脳回路と駆動物質
269673 危機察知の「右脳扁桃体」がシャーマン脳の本体か?
 
コスモス 12/10/16 PM00 【印刷用へ
扁桃体(扁桃核)は大脳辺縁系(古い哺乳類の脳)に属し、側頭葉の内側奥にある直径1センチメートルほどの丸い器官だ。霊長類などの高等脊椎動物にみられ、生存に重要な役割を果たしている。右脳左脳の機能分化や古い脳と新しい脳の関係を調べていくと、この扁桃体の特徴がシャーマン脳と深い関わりがあることが見えてきた。

危機察知、共同体環境での能力の発揮、認知できない情報のキャッチ、幻覚・幻聴現象に近い予知予言、巫病現象、意識と無意識の線、記憶の構造等々、多くの部分がこの「扁桃体」に由来すると考えられる。まずは、「扁桃体(扁桃核)」の機能をみてみよう。


■危機察知、仲間認識の扁桃体

扁桃体は、危険や恐怖を呼び起こす対象(外敵)や(嬉しい)獲物や愛くるしい対象に対して素早く反応する。そして、この反応は右脳の扁桃体のみに生じている。このことは、生物の進化の過程で右脳は予想外の環境の変化(危機や仲間の認識)に対して反応する役割を担っていると考えられる。

扁桃体は、五感を通して脳に入った情報に対しての情動反応を処理しているが、危機等の環境変化に素早く反応するために、味覚、嗅覚、内臓感覚、聴覚、視覚、体性感覚などあらゆる種類の刺激が皮質感覚野を経過せずに、脳幹レベルから直接的に(または、間脳の視床核を介して間接的に)入ってくる。環境からの情報をそのままに受容する生(なま)の感覚である。

その他に、大脳皮質を経由していわば高次元で処理され、知覚され、認知された結果が扁桃体に入ってくるものがある。この入力系はその伝達経路の故に必然的に、時間的に僅かに遅れて伝達されるが、そのことによって、適正かつ精密な情報として入ってくる。

これらの粗と精、原始的と識別的、低次と高次という2種の情報が扁桃核内で遭着しているのである。このことにより、環境に対して瞬間的、反射的に反応した生得的な生体反応は、成体の思慮深い知恵により、快か不快か、有益か有害かの判断に基づいて環境適応的に補正・修正される。

なお、ここでいう有益か有害かの判断は実生活上の実利的なものに限定されるものではなく、情動記憶と扁桃体の関係からして明らかなように、ヒトの場合、周囲(社会)の情報を処理し、広く動因なるものを選定して、また芸術などに接した場合に知覚される高尚な快の情感、つまり精神的な意味で生体にとって有益な情感の判断もここに含められるだろう。また、自然の景観や宗教的経験における崇高な感情や超越的感動もここに根ざしていると考えられる。

なお、扁桃体は情動に深くかかわるだけでなく、社会性にも関係が深いことがわかってきており、人の顔を区別したり、表情を読み取る機能(能力)を持ち、扁桃体が傷つくと孤立するなど社会生活がうまくいかなくなることが動物実験で確認されている。


■幻聴、幻覚のメカニズム

視覚情報は、目から視床へと流れ、それが扁桃体、海馬、そして前頭葉へと流れるのが通常の流れだが、扁桃体など視床下部の下に直結している組織から視覚聴覚情報が逆に入力してくることがある。

実際に目に見えている情報ではないが、扁桃体など視床下部の下の組織から入力された情報が、視床で映像として再現され、その視覚情報が前頭葉へと流れる。これが幻覚の仕組みであり、それが実際に聞こえる言葉の情報となると幻聴となる。このように脳の中の各組織が複雑に関わりあうことでさまざまな精神症状を生み出している。それは異常なことではなく、脳の機能の誤作動ともいえる。不安や恐れストレスなどが原因で、扁桃体からの言語情報、視覚情報が視床に伝わり、それが現実の言葉、視覚として前頭葉に伝わり、現実的なものとして脳が捉える。

■危機や恐怖反応

感覚器を通じて入ってきた信号を受けて、扁桃核は過去のトラブルの記憶をひとつひとつチェックしはじめ、「これは自分が嫌いなものか?自分を傷つけるものか?自分がこわがっているものか?」を判断する。答えが「イエス」ならば、扁桃核は即座に反応して脳全体に緊急事態を発信する。「恐怖」と判断したときは、扁桃核は直ちに脳の主要各部に緊急事態を知らせ、同時に戦ったり逃げたりするのに必要なホルモンの分泌を命じる。扁桃核から出ている別の神経回路からノルアドレナリンの分泌を促し、脳は興奮状態になり、感覚は鋭敏になる。扁桃核からは、脳幹にも信号が送られ、その結果、表情は恐怖に凍りつき、筋肉はとりあえず必要のない動きを中断し、心臓の拍数は早くなり、血圧は上昇し、呼吸数は少なくなり、他の器官は恐怖の対象に注意を集中し、必要に応じて筋肉を動かせるよう準備する。大脳新皮質は思考を一時中断し過去の記憶をめくり、目の前の非常事態に関連する知識を引き出そうとする。

