日本人と縄文体質
275184 千年にわたって、気遣いや勤勉を尊ぶ日本人の国民性をつくってきた教科書『実語教』-1
 
斎藤幸雄 HP ( 49 愛知 建築設計 ) 13/04/16 PM03 【印刷用へ
『実語教』とは、平安時代から明治初期まで、1,000年近くにわたって使用されてきた道徳教科書。江戸時代の寺子屋教育のベースとして広く普及し、日本人の心を育む原点となった。

この『実語教』が明治大学教授・齋藤孝氏の丁寧な解説を交えて新たに一冊の本として蘇ったそうです。(齋藤孝『子どもと声に出して読みたい「実語教」』致知出版社)

1,000年ものあいだ読み継がれてきた「学び」とは何か?

国際派日本人養成講座『No.794 実語教 〜 日本人千年の教科書』リンクより転載します。
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■1.規則正しく譲り合って滑っていくたくさんの雨傘

 雨の降る渋谷ハチ公前の大きなスクランブル交差点では、色とりどりの雨傘がひしめいている。それを見下ろす高層ビルのレストランで、そのアメリカ人老夫婦はこんなふうに語った。

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 私たち、こうするのが大好きなの。日本のことが一番よくわかるから。雨の日、そしてことに渋谷のような大きな交差点。ほら、あちこちの方向へ動く傘をよく見てごらんなさい。ぶつかったり、押し合ったりしないでしょ?

 バレエの舞台の群舞みたいに、規則正しくゆずり合って滑って行く。演出家がいるかのように。これだけの数の傘が集まれば、こんな光景はよそでは決して見られない。[a]リンク
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 外国人が日本に来て、驚くことの一つが、日本人一人ひとりが持つ他者への気遣いである。他者への気遣いは日本人の国民性であるが、その国民性を作ってきた本がある。『実語教』という。

 と言っても、知らない人がほとんどだろう。平安時代の終わりに書かれたと言われ、鎌倉時代に世の中に広まって、江戸時代には寺子屋の教科書とされた。明治の大ベストセラー、福沢諭吉の『学問のすゝめ』は、この『実語教』を下敷きとしており、教育勅語でも同様の内容が説かれている。

 千年にもわたって、日本人の精神を作ってきた本が、ほとんど忘れ去られている、という点に、戦後思潮の異常さがあるのだが、その内容を実に分かりやすく解説した本が出版された。齋藤孝氏の『子どもと声に出して読みたい「実語教」』[1]である。


■2.「お年寄りや幼い子どもを助ける」

 寺子屋などで使われていただけあって、実語教の内容は簡潔である。同書の末尾に素読用に大きな文字で原文が書かれているが、わずか60余行、全部を素読しても5分もかからない。内容もほとんど子どもが聴いて分かるような節が多い。たとえば、次のような一節がある。

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老いたるを敬うは父母の如し。
幼(いとけなき)を愛するは子弟の如し。

 お年寄りを見かけたら、自分のお父さんやお母さんのように大切に敬いなさい。
 幼い子どもを見かけたら、自分の子どもや弟・妹のようにかわいがってあげなさい。[1,p110]
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 齋藤孝氏は、この節を子ども向けに分かりやすく解説している。

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 まだ若いみなさんにはわからないかもしれませんが、年をとった人というのは、ちょっと歩くのも大変なことがあります。そういう大変さはなかなか伝わらないので、おじいさんやおばあさんが階段を上るときとか、大きな荷物を持つのに大変そうにしているのを見たら、すすんで手を貸してあげてください。

「大丈夫ですか?」と手をとってあげるだけでも、お年寄りは助かるのです。そして、そういう行動をすると、その場の雰囲気がよくなります。

 幼い子どもも同じです。小さな子はあたり構かまわず、いきなり走り出して、転ころんでしまうことがよくあります。そういう子がいたら、助け起こしてあげましょう。みんなが積極的にそういう行動をとる社会は、安心して暮らせるいい社会です。世界には、子どもが車にはねられても助けに行かないような国だってあるのです。 [1,p111]
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■3.ひき逃げされて血を流している幼児も助けない国

「子どもが車にはねられても助けに行かないような国」とは、最近、中国であった事件をさしているのだろう。それは車がようやく通れるほどの細い道で、2歳の女児がひき逃げされ、路上で血を流して倒れているのに、そのすぐそばを18人もの人が平気で通り過ぎていった、という事件である。

 女児はようやく19人目のおばあさんに助けられ、病院に担ぎ込まれたが、死亡してしまった。この様子は一部始終が監視カメラで撮影されており、映像がネットに流れて、中国内でも怒りの声があがった。

 また上海の雑踏で、87歳の老人が脳梗塞で倒れ、後頭部から血を流しているのに、誰も助けようとしなかった。通りかかった白人女性が老人を助け、傍観している見物人に激怒して、罵倒したという事件も起こった。

 こういう事件がニュースになるということは、中国においても、「子どもやお年寄りを助けるのが良い社会」という価値観は同じだからである。それは世界共通の価値観なのだ。

 しかし、問題はどれだけの一般市民がそういう気遣いを実践しているか、という事である。欧米では、その価値観が相当に実践されているが、その欧米人が日本に来ると、日本人の気遣いに驚く。逆に同じ欧米人が、中国では倒れている老人を誰も助けないので、激怒する。価値観は同じでも、その実践度合いは国によって、かくも違いがある。

 ==========================================================つづく
 
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