社員の活力を引き上げるには?
289032 手書き描写が人の思考を突き動かす
 
14/04/06 PM09 【印刷用へ
50億円もの巨額の制作費を費やしたアニメーションとして昨年話題になったスタジオジブリの「かぐや姫の物語」。物語のテーマや音楽もさることながら高畑勲監督が試みた手書き風描写は、コンピューターグラッフィクス全盛の現代アニメーションとは一線を画している。

「スケッチのようにササッと、今ここにあるものを捉えた」線の勢いを残した独特の絵。大胆な余白。見る者に一方的に情報を与えるのではなく、想像するきっかけを与え、登場人物の心情に同化することを促す。

人やものの本質を一本一本の手書き線に託すことで、見る者の思考を突き動かす。次代の芸術表現の萌芽を感じさせます。


アニメスタイルより引用
リンク
■引用開始────────────────────────────
── 8年間おつかれさまでした。

西村 あ、いえいえ。
(注記:西村=西村義明・スタジオジブリプロデューサー)

── いきなり的外れな質問かもしれないんですが、今回の『かぐや姫の物語』は、20世紀末に高畑さんが企画していた「絵巻物のようなアニメーション」とは、別物の企画なんですか。

西村 それとは別物です。「平家物語」を鳥獣戯画でやるという企画が、僕が担当になる前にはあったみたいですけど、企画としては随分前に潰えています。僕が担当に就いた頃には、そういう話は一切なかったですね。

── なるほど。

西村 日本のアニメーションが、絵巻物や浮世絵といった日本の絵画の流れを汲んでいる、みたいな話は高畑さんとよくしていました。ただ、具体的に「絵巻物みたいなアニメーションを作りたい」という話は一度もしていませんね。

── すると『かぐや姫』という題材を選んだ段階で、今のスタイルになった?

西村 いや、違います。これはもう『(ホーホケキョ となりの)山田くん』のあとから、この描線で、スケッチ風の淡彩の画面でやりたいという意志が、高畑さんの中にありましたから。企画がどんなものになろうと、このスタイルで作ることは決まっていました。高畑さんって、いつも「表現と内容は必ず一致していなければならない。作り手はそれを考えるべきだ」と言ってますよね。だけど、今回の作品に関しては、この表現が先にあった。

── 現場では、高畑さんがどうしてこの画でやりたいかという話をされたりしていたんですか。

西村 ずっとおっしゃってましたね。「線の向こうにある本物を」と。人形アニメなんかは、実在するものを1コマずつ動かして撮っているじゃないですか。そうすれば当然「実在感」は得られますよね。本当に人形はそこに存在するんだから。フルCG立体アニメーションも、バーチャルに作られたものですけど、それを実在させるべく仮想空間に置き、影をつけたりして動かしているわけです。そうすると本当に実在しているかどうか、つまり、今見ているものそのものが本物らしいかどうかを観客は意識しちゃう。それがいいか悪いかは別にして、たとえピクサーのように様式化されていても、ある種の「リアルさ」を追求せざるを得ないのではないかと。

 高畑さんとしては、その逆に行けないかという考えがあったんでしょうね。本物を見ながら、それをスケッチに落とし込んでいく。そうやって、ある動きの一瞬一瞬を捉えたスケッチ的な絵を何枚も重ねていく様式。その線で描かれたそのものが本物だと主張するわけではなくて、そのスケッチ的な描線の向こうに、絵描きが捉えようとした本物を想起させるような画面は作れないだろうかと。

── 確か『おもひでぽろぽろ』の頃に、高畑さんが『じゃりン子チエ』を例にしておっしゃっていと思いますが、例えばあるしぐさをアニメーターが観察して、自分の中に一旦取り込んでから紙の上に出力することによって、いかにもそれらしくなるんだ、と。ロトスコープのように実写映像をそのままなぞるわけではなく、いちどアニメーターのフィルターを通して出力されたものが本物の表現になるんだ、といった話をされていました。そういうことでしょうか。

西村 多分、通じる話だと思います。高畑さんは、ご自身の作品を「クソリアル」と表現することがあるんです。リアルには「リアリズム」と「リアリティ」があるじゃないですか。高畑さんって、ある時期まではリアリズムを追求してきた方だと思うんですよね。『おもひでぽろぽろ』なんかも、いろいろ整理はされてますけど、やっぱりリアリズムで描かれている。でも、それから時を経て作られた『山田くん』は、リアリズムじゃないですよね。あれはリアリティだと思うんですよ。

