生物の起源と歴史
282332 鉱物の表面で生命は生まれた
 
北村浩司 ( 壮年 滋賀 広報 ) 13/10/16 AM10 【印刷用へ
同じく、物質・材料研究機構の中沢弘基氏の「生命の起源 地球が書いたシナリオ」を紹介したブログからの引用です。
筆者中沢氏は地球科学、物質科学の視点から、生命の起源に迫ろうとしている。

有機分子の反応が深海の鉱物の表面で起こったこと、とりわけ黄鉄鉱の表面でアミノ酸、核酸、脂質などの表面で起こったこと、複製機構や細胞膜に先立って、代謝機能である鉄−硫黄(Fe-S)ワールドが存在したこと
などを提起しており、大変興味深い。
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有機物が「生命体」に進化するためには、
  @複製機能をもつ(RNA, DNA)
  A代謝機能をもつ(酵素=タンパク質)
  B膜で包まれている(リン酸脂質+コレステロール)
この3つを獲得しなければなりません。

@ 鉱物の表面で有機分子の重合・高分子化が進んだ
有機分子の重合反応は、どこでどのように進んだのでしょうか?
おそらく、海底下に埋没した粘土層の粒子のすき間で起こったのでしょう。特に粘土鉱物(層状のケイ酸塩鉱物)の表面で起こりやすいと言われています。

粘土鉱物の表面(界面)でアミノ酸の重合反応が起きるという説が1959年に提唱されました。
なぜ鉱物の「表面」なのかというと、溶液中よりも表面の方が、分子が自由に動けない分、分子の結合反応が起きやすいからです。鉱物の表面が化学反応の触媒として機能するのです。

A 鉱物の表面で代謝が起こった!「Fe-Sワールド」
もっと具体的に鉱物の表面での有機物の進化を論じたのが1988年発表の『表面代謝説』です。黄鉄鉱(FeS2)表面にアミノ酸、核酸、脂質など吸着すると重合反応が起こるという説です。
  
なぜ黄鉄鉱上で有機物の合成反応が起きやすいのか?それは、この鉱物表面上で、エネルギーを生み出してCO2から有機物を固定すること、つまり代謝(最も原始的な)が可能だからです。「えっ?」っと思うかもしれません。

この反応は、FeS + H2S → FeS2 + H2 で表され、黄鉄鉱の周囲に鉄イオン、硫化水素があれば、自発的に水素イオンと電子を放出する最もシンプルなエネルギー代謝反応です。さらに、周囲にCO2が溶け込んでいれば、自発的にギ酸(HCOOH)を生成します。外部のCO2を有機固定するシンプルな物質代謝反応です。

つまりこれは、黄鉄鉱の周囲に「化学的な不安定さ」が用意されていれば、
そこから電子を取り出して栄養源とする代謝系(独立栄養代謝系)で、
細胞膜に包まれていなくても黄鉄鉱の表面で代謝が可能ということを意味しています。

代謝とは外から取り入れた物質から他の物質を合成してエネルギーを得るという生体化学反応で、酵素(タンパク質)が触媒として多段階の反応を担っています。タンパク質が存在しない初期地球では、黄鉄鉱が酵素の代役をしていたというわけです。この原始代謝系を「Fe-Sワールド」といいます。DNAの前には、RNAが遺伝情報と酵素活性の両方を持っていたという「RNAワールド」に対して、複製機能や細胞膜よりもFe-Sによる代謝系が先行したというのが「Fe-Sワールド」

B原始代謝はどこで始まった? 鉄と硫黄が豊富な深海の温泉
さて、原始代謝の舞台となった場所はいったいどこにあるのでしょうか?
条件は、金属イオンや硫化水素が豊富で、黄鉄鉱が生成されている化学的に不安定な場所。それは深海の温泉です。熱水噴出孔とも言います。
現在の熱水噴出孔では、硫化物から有機物を合成するバクテリアが生息しています。

深海の水温は2℃くらいですが、噴出する熱水の温度は400℃に達します。
深海は高圧なので水は沸騰せず超臨界状態、極めて反応性の高い状態です。

C 細胞膜はどうやって出来た?
次に生命体に必要なのは膜です。
そもそも膜とはいったい何からできているのでしょう?細胞膜はリン酸脂質とコレステロールの二分子膜構造です。でも、そのような膜を簡単な有機分子から組み立てることは難しいでしょう。

実は、深海の温泉で無機的に膜をつくことができるのです。原始の海は高温・酸性でFe2+に富みます。一方、熱水は高温・アルカリ性で硫化水素に富むと言われています。
これらを高温で混合すると、硫化水素とFe2+イオンが急速に反応して硫化鉄が析出し、硫化鉄の膜で覆われた微小な泡(小胞)がたくさんできることが実験室で再現されています。

この泡は「酸性の海洋」と「熱水起源のアルカリ性内容物」を仕切り、
膜の内と外のpH勾配ができることで、化学反応の小部屋になった可能性もあるでしょう。この硫化鉄の膜が原始代謝系を包み込むことができたかも知れません。

有機物の膜が無い時代は、このように無機鉱物の自己組織化でできた膜が
細胞膜の代用品(前駆体)になったのかも知れません。
この膜は、脂質を吸着できますから、それがのちに、無機・有機複合体の膜、そして有機物の膜にとってかわり、細胞膜に発達した可能性があります。

また、黄鉄鉱界面上でイソプレノイドアルコールが合成可能です。イソプレノイドアルコールは古細菌の膜をつくる物質です。イソプレノイドアルコールからなる膜脂質が表面代謝系ごと遊離すれば、細胞を有する生命の誕生へつながったかもしれません。

生命の素、リンも豊富な深海の温泉。細胞膜はリン酸脂質からできています。DNAの核酸塩基は糖とリン酸のエステル結合ですし、エネルギー代謝はATPのリン酸の授受で行われています。つまり、リンは生命の誕生に欠かせない元素です。

リン酸は海水中にはほとんどありませんが、地下の熱水脈中には豊富に存在しますから、海底の温泉(熱水噴出口)は生命の誕生にとても有利な場所と言えるでしょう。
 
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