現代意識潮流を探る
289660 教える時代の終焉
 
川井孝浩 HP ( 41 東京 社会事業 ) 14/04/26 PM06 【印刷用へ
■無料で学べる時代
近年、先端の教育機関では反転授業形式の導入が進められ、授業は参加・自立型へと変化を見せ始めた。この流れを促進した1つの要因はICTの普及であるが、今や動画教材は無料で配布される時代となった。

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ネットは既に主体的な学びの媒体となっており、教わらずとも自ら必要な情報を取得し、思考の道具の一部として活用され始めている。

■大学も模索に入っている
先日、ある国立大学で非常勤講師としての役割を頂くことになった。類塾で「自考力」を鍛える授業を行い、社会人向けのフリーディスカッション形式の講座を開いている事に着目され、ぜひ学生向けにも授業を通じて若者の活力を引き出して欲しいという依頼であった。

聞けば、長年研究に携わってきた先生自身、近年の若者の意識変化は如実に感じているものの、従来の授業スタイルでは惹きつけることが出来ないと悩まれている。授業に真面目に出席する学生は確かに増えたが、一方で就活のことばかり気にしており、授業内容では無く成績の取りやすさ、課題の軽重が履修判断となる傾向が強まっている。専門領域の深い追求などに意識が向かうはずもなく、ただ単位と成績の為だけに黙々と受け身の授業を続ける事に危機感を持たれていた。

そこで、自考型のワークショップを組み立てて実践したところ、学生達から興味深い意見が次々に出てきた。

・大学で学ぶのは何故か?
・よい就職先とは何か?大卒である必要性はどこにあるのか?
・大学に入ってから学ばなくなるのは何故か?(周りを見ているとそう感じる)
・何のために生きるのか? Etc.

大学に入りたての学生から、上記のような疑問が次々に出される状況であったが、そのような問題意識を共有し、さらに何が問題でどうして行けば良いのかを考えるように切り口を整理していく過程を、実に楽しそうに議論していた。ちなみに授業科目は科学技術系の講座の為、原発問題なども話題に登ったが、彼らは原発問題はもはや技術領域では無く政治的課題である事を十分に認知している。

今回は課題発掘までの授業としたが、幸い学生達の反応は良好であった。特に最近はスライドを活用して一方的に話して、資料を配布して終わりという授業が殆どで、やり取りなどは皆無。今までにない授業でとても楽しかった、と充足していた。

■講演会では社会は変わらない
小泉フィーバーの辺りから劇場型社会と言われるようになり、マスコミの世論誘導はあからさまに。そして、311、原発事故、’12年不正選挙疑惑等を経て、マスコミ不信も相当定着した感がある。

しかし、事実情報を求める声に応じて、世間で増えたのは「講演会」需要。
学校の授業も同様だが、一方的に教えるだけの場がいくら増えても、現実は変わらない。これではTVの視聴者となんら変わりがない訳で、講演会や授業は聴衆・生徒が居ることによって成り立つ構造であるが、共認支配の構造がお茶の間から教室に変わるだけで、聴衆は自ら考えるのでは無く、ただ「いい話を聞きたいだけ」に留まってしまう。

講演者は勿論一定程度の追求をされている方である事は多いが、参加者自身が物事を追求し実践しない事には殆ど意味を持たない。しかし、講演を聞いた直後からそれを自分のものにしようとする人は、ほぼ1割未満。つまり、殆どはTVを見ているのと同じ感覚である事を物語っている。

■OJTの文化は人を機械化する事が本来の目的
OJTは、1935年頃(第一次大戦)のアメリカ軍需産業(造船所)における急速な新人教育の必要性から生み出された手法。効率よく特定の仕事だけをさせるように仕向ける訓練だ。

つまり、マニュアル通りにだけ動く労働者をいかに効率的に生産するか?という事にだけ目的が置かれている為、主体性や自考力などは一切求められていない。その為には、一方的に教えたほうが都合が良い、というだけ。

日本では技術の伝承は徒弟制度を通じて行われてきたが、この仕組みの中には「教える」場面が出てこない。弟子は師匠の生活の一部始終を観察し、真似しながら、技術を盗んで行く。見よう見まねで失敗を重ね、工夫を凝らしていく中で、皮膚感覚レベルの仕事を身に付けていく事が出来る。例えば日本の歴史的な建築群は、そうした環境を読み解き自考する職人たちの手によって練り上げられた誇るべき象徴だ。

リンク
280907 教えないから、上がってくる。

今、日本の建設業界ではかなり深刻な職人不足が顕在化しつつある。若者のなり手がおらず、いよいよ技術継承すらも危うくなってきているという話をあちこちで耳にする。こういった状況も、全ては「教えてきた」事の弊害であろう。

■自考し、追求を重ねる以外に突破口は無い
明治以降、富国強兵と教育基本法、試験制度、官僚制度を通じて、「教えられること」に従順な者がエリートとなり、この社会の枠組みを作り上げてきた。

個性の尊重だの生物多様性だのと言いながら、一方的に都合の良い情報だけを教えて、極力考えない人間を作り出してきた結果、誰も疑うこと無くお金に従う世の中が出来上がった。よく考えて見れば只の金属や紙切れに過ぎない物も、ちゃんと教えれば大事なものになるという一番解りやすい事例かもしれない。しかし今や市場システムも破たん寸前。

ここに来て「教える時代」もついに終焉を迎えようとしている。これからは、自考し、追求を重ねる事で、従来の常識を塗り替えていく時代となる。
 
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