新しい男女関係(→婚姻制)の模索
26643 家庭とは何か?1930年、高群逸枝はかく語る。(3)
 
槇原賢二 ( 30代 大阪 塾講師 ) 02/03/15 AM04 【印刷用へ
みなさん。
文字からみた家庭は、たいがい、こういったもので、決して神聖な場所どころか、罪悪の巣窟であり、刑務所である。

「文字は一切の哲理だ」といい、「言葉は神なり」というが、まったく、文字に現れた家庭の真相は神のように正直で、実際的である。

もっとも、人間の住むところ、そこには常に、相互本能の変形としての、何らかの情緒がある。封建時代の君臣の間には君臣的な情緒があり、君は臣に対して慈、臣は君に対して忠であった。そのように、家庭にも「家庭情緒」があり、家主は家族に対して慈、家族は家主に対して忠であるべきとされる。

だが、私たちが、たとえばお芝居や小説や、たまに実際のそうした君臣の情や家庭間の愛をみて、「美しい」と感ずるのは、慈だとか、忠だとかの階級的道徳に対してではなく、その道徳の仮面のしたから曲りなりにも現れる「相互扶助本能」すなわち階級を超え、法律を絶した原始平等の相互愛の姿に対してである。

ところが、ひとびとは、それをそうはみないで、仮面そのものを見て、直ちに君臣賛美、家庭賛美に走ることがある。だが、その実そうした仮面は、真情を妨げることのみに役立つものでしかない。

その証拠には、芝居や小説にもあるような君臣の情や家庭の愛は、実際はごくまれであって、ある婦人雑誌が、知名の文士たちに「家庭に関する正直な感想」をもとめたところが、その九分七厘までが「結婚は墓場で、家庭は牢獄だ」と答えているが、そのまた妻君たちは、別の雑誌で、それらの文士たちが家庭にあって、いかに冷酷で、野蛮人で、人非人であるかを暴露している。

とにかく、多くの家庭がうまくいっていないことは事実で、徳川時代に書かれた「庭訓」とか、「女鑑」とかいう書物を読むと、「女は邪険で、陰険で、姦キツだ」と毒づいてある。古くからの家庭で、女がいかに持て余されていたかが分かる。つまり、女の「人間性」が家庭というものといかに衝突してきたか。

これまでの家庭主義者は「女よ家庭に従順であれ。そうしてこそ家庭悪はなくなるのだ」といってきたが、なくなるどころか、いつまでたっても、かえって多くなるばかり。

そこで、目覚めた婦人は「家庭をケトバス」ことが唯一最上の手段であることを知った。

家庭とは何か。元来それは豚小屋と刑務所を意味しているのではないか。
 
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