心の本体=共認機能の形成過程
290174 「待つ」という積極的行動
 
川内麻生 ( 24 会社員 ) 14/05/13 PM03 【印刷用へ
【「待つ」という積極的行動について 】リンク
より引用。

---------------------------- 以下引用 ----------------------------

食事であれ、買い物であれ、メールであれ、「待たせない」というのがサービスの一つとなった時代には、待つこと自体が堪えられない人格形成がなされていきます。

レストランで注文を取りに来ないのをイライラする、メールの返事が来ないのをイライラする、勉強の成果がすぐにでないのに落ち込む、電車がちょっと遅れると駅員にどなり散らす。
そのような時代の中で、「待たなければならない」ことへの耐性が弱くなってきているように思います。

たとえば、怪我や病気の治癒。安静にして放っておけば自然に治るようなレベルのものでさえ、治るのを待てずに、薬で治そうとしてしまう人が多いようです。体力を回復しながら治癒を待つ、という行為は場合によっては積極的治療行為なのですが、それを薬で止めてします。そういうことを繰り返していくうちに人間が本来もっていた自己回復力はどんどん衰え、同時に自分のからだの声を聞きとる力も衰えていってしまいます。人間が本来持っている自己治癒力はおそらく計り知れないものがあるだろうと思うのですが、それを自らどんどん損なっていっているわけです。

あるいは、知的成長。知識の獲得自体はスピードをあげることは可能なのですが、それが身に着くにはやはり長い年月をかけてその知識を身体化していくことが必要になります。

今は、自分が理解できないものに出くわすと、否定的にとらえて排除してしまおうとする学生が多いようです。いわく、「説明が下手」「言葉が難しすぎる」「抽象的すぎる」「自分には関係ない」。 わからないことがあるとすぐにネットで検索して具体的情報を得ることになれている学生たちにはわからなさを留めておく耐性がないようです。偉人や哲学者の言葉を集めたり愚かな解釈をしたものが売れてしまうのも、人々が即効性を求めて答えをほしがっているからでしょう。

あるいは子育て。大人は環境を整えて待つことしかできないという領域は多いのですが、なかなか待てない。すぐに自分の思い通りにしたがってしまう。もちろん放任しろというわけではありませんが、それぞれの子供のスピードに合わせて成長を待つことは必要です。子供を東大に入れたいと思うならば、なぜ自分は子供を東大に入れたいかじっくり考えてから、子供にその意志を伝えるべきでしょう。そういう親がいる環境ならば東大に入るために小さいころから無理やりお勉強をさせなくても、その程度の成果は出せる子供に育つでしょう。「わが子を東大に入れる本」やら「わが子を天才にする本」やらというようなものを手に取る気持ちは、子供を駄目にする親への第一歩なのでしょう。

さらには発話を待つこと。ツイッターなどでは「焼肉屋ナウ」といった言葉が飛び交いますが、それを二日経っても発言したいか、などとは誰も考えません。ツイートそのものを否定するつもりはありませんが、そのような発話が習慣化されることで、言語や思考、人格そのものが影響されることは十分にありうることです。言葉を熟成し反芻しその上で発話するという習慣を身につけることも必要だと思います。
テレビの討論番組やネット上での、議論とは言えないレベルの意見のやり取りなどは、、相手が意見を言い終わるまで待つ、それを自分が理解するまで待つ、自分の意見が熟成するまで待つ、といった「待つ」という行為が完全に抜け落ちているが故に、ただ自己主張をし相手を否定するだけの権力示威大会となり果てているように思われます。

---------------------------- 引用以上 ----------------------------

このような傾向は近代産業社会の特徴であり、企業活動を表す言葉からもそれを読み解くことができます。

【現代人が失いつつある「待つ」の効用(鷲田清一)】
リンク
より引用

---------------------------- 以下引用 ----------------------------

プロジェクト、プロフィット(利益)、プロスペクト(見込み)、プログラム(計画)、プロダクション(生産)、プログレス(前進)、プロモーション(昇進)…。これらは、ギリシャ語やラテン語の動詞に接頭辞「プロ(pro)」をつけた言葉です。プロ(pro)は「前に」「先に」「あらかじめ」という意味があり、要するにすべてが前のめり、前傾姿勢なんですね。
(先に目標を設定し、そこに至る最短・最適のルートを想定する。)

待つことはなく、未来は現在から想像される範囲の延長線上にしかない。これは、効率的かもしれないけれど、つまらないと思いませんか。「待つ」には、「偶然の(想定外の)働き」に期待することも含まれています。つまり、前のめりになって未来を囲い込むのではなく、外に対して自らを開くことで偶然の働きが起こり得る。

プラン通りにプロジェクトが進めば、予定通りの利益は得られるのでしょう。でも、プランを逸脱していたら、もっと大きな利益が生まれたかもしれない。待たない、待てない社会というのは、そういう人知を超えた可能性を自ら捨てているような気がします。

---------------------------- 引用以上 ----------------------------


企業経営も年度ごとに計画を見直し、寄り道・回り道は厳禁で、最短で最多の成果を上げることを求められる。
「待つ」ということが非効率的でネガティブな行為、という位置付けになっている。
しかし、人間の営みは「待つ」が根っこにあり、農耕や牧畜は自然と生命という、意のままにならないもの、どうしようもないもの、待つことしかできないものによって成果が決まります。そういうものへの感受性をなくしてはいけないのではないでしょうか。
これからの時代、前傾姿勢だけの仕事には限界を感じます。
 
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