■幼児期に形成される情動反応

扁桃核の情動反応は、生で粗な情報に反応することから不正確さを孕むことになる。また、情動反応の不正確さを増す要因がもうひとつある。強烈な情動の記憶は生後2、3年までの幼少時における体験から生じる場合が多いという事実だ。虐待や遺棄などによって心が深く傷ついた場合は特にこの傾向が強くなるのだが、この幼児期の記憶が情動反応に関わるため、本来不要な恐怖や不安反応を示すことになる。

生後まもない時期には、脳の他の部分、特に言語的に文脈を記憶する海馬や、理性的思考の場である大脳新皮質は発達途上にある。扁桃核と海馬はそれぞれ独自に状況を記憶し、必要に応じて貯蔵してある情報を取り出すのだが、海馬が取り出した情報を情動反応に結びつけるかどうかを判断するのは扁桃核であり、扁桃核は海馬に比べて誕生の時点ですでにかなり発達しており、生後まもなく完成する。扁桃核完成後の幼児体験が後々の情動反応に影響を及ぼすと考えられる。

■長期記憶に関わる扁桃体

扁桃体は大脳辺縁系の下部、海馬と隣り合わせの位置にあり、相互に情報交換をしており、長期記憶には扁桃体が強く働いている。例えば、私たちは、特別に好きなことは努力しなくて覚えら、喜怒哀楽の感情を強く抱いた出来事はいつまでも覚えている。また、強い恐怖や危機体験も強く記憶されることに扁桃体が関わっていると考えられる。
 
  List
  この記事は 269672 への返信です。
  この記事に対するトラックバックURL  http://www.rui.jp/tb/tb.php/msg_269673
  ※トラックバックは承認制となっています。

 この記事に対する返信とトラックバック
273618 θ波を出すCDを聞いて 匿名希望 13/03/09 PM07
272368 【仮説】扁桃体の「危機察知」「仲間認識」回路に、ミラーニューロンによる「同一視」回路が塗り重ねられ、「共感回路(共認原回路)」が形成されたのでは? 西谷文宏 13/01/20 AM01
270472 人間は視覚を用いずに相手の表情を"見る"ことができる 12/11/11 AM00
269998 扁桃体は「好き嫌い」、「快不快」を海馬に伝達→記憶に大きく影響を及ぼす 渡邊真也 12/10/26 AM02

[過去の記事へ]
[一覧へ戻る] [新しい記事へ]


◆実現論本文を公開しています。
 実現論 : 序  文
 第一部 : 前  史
 第二部 : 私権時代
 第三部 : 市場時代
 第四部 : 場の転換
 参考文献

 必読記事一覧
01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28
大転換期の予感と事実の追求
実現論の形成過程
自考のススメ1.未知なる世界への収束と自考(1)
自考のススメ1.未知なる世界への収束と自考(2)
自考のススメ1.未知なる世界への収束と自考(3)
自考のススメ1.未知なる世界への収束と自考(4)
自考のススメ2.現代の不整合な世界(問題事象)(1)
自考のススメ2.現代の不整合な世界(問題事象)(2)
自考のススメ2.現代の不整合な世界(問題事象)(3)
自考のススメ3.自考力の時代⇒「少年よ、大志を抱け」(1)
自考のススメ3.自考力の時代⇒「少年よ、大志を抱け」(2)
1.これから生き残る企業に求められる能力は?
2.私権圧力と過剰刺激が物欲を肥大させた
3.市場の縮小と根源回帰の大潮流
4.共認回帰による活力の再生→共認収束の大潮流
5.自我と遊びを終息させた’02年の収束不全
6.同類探索の引力が、期応収束を課題収束に上昇させた
7.情報中毒による追求力の異常な低下とその突破口
8.大衆支配のための観念と、観念支配による滅亡の危機
9.新理論が登場してこない理由1 近代観念は共認収束に蓋をする閉塞の元凶となった
10.新理論が登場してこない理由2 専門家は根本追求に向かえない
11.学校教育とマスコミによる徹底した観念支配と、その突破口(否定の論理から実現の論理への転換)
12.理論収束の実現基盤と突破口(必要なのは、実現構造を読み解く史的実現論)
近代思想が招いた市場社会の崩壊の危機
新理論を生み出すのは、専門家ではない普通の生産者
現実に社会を動かしてきた中核勢力
私権時代から共認時代への大転換
市民運動という騙し(社会運動が社会を変えられなかった理由)
民主主義という騙し:民主主義は自我の暴走装置である
統合階級の暴走で失われた40年
大衆に逆行して、偽ニッチの罠に嵌った試験エリートたち
新理論の構築をどう進めてゆくか

『るいネット』は、47年の実績を持つ起業家集団・類グループが管理・運営しています。るいネットワーク事務局(Tel:0120-408-333, E-mail:member@rui.ne.jp