共認心理学:現代の精神病理
263900 薬を売るために病気はつくられる(2)
 
ばんび ( 23 京都 経理 ) 12/05/07 PM07 【印刷用へ
引き続き、レイ・モイニハン アラン・カッセルズ著『怖くて飲めない!― 薬を売るために病気はつくられる』の内容の要約を『センタリング呼吸法』(リンク)から引用します。

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 ▼患者の数を操作する
 多くの医学的状態において、健康と病気の境界線をどこで引いたらいいかは非常にあいまいである。「正常」と「異常」とを分ける境界は国によって劇的な違いがみられたり、時代とともに変わったりする。病気の境界を大きく広げれば広げるほど、潜在的な患者数は増え、製薬業界にとって都合よく市場が広がることは明らかだ。今日、会議の席で、そうした境界線を引く専門家の手に製薬会社のペンが握られていることがあまりにも多い。そして彼らは、会議を開くたびに、病気の境界を広げているのである。
 こうした専門家たちによると、米国では、高齢者の九〇パーセントは高血圧症であり、女性のほぼ半数は女性性機能障害をわずらっており、四〇〇〇万人以上が薬でコレステロール値を下げるべきであるという。新聞記者たちの助けをちょっと借りれば、こうした最新の病気はとても重篤で、多くの人がかかっているが、薬で治療が可能だというふうに世間に広めることができる。                             
 疾患の境界線が限界まで押し広げられる一方、その病気の原因のほうは、可能な限り狭められてしまう。心臓病の原因は、コレステロール値や高血圧といったごく狭い範囲に絞られ、精神的苦痛は、主として脳内にあるセロトニンという物質のアンバランスのせいだとされてしまう ― そんな説明は全体像をみていないばかりか、すでに時代後れだというのに。
 今日、病気についての我々の考え方は巨大製薬会社の大きな影響の下で形づくられている。だが、焦点が絞られているために、健康や疾患を、広い視野でみることができなくなっていて、ときにはそのために、個人や共同体が大きな代償を支払わなければならないこともある。たとえば、現在、コレステロール値を気にする健康な人が高価なコレステロール低下薬を買うために、何十億ドルもの金が使われている。しかし、人類全体の健康の改善が我々の本来の目的であるならば、その金の一部を、喫煙を減らしたり、運動を勧めたり、食事内容を改善するためのキャンペーンに使ったほうが、はるかに高い効果が期待できるはずなのである。

 ▼病気に対する恐怖心につけこむ
 病気を売り込むための販売促進戦略にはさまざまなものがあるが、すべてに共通しているのは、人々の恐れにつけこむというやり方だ。女性たちに更年期はホルモン補充療法で治療 しなければならない病気だと思い込ませるときには、心臓発作への恐怖が利用された。うつ病はたとえ軽度でも強力な薬で治療しなければならないという考えを売り込むためには、自分の子どもが自殺するのではという親たちの恐れを利用している。しかし、ある病気を予防すると大げさに宣伝されている薬が、実際にはその病気にとってかえって害になるという皮肉な場合もあるのである。
 長期にわたるホルモン補充療法は、女性の心臓発作のリスクを増やし、抗うつ剤はどうやら若者の自殺志向のリスクを増大させるらしい。なかでも一番恐ろしいケースのひとつは、よくあるお腹の不調を治すという触れ込みで売られていた薬によって重症の便秘になり、死亡した人が何人も出ていることである。だが、このケースでも、ほかの多くのケースと同じく、政府の規制当局はなぜか、国民の健康よりも、製薬会社の利益保護のほうに興味があるように思われたのだった。
 米国では一九九〇年代後半に薬の広告規制が緩和され、一般の人々を宣伝のターゲットとした空前の猛攻撃が始まった。人々は現在、毎日平均一〇回はこうした広告をみさせられている。世界のその他の国々でも、製薬業界は広告規制の緩和をめざし、執拗な戦いをつづけている。ある者は、こうしたマーケティングのやり方は価値のあるサービスだと支持し、またある者は、病気を私たちの生活の中心にしてしまうことだと批判する。マーケティング攻勢によって、本当の病人は選択肢を狭められてもっとも高価な薬による治療を押しっけられ、何千万人もの健康な人々は、自分の体は壊れかけていて、うまく働かなくなりつつあり、いまにだめになってしまうという不安にかられ始める。人々の恐怖につけこんで利益を得ようとする人々は、病気を売り込むことによって、私たちみんなの心に攻撃をしかけているのである。闇の陰謀などではない。白昼堂々と押し入る強盗と同じなのだ。
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「病気をブランド化する技術」とは、何とも恐ろしいものです。
「あまり知られていない医学的症状に新たにスポットライトをあてたり、古くからあった病気を定義しなおして別の病名をつけたり、まったく新しい機能障害をつくりだしたり」…
ほとんど詐欺といっても過言ではありません。
こうして医者や製薬会社に騙されないためにも、これからも事実を追求していきたいと思いました。
 
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264022 大往生したければ医療と深く関わるな 川井孝浩 12/05/10 PM10

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自考のススメ3.自考力の時代⇒「少年よ、大志を抱け」(1)
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1.これから生き残る企業に求められる能力は?
2.私権圧力と過剰刺激が物欲を肥大させた
3.市場の縮小と根源回帰の大潮流
4.共認回帰による活力の再生→共認収束の大潮流
5.自我と遊びを終息させた’02年の収束不全
6.同類探索の引力が、期応収束を課題収束に上昇させた
7.情報中毒による追求力の異常な低下とその突破口
8.大衆支配のための観念と、観念支配による滅亡の危機
9.新理論が登場してこない理由1 近代観念は共認収束に蓋をする閉塞の元凶となった
10.新理論が登場してこない理由2 専門家は根本追求に向かえない
11.学校教育とマスコミによる徹底した観念支配と、その突破口(否定の論理から実現の論理への転換)
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