日本人と縄文体質
275185 千年にわたって、気遣いや勤勉を尊ぶ日本人の国民性をつくってきた教科書『実語教』-2
 
斎藤幸雄 HP ( 49 愛知 建築設計 ) 13/04/16 PM03 【印刷用へ
続けて、国際派日本人養成講座『No.794 実語教 〜 日本人千年の教科書』リンクより転載します。
 ==========================================================
■4.社会とは"流れるプール"

 この違いはどこから来るのか。齋藤氏が「おわりに」に書いている内容が参考になる。齋藤氏が小学校5年の頃、学校のプールに1学年6クラスの生徒全員が入って、同じ方向にグルグル円を描くようにして歩いたことがあるという。

__________
 しばらく歩いていると水流が起こり、すごいスピードの"流れるプール"ができあがりました。歩き続けているうちに水に勢いが出て、その勢いがどんどん強くなっていくのです。

 そのうち水に背中を押されるようになり、歩くのが楽になります。中には水流に体を預けてプカプカ浮いて、はしゃいでいる子もいましたが、真面目な子はずっと歩き続けていました。

 私は最近、社会というのは、この"流れるプール"みたいなものなのではないかと考えるようになりました。[1,p165]
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 社会の道徳力とは、この水流のようなものだと思えば、理解しやすい。日本や欧米では、「子どもやお年寄りを助けるのが良い社会」という方向に水が流れているので、普通の人でも、その方向に背中を押されて、実践しやすくなる。

 中国では、過去数千年の戦争、飢饉、疫病、歴代王朝・政府の搾取のために、逆方向の水流が起きており、普通の人でも他人を助けるのに、相当な抵抗がある社会になってしまっている。

 見物人が、倒れている老人を助けようとしない理由の一つに、うかつに助けると、逆に加害者だと訴えられて、慰謝料をゆすりとられる事件が多発しているから、というのも、その一例だ。

 筆者には中国人の友人知人も多く、個人的な道徳では立派な人も少なくない事を知っている。それでも社会となると、これだけの違いが出てしまうのは、社会の道徳力という水流の方向が違うからだ、と考えると納得できる。

 そして「子どもやお年寄りを助けるのが良い社会」という方向に、千年間も日本人の背中を押してきたのが実語教である。

■5.「孝」が"流れるプール"の原動力

「老いたるを敬うは父母の如し」という言葉は、その水流の原動力が、父母への「孝」であることを示している。「人として孝なきものは、畜生に異ならず」という一節を、齋藤氏はこう解説する。

__________
「孝」という字は前にも説明しました。これは「恩」という気持ち、感謝の気持ちといってもいいでしょう。親に感謝して恩返しをしようとする気持ちです。

 恩を感じて生きるという姿勢を持つと、それは自分自身の心の柱にもなります。「ここまで育ててくれて、ありがとう」という気持ちを持っている人は、自分も強くなれます。そう考えると、恩の気持ちは単に人に感謝するだけのものではなくて、自分自身が豊かになっていくためにも大事なものなのです。[1,p92]
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 これは「孝」がなぜ昔から、道徳の最初の項目として説かれているか、という事に関する見事な説明である。親の子どもに対する愛は無償の愛である。それに気がついて、親の思いを推し量ることができるようになると、周囲の他人にも気遣いができるようになる。

 したがって親の自分への無償の愛に気がつくことが、他人の心への思いやりを抱く出発点になる。「孝」こそが、"流れるプール"の水流を起こす最初の原動力なのである。


■6.「山高きが故に貴(たっと)からず」

 親の期待に応えて、立派な大人になるには、どうしたら良いのか。実語教はその冒頭でこう説く。

__________
山高きが故に貴(たっと)からず
樹有るを以て貴しとす。

 山は高いからと言って価値があるわけではありません。
 そこに樹があるからこそ価値が出てくるのです。[1,p18]
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 この一節を齋藤氏はこう解説する。

__________
 なぜ樹があると貴いのでしょう?

 樹を斬って材木にして、家を建てたり、箸(はし)を作ったり、社会のために役立てることができるからです。「何かの役に立つ」ということがとても重要です。そのときに初めて価値が生まれるのです。[1,p19]
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 人も同じで、社会的地位の高い人が偉いのではなく、世のため人のために役立つ人が偉いのである。

 ==========================================================つづく
 
  List
  この記事は 275184 への返信です。
  この記事に対するトラックバックURL  http://www.rui.jp/tb/tb.php/msg_275185
  ※トラックバックは承認制となっています。

 この記事に対する返信とトラックバック
275186 千年にわたって、気遣いや勤勉を尊ぶ日本人の国民性をつくってきた教科書『実語教』-3 斎藤幸雄 13/04/16 PM05

[過去の記事へ]
[一覧へ戻る] [新しい記事へ]


◆実現論本文を公開しています。
 実現論 : 序  文
 第一部 : 前  史
 第二部 : 私権時代
 第三部 : 市場時代
 第四部 : 場の転換
 参考文献

 必読記事一覧
01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28
新しい潮流1 社会捨象→不全捨象の充足基調(’70・’80年代)
新しい潮流2 私権統合の崩壊と社会収束の潮流(’90・’00年代)
新しい潮流3 社会不全⇒認識欠乏の蓄積
新しい潮流4 言葉それ自体が引力を持ち得ない時代
新しい潮流5 実現派は仲間収束から社会収束へ
新しい潮流6 解脱仲間から認識仲間への逆転
仲間圧力と認識仲間
新しい潮流は、新しい人間関係を必要としている
市場社会の、カタワの「集団」
本当は、「集団」に入ったのではなく、社会に出たのだ
古い人間関係は、影が薄くなるばかり
関係パラダイムの逆転1
関係パラダイムの逆転2
活力源は、脱集団の『みんな期待』に応えること
収束不全発の適応可能性の探索、その深くて強い引力
充足基調から探索基調への転換
'90年代の危機感と変革期待の行方
秩序収束と答え探索の綱引き
潮流2:戦後日本の意識潮流
潮流3:’70年、豊かさの実現と充足志向
潮流6:’95年、私権原理の崩壊と目先の秩序収束
潮流9:経済破局を突き抜けてゆく充足・安定・保守の潮流
今後10年間は充足⇒活力を上げれば勝てる 
「日本人はいつ物を考え出すのか?」(1) 共認充足が最大の活力源。'10年代はそれだけで勝てる
市場時代の共認非充足の代償充足⇒解脱(芸能)埋没
'70年〜現代 収束不全⇒本能的な秩序収束⇒課題収束⇒認識収束
現代〜近未来 対象への同化こそが新しい認識を生み出す
大学生が授業に出るのはなんで?
「やりがい」に潜む社会的欠乏
カリスマ 〜自分たちが共認できる価値観への評価収束〜 
仲間収束 2:一人でできない子
「働きたいから働こう」という意識
快美欠乏に替わって、認識の統合が最高価値になった。
判断の土俵とは、人々の潜在思念が作り出した共認圧力の場
『必要か否か』が環境問題に対する基底的な答えになる
芸能か、認識形成か

『るいネット』は、47年の実績を持つ起業家集団・類グループが管理・運営しています。るいネットワーク事務局(Tel:0120-408-333, E-mail:member@rui.ne.jp