生物の起源と歴史
268120 【大気の歴史】8〜還元的世界から酸化的世界へ ⇒「酸素呼吸型生物」の登場
 
麻丘東出 ( 52 兵庫 環境コンサルタント ) 12/08/28 PM09 【印刷用へ
38億年前に初期生命が出現した頃の海や大気の地球環境は、強い還元状態におかれており(※酸化還元反応リンク)、原始生命は、このような還元的環境で適応できる「嫌気性生物(リンク)」であった。
それゆえ、27億年前の酸素発生型光合成生物(シアノバクテリア)により酸素が増大してゆくと、原始生物は生存危機に晒される環境に置かれることになる。

光合成により生じる酸素と生体が結びつく「酸化」反応は、生体の高分子有機物を酸化分解することで、生体物質を傷つけることになる。
それゆえ、シアノバクテリアが廃棄する酸素は生命体にとって有害で、原始生物で還元的物質で出来ている絶対嫌気性生物は、酸素が存在すると生存できない。そして、酸素を発生するとはいえ、もともとシアノバクテリアの祖先は嫌気性生物として出発しており、自らつくりだした遊離酸素の量がどんどん増えてくると、他の原核細胞と同様に、シアノバクテリア自身の細胞さえも、酸素毒性に対する対抗策を用意せねばならない。さもないと、遊離酸素(O2)が還元されてできる毒性の強い活性酸素(O2^-、H2O2など)によって、たちまち生存の危機に陥ることになる。

そのため、酸化的環境への変化に適応すべく、生命は酸素毒を解毒するのに特殊な酵素をつくりだす。危険な酸素はヘモグロビン(リンク)という酸素を運ぶ分子に結合して体内に安全輸送され、それぞれの細胞では酸素の処理はミトコンドリア(リンク)という特殊な技能をもつ細胞内小器官にまかせている。
そうした酵素をもっていない微生物はシアノバクテリアの酸素汚染によって駆逐されて絶滅に追いやられたり、還元的な物質が地下から供給されている地域、あるいは地下深部の酸素のない世界へ追いやられてしまった。
このように、現存する酸素呼吸生物の細胞中には、酸素毒性を中和する酵素が含まれている。これは、酸素呼吸で生きている生物も、還元的物質でできている自らの体を守るために、酸素解毒装置を内蔵していないと生きていけないことを示しており、原核生物が進化していく道筋のどこかで、このような自己防衛能力が獲得されたと考えられる。

一方で、高分子有機物を酸化分解する酸化反応は、高いエネルギーを発生する。そこで、光合成の廃棄物であった酸素が、海水や大気中に徐々に増加し、さらには過剰になってくると、受け身の防御のみではなく、高い活動エネルギーを得られる酸素を積極的に有効利用しようとする生物が登場する。
 光合成:H2O+CO2 → CH2O+O2 ⇔ 呼 吸:CH2O+O2 → H2O+CO2

つまり、生物史上最大ともいうべき生存危機の外圧に直面し、危機の防御能力にとどまらず、生存域拡大を可能とする新たなエネルギー源の獲得までも満たす機能をもった『酸素呼吸型生物』の出現である。

そしてこの呼吸機能は、これまで地球生命が獲得したなかで最も能率的なエネルギー活用機構であり、これにより、代謝系が発酵から酸素呼吸系に大きく進化することになる。
そして遂に、20〜18億年前に、太陽からの光エネルギーを利用する光合成で栄養を自らつくる「酸素発生型光合成生物(→葉緑体)」と、それにより発生する酸素を利用して高い活動エネルギーにする「酸素呼吸型生物(→ミトコンドリア)」と合体し共生する『真核生物』が登場する。

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※参照
「生命と地球の歴史」 丸山茂徳、磯崎行雄 著
「光環境と生物の進化」日本光生物学協会編、共立出版、2000年刊
 
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