生物学を切開する
28445 可能性の蓄積をめぐる問題点
 
吉国幹雄 ( 49 鹿児島 講師 ) 02/04/11 PM08 【印刷用へ
山本さん、今晩は。
熱ショックタンパク質については、狂牛病の原因追究の中で、この進化論・科学論カテでも登場した話題です。そちらも参照されたら面白いと思います。「分子シャペロン」(1488514886)。

カンブリア期における大爆発、「多様な生物の出現のなぞ」については、「外圧適応と多様化」(4022)や、村田さんのレス投稿の、「カンブリア大爆発と生物学的構造」進化(28162)が参考になると思います。私も 「生物の多様性」というところは、もう少しすっきりさせたいと思っています。が、その前に山本さんの「可能性の蓄積(分子シャペロン)28120」について少し問題点を整理させてください。

分子シャペロンは、タンパク質の移動と立体構造化を助ける「介添え役」として有名ですが、単にそのような補助的な働きだけではなく、生命体の維持システムとして、以下のようなことこそが本質だと思います。

>分子シャペロンとプロテアーゼはタンパク質の(立体構造の)修復と分解にそれぞれ関係していますが、「遺伝子修復系」と対応した「タンパク質修復系」と見てもよいでしょう。<(14886

また、「熱ショックタンパク質」とも言われているのは、高温になるとタンパク質が固まって基質が凝集する危険性が高くなりますので、それを修復するために活躍する(高温で多量に生産される)ので、高温になればなるほど活性度が上がると言ってもいいと思います。

分子シャペロンが変性し欠陥を持ったり、うまく作られないと、形質変異が増加するというのはそのとおりだと思います。(遺伝子修復系がうまく働かないと、遺伝子変異が増加するというのと同じです)。もっとも、変異を起したタンパク質の多くは、うまく「たたみこみ」ができなかったり、凝集したりして個体の多くは生存できなくなったでしょう。

ただし、劇的な環境の変化(他の生物種の出現も含みます)の中で、それでも淘汰を受けながら環境に適応的な機能を獲得したものが生み出される…。つまり新たなる適応機能を獲得して、新たなる集団(種)を生み出す可能性が開ける…。

さて問題は、この時に新しい種の誕生の可能性(の蓄積)とは、理論上は三つの過程が想定されます。(もしかすると実際は三つに分けられずに、渾然としたものかもしれませんが…)

【環境に対して、遺伝子、個体、種のどのレベル(階層)で可能性が蓄積されるのか?】

もし、分子シャペロンを指定する遺伝子に変異が起こるのであれば、遺伝子システムの変更による可能性の蓄積だろうし、分子シャペロンが環境によって変性を起しタンパク質の変異を起したことによるのなら、個体発生における形質変異が新種の可能性の発生源ということになります。そして、種のレベルであれば、(今西の言うように一気に変わるかどうかは微妙ですが)、集団全体(集団統合システム)の変化という所に焦点があるはずです。

山本さんの28120では以下のように述べられています。

「HSP-90は通常は負の選択や求心的選択により排除されるような特異な異常形態をある程度まで抑制する働きがあるのではないか、と結論付けていました。つまり、形質的な突然変異が求心的選択の許容範囲内で蓄積されていくのではないか」

一見、「中立説」のタンパク質系への応用みたいですが、つまり、生命体が維持される「許容範囲内」であれば、変異可能性が個体レベルの形質において蓄積されているということですね。そうすると、遺伝子システムや種(集団)に、どのようにその可能性が伝達され変化していくのか、が次に問題となるでしょうか…。

私は、集団というレベルの階層そのもの(それは性システムも含みますが)に可能性は蓄積されたのではないかと、現在は直感的には思っています。が、上記の問題は「進化論」の本質をつく問題ではないでしょうか。「多様性の獲得」の問題も射程に入れて、次回以降をもう少し詳細に検討してみたいと思います。

 
  List
  この記事は 28120 への返信です。
  この記事に対するトラックバックURL  http://www.rui.jp/tb/tb.php/msg_28445
  ※トラックバックは承認制となっています。

[過去の記事へ]
[一覧へ戻る] [新しい記事へ]


◆実現論本文を公開しています。
 実現論 : 序  文
 第一部 : 前  史
 第二部 : 私権時代
 第三部 : 市場時代
 第四部 : 場の転換
 参考文献

 必読記事一覧
01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28
大転換期の予感と事実の追求
実現論の形成過程
自考のススメ1.未知なる世界への収束と自考(1)
自考のススメ1.未知なる世界への収束と自考(2)
自考のススメ1.未知なる世界への収束と自考(3)
自考のススメ1.未知なる世界への収束と自考(4)
自考のススメ2.現代の不整合な世界(問題事象)(1)
自考のススメ2.現代の不整合な世界(問題事象)(2)
自考のススメ2.現代の不整合な世界(問題事象)(3)
自考のススメ3.自考力の時代⇒「少年よ、大志を抱け」(1)
自考のススメ3.自考力の時代⇒「少年よ、大志を抱け」(2)
1.これから生き残る企業に求められる能力は?
2.私権圧力と過剰刺激が物欲を肥大させた
3.市場の縮小と根源回帰の大潮流
4.共認回帰による活力の再生→共認収束の大潮流
5.自我と遊びを終息させた’02年の収束不全
6.同類探索の引力が、期応収束を課題収束に上昇させた
7.情報中毒による追求力の異常な低下とその突破口
8.大衆支配のための観念と、観念支配による滅亡の危機
9.新理論が登場してこない理由1 近代観念は共認収束に蓋をする閉塞の元凶となった
10.新理論が登場してこない理由2 専門家は根本追求に向かえない
11.学校教育とマスコミによる徹底した観念支配と、その突破口(否定の論理から実現の論理への転換)
12.理論収束の実現基盤と突破口(必要なのは、実現構造を読み解く史的実現論)
近代思想が招いた市場社会の崩壊の危機
新理論を生み出すのは、専門家ではない普通の生産者
現実に社会を動かしてきた中核勢力
私権時代から共認時代への大転換
市民運動という騙し(社会運動が社会を変えられなかった理由)
民主主義という騙し:民主主義は自我の暴走装置である
統合階級の暴走で失われた40年
大衆に逆行して、偽ニッチの罠に嵌った試験エリートたち
新理論の構築をどう進めてゆくか

『るいネット』は、47年の実績を持つ起業家集団・類グループが管理・運営しています。るいネットワーク事務局(Tel:0120-408-333, E-mail:member@rui.ne.jp