生命原理・自然の摂理
279638 微生物・細菌による環境浄化作用A
 
西谷文宏 ( 36 和歌山 建築設計 ) 13/07/28 PM09 【印刷用へ
■汚染物質分解菌
放射性物質以外にも、人類が自然界にばら撒いた環境汚染物質は膨大な種・膨大な量に上る(しかもそれが人類を苦しめている)が、様々な汚染物質を分解する細菌等も続々と発見されている。

○TCE分解菌 メタン資化性菌M株
※TCEとは半導体の洗浄液等に利用されてきた有機塩素化合物(トリクロロエチレン)で発がん性物質(グループ2A恐らく発ガン性を持つ)。現在は土壌汚染・水質汚染物質として環境規制対象物質となっている。

 メタンを基質として生育する微生物で、茨城県の畑土壌から分離しました。環境基準(0.03ppm)の100倍以上の高濃度のTCE(35ppm)を分解できます。TCE分解酵素及び分解遺伝子を単離し、分解機構の解明を行っています。また、環境中からのTCE分解遺伝子の検出法の開発も行っています。
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○TCA分解菌 ミコバクテリウム属細菌TA27株
※TCAとは除草剤等に利用される有機塩素化合物(トリクロロ酢酸)で毒物・劇物指定物質。

 エタン、プロパンを基質として生育する微生物で、茨城県のクリーニング工場内土壌から分離しました。各種の有機塩素化合物を分解することが可能で、100ppmのTCE及びTCA(TCAの環境基準:1ppm)を分解できます。TCA分解酵素及び分解遺伝子の単離、バイアルビンでの汚染物質分解特性を検討しています。
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○水銀除去菌 組換えシュードモナス
 大腸菌の水銀還元酵素遺伝子群(merオペロン)を広く土壌に生息するシュードモナス属細菌に導入し水銀浄化能を強化した組換え細菌を作成しました。merオペロンにより水銀イオンが金属水銀に還元されます。100ppmの塩化第二水銀を含む培地中でも生育可能です。バイオリアクターを用いて環境中からの水銀除去に関する検討を行っています。
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○DDT分解菌
 地球上で最初に自然界に大量にまき散らされた人工合成有機物はDDTで、1939年のことでした。DDTが害虫駆除や公衆衛生に非常に有効であることがわかると、それをきっかけに次々と新しい合成農薬が開発され、大量に散布されました。これらは、感染症撲滅や穀物収穫量増大などに大きく寄与したのですが、その後、自然界に蓄積されることによる生物への悪影響が、世界各地で報告されるようになります。
 ところが不思議なことに、環境中に人工合成有機物が撒き散らされるとそれを分解する細菌が誕生することがわかりました。その一つが、1950年ごろに発見されたDDT分解菌です。DDTが商品化されてわずか十数年後には、それを分解する能力を持つ細菌が現れたのです。DDTは、細菌にとって初めて見るものであるはずなのに・・・
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○六価クロム分解菌
 クロムには金属クロム、三価クロム、六価クロムという3種類の形があります。このうち六価クロムは強い酸化力があり、人や動物に対して毒性を持っています。排水に含まれる六価クロムも、処理して無毒化する必要があります。六価クロムの無毒化は、薬品によって還元して三価クロムにし、最終的に水酸化クロムに変換することによって行われます。しかし、この方法は、大量の薬品とエネルギーを必要とし、しかも、低濃度の六価クロムを完全に変換するのは難しいという問題があります。
 この六価クロムを還元して三価クロムに変換する細菌が発見されています。すごいですね。毒性の強い六価クロムを還元する力があるのです。三価クロムは比較的簡単に水酸化クロムに変換できます。この細菌を使って、六価クロムの処理法の検討が行われています。
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○石油分解菌
 石油汚染された海岸をバイオレメディエーション(微生物を利用した環境汚染浄化)でクリーンアップする場合、前提となるのは石油分解菌の存在です。
 石油分解菌は、海洋、陸水、土壌と自然界に広く分布しています。これまでに多くの石油分解菌が環境中から単離されてきましたが、由来は海洋、土壌、陸水、地下水と様々です。石油は、自然に産出する資源であり、大昔から海や地表にも滲出していました。そのため、微生物の中には、石油を利用できるように進化してきたものもいたのでしょう。
 石油を分解する微生物は、菌類でも細菌類でも見出されています。細菌ではPsuedomonas属、Acinetobacter属、Rhodococcus属、菌類ではCandida属、Rhodotorula属などが海洋からの石油分解菌として単離されることが多いです。
 石油分解菌は、上に挙げたものの他にも菌類・細菌類の幅広い分類群で見出されており、未だ単離されていない菌も多数いると思われます。むしろ、これまでに見つかった菌は自然界に生息する石油分解菌のほんの一部である可能性が高いです。石油分解菌の探索は、現在も多くの研究機関で行われており、今後新たに石油分解に関わる重要な菌が見つかってくるかもしれません。
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※このように石油を分解する菌の正反対のものとして石油合成菌も見つかっている。

 ユニークな生物資源は日本国内でも見つかっている。数少ない国内油田として知られる静岡県の相良油田。なぜここに油田ができたのか。専門家の間で論議を呼んでいたが、ある新種の微生物が石油をつくっていることがわかった。
 石油は何億年も前に地下に閉じこめられた動物や植物の死がいが高温、高圧下で熟成されてできたもので、人工合成は極めて難しいとみられていた。
 ところが発見した微生物はごみなどの有機物をえさに石油を合成していた。「この微生物の酵素を利用すれば農・産業廃棄物から石油ができるかもしれない。早ければ20年後には工業化のメドが立つ」と、微生物を発見した京都大学の今中忠行教授は予測する。
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以上紹介した微生物・細菌のほかにも環境浄化作用を持つものは多種多様に存在しています。
これらの一部にはバイオ化学による遺伝子改良を行ったものも存在しますが、環境浄化作用を持つ微生物・細菌の多くは自然界の中から発見・同定されたものです。
DDT分解菌の紹介の中にも書かれていますが、人類が生み出した環境汚染物質に「適応」し、「分解」する微生物・細菌類の働きは、まさに「自然の浄化作用」そのものであり、これらの働きを知る中で改めて自然の力の偉大さ、自然の摂理の重要性を感じています。
 
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