否定脳(旧観念)からの脱却
27731 近代、科学と哲学の原点、デカルトに思う
 
土井誠也 ( 40 島根 技術者 ) 02/03/29 PM10 【印刷用へ
デカルトの主張した心身二元論とは、絶対確実な真理を発見するために、すべてを疑い、そして疑っている「自分の精神」の存在こそが絶対確実なものであることの発見に始まり、「われ思う、ゆえにわれあり」──つまり近代的自我の発見、この「精神」とともに、「物体」をもう一つの実体(それが存在するために他の何ものも必要としないもの)と考えたということだと思います。精神の本質は「思い考えること」、物体の本質は「空間的広がり」。世界は、この全く性質を異にする「精神」と「物体」の二つによって成立しているという考えです。

それまで地上とは別世界と考えられていた月上(宇宙空間)の世界も、地上と同じように、空間的広がりを本質とする世界であるということになったのです。これにより、科学技術は大きな躍進を遂げたのもまた事実です。

デカルトは徹底した物心二元論を主張したのですが、それはあくまでも表層の学問上の話です。日常生活においてはいわば「われ思う、そのまえにわれあり」だったと見るのが正しいと思います。つまり、考え抜いた末に導き出された答えは、日常生活を超越した世界についての理論であり、したがって、それは日常生活という性という下部構造を営む生身の人間や人間の意識で形成される社会の全てを構造化する理論では無かった。そのことは、デカルト自身が最もよく知っていたのかもしれません。この事実を文通相手のエリザベート王女との手紙のやり取りが明らかにしますが、王女の健康相談への回答は「心身合一」のスタンスで終始述べられています。

心身二元論の倒錯性はこれで十分とはいえませんが、デカルト自身の言葉を借りれば、1日のうちのほんのわずかな学問に没頭するときにこそ有効な理論であり、日常生活の大半はこれによって立つことはなかった・・・「想像力を占める思考については一日のうちごくわずかの時間しか用いず、知性のみを占める思考については一年のうちごくわずかの時間しか用いなかったこと、他の残りの時間をすべて、感覚の弛緩と精神の休息に当てた」・・・・デカルトもまた、実は人生のほとんどの時間は「心身が合一している日常生活の営み」だったということです。

今や、その大半である日常にこそ答が必要なのに・・・・。近代科学や近代哲学の原点をなすデカルトという人の一面を垣間見、そう思います。


リンク
「水田のホームページ」 
同人社さまのHPにて
水田の「世界史への招待」【第W回】
「デカルト様、どうかお教え下さい」より引用
 
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