── そうですね。

西村 高畑さんとも話したことですけど、日本語でリアリティと言うと、リアリズムとあまり意味が変わらないんじゃないかと。高畑さんが『山田くん』で求めたのは、やっぱり「実感のあるリアリティ」なんです。そのものは本物じゃないかもしれないけど、「あっ、感じが出てるね」「人間ってこうだよね」と思えるような、もっともらしさみたいな感じを描こうとしてますよね。今回の『かぐや』もそうだと思います。

── 分かります。

西村 高畑さんもそうだし、田辺(修)さんもそうですね。必ずしも写実的な動きや見た目ではないけど、「人間ってこうだよね」という感じを出そうとする。それを実現するためには、この描線がすごく適していたんですよ。ラフな描線なり、塗り残しなり、曖昧な部分があるからこそ感じが伝わるってことがあるじゃないですか。これを今の一般的なアニメーションの均質な線で描いていったら、その感じが消えていきますよね。

── そうでしょうね。

西村 そこを評価したのが、ジョン・ラセターですよね。彼がここに来たとき、試写室で『かぐや姫』の3分間の映像を観てもらったんです。本当に驚いてましたね。ラセターたちはフルCGアニメーションをやっていますけど、最初はデッサンから始めるじゃないですか。うまいアニメーターたちが描いた活き活きとした画が、フルCGになった途端、元々持っていたはずの生命感を失ってしまう。それはラセター自身が何度も経験していることだし、ディズニーのセルアニメーションにしても同じことだと言っていました。アニメーターがザザッと描いたラフな線が持つ生命力を、そのまま画面に出すことは本当に難しい。ラセターは「失われてしまった命のエネルギー」と言っていましたけど、アニメーションという言葉はそもそもラテン語のアニマからきていて、命を吹き込むという意味を持っていたはずなのに、それが失われることのほうが多かった。でも、この作品はもう一回その生命を取り戻す画期的なアニメーションだ、と言ってくれました。ラセターにはその意図が伝わったし、観てくれた方もそう思ってくれたんじゃないでしょうか。
───────────────────────────■引用終わり
 
  List
  この記事は 150719 への返信です。
  この記事に対するトラックバックURL  http://www.rui.jp/tb/tb.php/msg_289032
  ※トラックバックは承認制となっています。

[過去の記事へ]
[一覧へ戻る] [新しい記事へ]


◆実現論本文を公開しています。
 実現論 : 序  文
 第一部 : 前  史
 第二部 : 私権時代
 第三部 : 市場時代
 第四部 : 場の転換
 参考文献

 必読記事一覧
01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28
大転換期の予感と事実の追求
実現論の形成過程
自考のススメ1.未知なる世界への収束と自考(1)
自考のススメ1.未知なる世界への収束と自考(2)
自考のススメ1.未知なる世界への収束と自考(3)
自考のススメ1.未知なる世界への収束と自考(4)
自考のススメ2.現代の不整合な世界(問題事象)(1)
自考のススメ2.現代の不整合な世界(問題事象)(2)
自考のススメ2.現代の不整合な世界(問題事象)(3)
自考のススメ3.自考力の時代⇒「少年よ、大志を抱け」(1)
自考のススメ3.自考力の時代⇒「少年よ、大志を抱け」(2)
1.これから生き残る企業に求められる能力は?
2.私権圧力と過剰刺激が物欲を肥大させた
3.市場の縮小と根源回帰の大潮流
4.共認回帰による活力の再生→共認収束の大潮流
5.自我と遊びを終息させた’02年の収束不全
6.同類探索の引力が、期応収束を課題収束に上昇させた
7.情報中毒による追求力の異常な低下とその突破口
8.大衆支配のための観念と、観念支配による滅亡の危機
9.新理論が登場してこない理由1 近代観念は共認収束に蓋をする閉塞の元凶となった
10.新理論が登場してこない理由2 専門家は根本追求に向かえない
11.学校教育とマスコミによる徹底した観念支配と、その突破口(否定の論理から実現の論理への転換)
12.理論収束の実現基盤と突破口(必要なのは、実現構造を読み解く史的実現論)
近代思想が招いた市場社会の崩壊の危機
新理論を生み出すのは、専門家ではない普通の生産者
現実に社会を動かしてきた中核勢力
私権時代から共認時代への大転換
市民運動という騙し(社会運動が社会を変えられなかった理由)
民主主義という騙し:民主主義は自我の暴走装置である
統合階級の暴走で失われた40年
大衆に逆行して、偽ニッチの罠に嵌った試験エリートたち
新理論の構築をどう進めてゆくか

『るいネット』は、46年の実績を持つ起業家集団・類グループが管理・運営しています。るいネットワーク事務局(Tel:0120-408-333, E-mail:member@rui.ne.jp