生物学を切開する
28903 オスは悲しき弱体生物?E<悲しきY染色体U>
 
蘆原健吾 ( 30代前半 神戸 広報 ) 02/04/18 PM05 【印刷用へ
前の投稿は、つまりこういうことです。

Y染色体のDNAの9割以上はほとんど何の機能ももたず(プロモーターでもないし、転写され翻訳されタンパク質のアミノ酸配列を指定するでもない、という意味)、同じ配列の繰り返しと突然変異のジャンクDNAばかり。

「Y染色体は、機能的な遺伝子などをほとんど含まず、まるでガラクタ置き場のようなもの」このニュースが流れたときは、少なくとも人類の半数は肩身の狭い思いをしたことでしょう?(ひょっとすると、ヤッパリそうかと思ったかもしれませんが・・・。)

「常染色体」は2本で一組という話は前の投稿で出てきましたが、この相同染色体は形状も同じだし、対応する遺伝子座が存在するので、配偶子をつくる際ところどころで「組み換え」を起こし、さまざまなバリエーションの配偶子を生み出します。

リンク
(図解を参照下さい)

しかし、X染色体とY染色体だけは、形状が著しく異なるため、
リンク
組み換えをほとんど起こしません。

したがって、長い進化の中で突然変異などをためこんで、今のようなガラクタ置き場のようになってしまったのだと考えられています(女性の場合はXXで相同なので組み換えが起こります。そのため、X染色体はY染色体のようにみじめな状態になることはありませんでした)。

「じゃあ、男ってのはガラクタってことかい!」と嘆きたくなるところですが、実は、こんなY染色体も進化にとっては「金鉱」と言えなくもないのです。

機能を持っている遺伝子は、ちょっとでも変異を起こすと生命維持に影響があります。重要な酵素を指定するDNAに変異が在れば、そもそも生まれてこない、なんてことになります。しかし、もともとジャンクなDNAに変異が起こっても生命に影響はありません(いわゆる「中立説」ってやつです。少しは影響あるのかもしれないですが?)。

msg:28862で、遺伝子の重複が、いわば「あそび」の部分をつくるということを書きましたが、X染色体を保険にして生命を維持しつつ、Y染色体上では、様々な実験配列が生み出され、それがオスだけ(←重要!)に受け継がれていくわけです。だからXXのメスには「アブナイ実験」の影響はない。もう、見事という他ありませんね。

この実験配列のうち可能性のあるものが、あるきっかけで、例えばmsg:15748「トランスポゾン」のように、他の遺伝子座に影響を与えるとしたら…

つまり、Y染色体は、変異遺伝子のインキュベーター的役割を負っている可能性があるわけです。

「男らしさ」のありかY染色体は、「ガラクタ置き場」であり同時に「金鉱」である、とはおもしろいものです。そう言えば、冒険や実験や博打が好きなのは男に多いよな〜。

こうして見ていくと、Y染色体を搭載したオスというのは、いわば生きることそのものが命を賭けた「実験」なのかもしれませんね。オスとメスは、生きる原理そのものが、ほんとにまったく異なっているのだということをつくづく認識させられます。
 
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