震災後、多くの家庭で備蓄が行われている。
近年の異常気象を初め、未だに放射性物質は放出し続けていることからも、万一に備えるのは当然のことだろう。
特に水に関しては賞味期限が短いことから、短期で入れ替えを強いられるが、過剰な健康・安全ブームにより賞味期限が絶対化しているように感じる。
ということで、実際は賞味期限が切れていても問題なく飲めるのではないかとの疑問から色々調べてみた。
■賞味期限・消費期限
【消費期限】
適用:品質が急速(概ね5日以内)に劣化しやすい食品。
定義:定められた方法により保存した場合において、十分なその他の品質の劣化に伴い安全性を欠くこととなるおそれがないと認められる期限を示す年月日をいう。
【賞味期限】
適用:それ以外の食品。
定義:定められた方法により保存した場合において、期待されるすべての品質の保持が十分に可能であると認められる期限を示す年月日をいう。ただし、当該期限を超えた場合であつても、これらの品質が保持されていることがあるものとする。
ちなみに、食品衛生法で定めていた「品質保持期限」の用語と定義は、JAS法と同じ「賞味期限」に統一されました。
■ペットボトル飲料水の種類
ペットボトル入りミネラルウォーターの「賞味期限」は2年が多いようです。一般的に賞味期限は何割か短かめに設定されていますので、実際はもっと長いと考えられます。
ちなみに、日本のナチュラルミネラルウォーターの多くは「85度で30分以上加熱するか、それと同等の熱量を加えて殺菌処理」をしています。たんなる水には最近やカビの繁殖に必要な栄養分がありませんから、僅かに雑菌が残っていても繁殖する心配はないでしょう。
缶入りの非常災害用飲料水は「常温で5年」が多いようです。十分に殺菌した水なら10年でも20年でも問題ないと思います。ただし水としての味は別です。煮沸した水は最初から味わいも何もありません。
農水省の「ミネラルウォーターの品質表示ガイドライン」は以下のようになっています。
【ナチュラルウォーター】
原水:特定水源より採水された地下水。
処理:濾過、沈殿及び加熱殺菌に限る。
【ナチュラルミネラルウォーター】
原水:特定水源より採水された地下水のうち、地下で滞留中又は移動中に無機塩類が溶解したもの。(鉱水、鉱泉水など)
処理:濾過、沈殿及び加熱殺菌に限る。
【ミネラルウォーター】
原水:ナチュラルミネラルウォーターの原水と同じ。
処理:濾過、沈殿及び加熱殺菌以外に次に掲げる処理を行ったもの。
【ボトルドウォーターまたは飲料水】
原水:飲用適の水。(純水、蒸留水、河川の表流水、水道水等)
処理:処理方法の限定はなし。
■賞味期限とは
水に賞味期限とはいったいどういうことなのか。
ナチュラルミネラルウォーターは、地下から汲み上げた後、大きな不純物を沈殿させ、さらに細かな不純物をろ過、最後に高温で加熱殺菌するのが一般的な作り方である。これが密閉されているボトルの中に入っていれば腐ることはないだろうし、ジュースのようなものならいざ知らず、水とミネラルだけなのに時間が経つと品質が変わると思えない。
なのに、どうして賞味期限があるのか?
そこで、サントリーお客様相談センターに直接聞いてみた。
『ミネラルウォーターに賞味期限ってどうしてあるんですか?』
担当者 ちなみにお客様は2リットルのサイズをお召し上がりいただいておるのでしょうか?
--小さいやつですね。
担当者 550ミリリットルですね。それですと、ボトリングしてから1年という期間を設けております。それに従い中身が美味しくいただける期間として設けたものが、賞味期限となっております。
--2リットルだと違う?
担当者 2リットルだと少し伸びまして、ボトリングしてから2年でございます。
サイズによって賞味期限が違うとは知らなかった。どうしてそんな違いが出るのだろうか。
担当者 同じ中身であってもやはり容器の種類や大きさによって外部から受ける影響に差が出てしまうようなんですね。それでやはり550ミリリットルと2リットルで賞味期限が異なるんですね。550ミリリットルだと表面積が大きいため、外部から受ける影響が多くなるということですね。大きい容器ですと分散されるということでもあるようですね。
さて、ここからが本題。どうしてミネラルウォーターにも賞味期限があるのか?
担当者 容器に傷などがなくて外気などに触れていない状態であれば、基本的に衛生面は保たれた状態にはあります。ただ、保存料ですとかそういったものを一切加えておりませんので、そういうお水ですから、ボトリングしてから美味しく飲んでいただける期間がどうしてもございまして。それを過ぎますと衛生的には問題ないけれども、臭いが強いものが周りにあると、ペットボトルの容器を通しまして移り香をしてしまったりするので、風味の部分で美味しく召し上がっていただけない可能性があるようでございます。
--味が変わってしまう可能性があるということですね。
担当者 ないこともあるんですが、保管の状況それぞれお客様ごとに異なりますので、保管状況が問題なければ味も変わらず、そのままお召し上がりいただけると思います。
ちょっと説明がわかりにくいので、別ルートで得た情報で補足説明すると、ペットボトルにはわずかな気体透過性があるそうだ。そのため、強い臭気がまわりにあると、中身に臭いが移ることがあるという。
■結論
賞味期限は味の保障だけではなく、安全性や味・風味等の全ての品質が維持される期限ということがわかった。
保存状態に関らず、保障されている期限なので不利側設定されたものである。よって、基本的にはそれを過ぎたから直ぐに飲めなくなるわけではない。
ペットボトル飲料水に当てはめていえば、ペットボトルには透過性がある為、味・風味については、少しづつ劣化していく。
つまりペットボトル飲料水に設定された賞味期限は、味と風味によって規定されたものといえる。
味・風味を問題視しなければ、理論上はいつまででも飲料可能といえる。
そうは言っても、匂いの染み込んだ飲料水で炊いた白米は、非常時でもなるべく避けたい。
そういった意味で、保存環境による劣化度合いがわからない以上、ある程度賞味期限を目安にした方がよいだろう。 |
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