症性腸疾患に代表される慢性あるいは再発性の炎症疾患の原因となる.

近年,腸内細菌をもたない無菌マウスや,抗生物質の投与により腸内フローラをかく乱したマウスを用いた研究から,腸内常在細菌は免疫系の成熟や機能の維持において必要不可欠とされている.
さらに最近の研究より,クロストリジウム目に属する細菌が腸内細菌に対する免疫寛容をつかさどる制御性T細胞の分化を誘導することが判明している.
(引用者注:制御性T細胞=炎症やアレルギーの発端となる過度の免疫応答を抑制するT細胞。一般にT細胞は免疫系の司令塔として免疫活性化に働くが、制御性T細胞はほかのT細胞の働きを抑制性に制御することにより、過剰なT細胞の働きを抑えることで、炎症の収束や自己免疫疾患発症を抑制する)

このように,腸管免疫系の恒常性は共生細菌と宿主との相互作用を介して維持されているが,共生細菌による制御性T細胞の分化の誘導の機構は不明であった.この研究では,腸内細菌が産生する代謝産物に着目し,制御性T細胞の分化の誘導能をもつ代謝産物の探索とその分子機構の解明を試みた.

(代謝産物探索と分子機構解明に関する過程は省略。リンク参照→リンク

(探索と解明の結果)腸内細菌(クロストリジウム目に属する細菌)は代謝産物のひとつとして酪酸を産生することにより,大腸において制御性T細胞の分化を促進することが明らかになった.
近年,わが国においても食生活の欧米化にともない腸内環境のバランスのくずれることが炎症性腸疾患の増加の一因と考えられている.実際に,炎症性腸疾患の患者においては酪酸産生細菌が顕著に減少することや12),炎症性腸疾患の症状の緩和のため酪酸の腸への注入あるいは酪酸産生細菌の経口投与が経験的に行われている点から,ヒトにおいても酪酸が腸管免疫系の恒常性の維持に寄与していることが示唆される.酪酸による制御性T細胞の選択的な分化の誘導機構に関しては今後の課題であるものの,この研究の成果は,原因不明の疾患である炎症性腸疾患の病態機構の解明にもつながるものである.

(引用終わり)
 
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