もはや学校は終っている
266981 情報技術の進歩と首都機能移転で没落する東京
 
新聞会 12/07/26 PM10 【印刷用へ
国際情勢の分析と予測リンクより転載します。
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〜前略〜

工場制手工業から機械制工業への転換で多数の工場労働者が不要になった。蒸気機関車の導入で多数の飛脚や駕籠を担ぐ人が不要になった。技術革新は常に大量の失業者を特定の分野で生み出す。情報技術の進歩はマスコミ・出版・音楽・証券・旅行代理店・生命保険・損害保険等の業種を直撃しており、近未来にはこれらの業種の雇用は大幅な縮小ないし消滅が避けられない。これらの業種に共通するのは自ら付加価値を生産することができないことである。情報技術の進歩はこのようなコストの高い間接部門を消滅させつつある。

付加価値を製造する業種である製造業においても、パナソニックが本社を7000人から数百人まで削減するという。人事・総務・営業などの業務が情報技術の進歩で合理化できることがその背景にあると思われる。公務員の世界でも同様の人員削減は進んでいくだろう。

この消滅していく職場は基本的に文系大卒が中心の事務・営業職である。理系の技術開発部門、芸術系の職は付加価値を生産するので影響を受けない。もちろん文系大卒にも企業の経営、日本政府や道州政府の経営(上級職の公務員)などの需要はあるが、パナソニックの本社が数百人という数字から見て微々たるものである。また、その様な重責を担う人材は経済学・統計学・科学技術についての高度な知識が必要であり、数学が苦手だから文系を選ぶ様な大学生には絶対に無理である。民間大企業の経営スタッフの需要はパナソニック100社分として数万人、上級職公務員の需要はその半分程度だろうか。勤続40年とすると、一学年あたり民間2000人、公務員1000人程度の需要しかない。そのうち四分の一が理系になると仮定すると、文系の採用枠は概ね年間2300人程度となる。その他に文系上級資格職の需要は法曹5百人、会計士5百人程度である。つまり、日本には文系事務職養成一流学部は3300人分しか不要ということになる。東大文系1300人、京大文系900人、一橋大900人だけで3100人なので、その他の国公私立の文系学部はほとんどが一流の職にはありつけないことになる。

その次のランクの文系学部というと、国公立は地方旧帝大5校+神戸大・筑波大・横国あたりになる。文学部や教育学部を除く社会科学系学部の定員合計は4000人強か。私学だと早慶上智ICUで、定員合計は1万人程度はいると思われる。このランクの大学の卒業生は大部分が二流の職場で働くことになる。その下のランクの地方国公立大文系やGMARCH・関関同立文系に至っては、正規雇用の職場を得ることすら困難になっていくだろう。文系事務営業職の職場が激減していくのに大学の学部定員が減っていないのだから当たり前である。

とりわけダメージが大きいのが東京である。東京は20世紀には大企業の本社が集中し、膨大な数の文系事務営業職が雇用されていた。しかし、その本社の雇用が激減しつつある。また、マスコミや金融などの雇用が激減する職種も集中的に立地している。更に、石原都知事が言う様に今後日本は首都機能が京阪神や名古屋に部分移転する。東京の中枢機能はその分減少し、ダメージは更に大きくなる。

東京が致命的なのは、平均的な大学教育のレベルが低いことである。東京では国立大学の規模が相対的に小さく、早慶やMARCHなどの私大文系学部の定員が圧倒的に大きい。これらの大学は多様な学生を集めて交流させてコミュニケーション能力を磨くことを第一としており、学問や研究は軽視してきた。関西・名古屋で阪大神戸大名大に進学する層が首都圏では早慶に進学する。阪大神戸大名大では理系学部の定員が6割以上だが、早慶では理系学部の定員は恐らく2割程度しかない。早慶の文系学部では入試に数学が全員必須の学部は皆無であり、入学者の理数系の学力は極端にばらつきが大きい。附属高校の多くは大学に全員進学可能で、極端に学力の低い者も存在する。予備校の様な少人数の学力別クラス編成を行い学力にあった授業を行うしか無いが、マスプロ教育のコストの低さで勝負してきた私大文系学部にそれは無理だ。こんな状態では、文系学部の入学者に理系の学問を副専攻として学ばせることも、少数の優秀な学生を国家を支える人材に育成するために高度に専門的な教育を行うことも学部レベルでは全く不可能である。そもそも、日本には早慶文系学部の膨大な数の卒業生に相応しい優良な職場がなくなっているのだ。今後名古屋や関西が首都圏の一部になれば、教育レベルの低い早慶文系の卒業生は基礎学力の点では近いレベルにある阪大・神戸大・名古屋大の文系卒業生に歯が立たなくなるだろう。

早慶やMARCHといった首都圏のマンモス私大は20世紀後半の東京の膨大な文系事務営業職の需要に特化して繁栄してきた。その需要が激減する以上、これらの大学が下位大学に転落するのは火を見るより明らかである。一流大学として生き残るには、需要が減少しない理系学部中心の大学に変身し、大学の定員を減らして少数精鋭主義となり、入学希望者全員に数学や理科を含む多科目の入試を必須にし、附属高校の成績下位半分程度の入学を拒否するしかない。しかし、現状では早稲田実業や慶応の二番目の附属小学校にみる様に、小学校を含めた附属学校の設立が相次いでおり、金とコネさえあれば学力が極端に低くても大学に入学できる事実上の裏口が拡大している。小学校入学時に学力での選抜は不可能であるからだ。そのような低学力の学生が増加する以上これらの私大は今後もどんどん教育水準を引き下げざるを得ない。また、附属出身の低学力の学生は理系は無理なので、附属からの全入を維持する限り理系中心への転換は無理だ。そして、これらの大学はマンモスの様に消え去っていくことになると予想する。
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