西洋医療と東洋医療
281527 臓器提供カードへの署名の際に
 
THINKER・鶴田 HP ( 40代 名古屋 自営業 ) 13/09/24 PM07 【印刷用へ
 東日本大震災後もまもない2011年5月、事故で命を落とした未成年者から初の臓器提供がなされた。このニュースは、遺族の献身的な思いとともにマスコミで大々的に取り上げられた。臓器移植には、このように一人の命が複数の命を救う美談となるケースがある一方で、世界では貧者と冨者との間での臓器売買という側面がある。そこで利益を最も得るのは医療業界と仲介業者である。

 『再開された臓器売買をめぐる論争』黒瀬勉(近畿大学非常勤講師、哲学・倫理学)には、その実態が細かく記されている。
 (以下は、その一部分の要約)
 70年、80年代には臓器売買の是非を問う議論がなされ、各国で臓器売買を禁止する法律が作られた。それが90年代後半以降は、医学界で臓器売買に賛成する論文が多数発表され、臓器売買を社会的に合法化する主張がなされた。
 西ヨーロッパなど裕福な国では数万人の透析患者が腎臓移植を待ち、待機期間も数年。多くの患者は提供前に亡くなるといった臓器不足事情がある一方、ヨーロッパ最貧国のモルドバは「臓器提供のメッカ」となっている。腎臓を買う患者はイスラエルからツアーでやってきて、手術はトルコで行われる。イスラエルの社会保険制度は、外国での移植手術にも保険が適用され、しかも、臓器売買であっても不問である。腎臓は 2500ドルから3500ドルで買い取られるが、被移植者は10万ドルから20万ドルを支払う。仲介業者が最も大きな利益を得る。その他の国でも貧者が仲介業者を通じて冨者に臓器を売ることがあたりまえになっている。 (以上、要約終り)

 医学界で臓器売買を推進する主張がされた結果、日本でも97年に臓器移植法が成立している。しかし、この法律は諸条件が厳しく、臓器移植が進まなかったため、2010年に規制をゆるくした改正臓器移植法が施行された。その結果、それまで禁止されていた15歳未満からの臓器提供と本人による意思が不明な場合でも家族の承諾があれば、臓器提供が可能となった。
「日本は欧米に比べて臓器移植が遅れている」という議論があるが、それは日本を「ワクチン後進国」と揶揄し、国際的観点から批判することでワクチンビジネスが推進されるのと同様に、臓器ビジネスの推進を狙った意図的な批判と思える。
このような背景が視聴者に知らされずに、臓器移植にまつわる美談だけがマスコミで取り沙汰にされ、「臓器移植を許容すべき」、さらには「道徳的に良いもの」とする世論が作り上げられている。

 90年代から世界的に始まったあらゆる分野における自由化、民営化、規制緩和といったグローバリズムの進行は、弱肉強食的な自由競争を加速させ、あからさまな勝ち組と負け組を生み出してきた。格差社会である。極端な格差社会においては、臓器も商品として取引される。贅沢や不摂生な食生活、もしくは競争社会のストレスで健康を崩した冨者が、貧者の臓器を金で買うという構図だ。医療の進歩と格差社会のいびつなコラボレーションが、臓器ビジネスと言える。
 
 今後、日本でも社会格差の広がりが進んだり、大災害で一時的に社会が無秩序化した際には、より頻繁な臓器取引が行われるようになるだろう。
現在、政府が進めているのは、そのときのための法整備とみることができる。そして、現行の保険証に臓器移植意志表示カードが一体化され、そこには、三つの選択肢が書かれてある。

@ 私は、脳死後及び心臓が停止した死後のいずれでも、移植の為に臓器を提供します。
A 私は、心臓が停止した死後に限り、移植の為に臓器を提供します。
B 私は、臓器を提供しません。

改正臓器移植法によれば、積極的に意思表示、つまり、Bに丸をつけなければ、家族が反対しない限り、臓器が取られることになるだろう。また、身内のない者は自動的に臓器提供者となる。
保険証が小型化し、中には免許証と一体化しているものもある。保健証の更新は頻繁になり、その度に丸をつけなおして署名しなければならなくなった。
臓器移植意志表示カードを国民に常に携帯させることで、万一の事故などで死亡した際に意思確認して、すぐに臓器を取り出すことができるからだ。

 イランのように国家が腎臓を買い上げ、分配するシステムもある。日本でも健全な臓器取引により、救われる命も多いことだろう。それに異論はない。私自身、(どのようにでも利用され得る)臓器提供の意思表示はしていないが、死後の医学用献体には登録をしている。
しかし、臓器移植はドナーや売る側だけでなく、提供される側にも健康上の問題が残るケースも多い。臓器のやりとりは、人命救助のための例外的な最終手段である。医療業界や政治、マスコミが総動員され、全国民を巻き込むほどの大々的な動きの背景は、人命救助よりもビジネスの側面が強いだろう。
臓器移植提供カードへの署名の際には、このことを踏まえ、よく家族と相談したうえで署名されることをお勧めする。
 
  List
  この記事は 281417 への返信です。
  この記事に対するトラックバックURL  http://www.rui.jp/tb/tb.php/msg_281527
  ※トラックバックは承認制となっています。

[過去の記事へ]
[一覧へ戻る] [新しい記事へ]


◆実現論本文を公開しています。
 実現論 : 序  文
 第一部 : 前  史
 第二部 : 私権時代
 第三部 : 市場時代
 第四部 : 場の転換
 参考文献

 必読記事一覧
01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28
大転換期の予感と事実の追求
実現論の形成過程
自考のススメ1.未知なる世界への収束と自考(1)
自考のススメ1.未知なる世界への収束と自考(2)
自考のススメ1.未知なる世界への収束と自考(3)
自考のススメ1.未知なる世界への収束と自考(4)
自考のススメ2.現代の不整合な世界(問題事象)(1)
自考のススメ2.現代の不整合な世界(問題事象)(2)
自考のススメ2.現代の不整合な世界(問題事象)(3)
自考のススメ3.自考力の時代⇒「少年よ、大志を抱け」(1)
自考のススメ3.自考力の時代⇒「少年よ、大志を抱け」(2)
1.これから生き残る企業に求められる能力は?
2.私権圧力と過剰刺激が物欲を肥大させた
3.市場の縮小と根源回帰の大潮流
4.共認回帰による活力の再生→共認収束の大潮流
5.自我と遊びを終息させた’02年の収束不全
6.同類探索の引力が、期応収束を課題収束に上昇させた
7.情報中毒による追求力の異常な低下とその突破口
8.大衆支配のための観念と、観念支配による滅亡の危機
9.新理論が登場してこない理由1 近代観念は共認収束に蓋をする閉塞の元凶となった
10.新理論が登場してこない理由2 専門家は根本追求に向かえない
11.学校教育とマスコミによる徹底した観念支配と、その突破口(否定の論理から実現の論理への転換)
12.理論収束の実現基盤と突破口(必要なのは、実現構造を読み解く史的実現論)
近代思想が招いた市場社会の崩壊の危機
新理論を生み出すのは、専門家ではない普通の生産者
現実に社会を動かしてきた中核勢力
私権時代から共認時代への大転換
市民運動という騙し(社会運動が社会を変えられなかった理由)
民主主義という騙し:民主主義は自我の暴走装置である
統合階級の暴走で失われた40年
大衆に逆行して、偽ニッチの罠に嵌った試験エリートたち
新理論の構築をどう進めてゆくか

『るいネット』は、43年の実績を持つ起業家集団・類グループが管理・運営しています。るいネットワーク事務局(Tel:0120-408-333, E-mail:member@rui.ne.jp