地震・噴火・気象
262594 「地震の癖」の書評1
 
2U 12/03/30 PM09 【印刷用へ
角田史雄埼玉大学名誉教授の著書『地震の癖』は地震メカニズムの新理論として一部で注目されています。
以下は、傷の治療センター長である医師が書いた同書の書評です。

新しい創傷治療 より引用
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 「3.11」後の一時期,書店の一角は地震関連本で一杯だった。地震予知関連のもの,地震発生メカニズムを説明したもの,防災関連のものなど様々ある。そういう目で見ると本書はそういう「3.11がらみの地震本の一冊」に見えてしまうが,実は全く異なる本である。
 本書の出版は2009年であり,内容は「従来のプレートテクとニクス理論による地震発生理論はすべて間違っている」というものなのだ。要するに,地震発生メカニズムの定説を全面否定する本なのである。もちろん,中身も非常に面白い。最新の地球物理学の知見と膨大な観測データを元に地震と火山噴火のメカニズムを見事に説明していく様はスリリングだ。

 科学とは,古い常識が否定されて全く新しい考えに置き換えられる「パラダイムシフト」の連続である。本書で提唱する理論が現在の地球物理学や地震学でどのように扱われているかは分からないが,もしもこれが本当だとすると間違いなくパラダイムシフト級の理論と思われる。

 本書が否定するのはウェゲナーの大陸移動説に始まる「プレートテクトニクス理論」である。ご存じのように「地下のマントルの対流により海洋プレートが年間数cmの速度で移動して大陸プレートの下に潜り込み,長い年月をかけて大陸は移動した。海洋プレートが潜り込むときに大陸プレートを引っ張り込み,その変形の歪みが地震を起こす」というような理論であり,常識中の常識といえよう。
 ちなみに,日本では1969年にこの理論が紹介され,それをもとに小松左京(先頃,鬼籍に入った)が『日本沈没』という傑作を書いたことは有名であり,この小説以後,プレート移動という言葉が人口に膾炙する事となった。

 また,1968年の十勝沖地震をきっかけに地震予知連楽会が発足したが,ここで「地震予知」の元になったのもプレート・テクトニクス理論だった。要するにこの理論は,国家をも動かしたのである。

 ところが,その地震予知連が巨額の予算を受けながら,30年間,一度も地震を「予知」できなかったのは周知の事実だ。日本列島で起きた最大の地震である「3.11」の巨大地震すら予知できなかったのである。

 さらに,プレート・テクトニクス理論では,プレート衝突地域から遠く離れた地域(例:中国四川省など黄河中流域)で大地震が頻発していることを説明できないのである。何しろこの四川省は日本海溝のプレート衝突部から2,500キロメートル,ヒマラヤの衝突帯から2,000キロ以上離れているのだ。2,500キロメートルの地点で地震が起きるのなら,それより近い500キロメートル地点で先に地震が起きてよさそうなものだ。

 そしてさらに,本書によるとマントル対流による摩擦力だけではプレートが動かないことが力学的に証明されていると言うし,太平洋プレートは時計回りに回転しているだけで,ユーラシアプレートの方向に移動していないことも証明されているらしい。さらに言えば,マントル自体もかつて考えられていたような形では「対流」していないことが明らかになったのである。要するに,プレート・テクトニクス理論の心臓部がことごとく否定されているのだ。

 こうなると,科学者がとる態度は3つしかない。

プレート理論が正しく,観測結果の方が間違いだと考える。
新たな観測事実を従来のプレート理論に組み込めないかと模索する。
プレート理論をすべて捨て去り,全くゼロから新しい理論を構築する。

 本書は3番目の道を選んでいると思われるが,このような場合,新理論にはどのような条件が必要だろうか。それは次の3つであり,この3点が完璧なら,従来の理論(=旧パラダイム)を全面否定できるのだ。

従来理論で説明できたことが新理論でも説明できること
従来理論で説明できなかったことが,新理論で説明できること
まだ観測されていない現象を予知・予測できること

 例えば,アインシュタインの相対性理論はニュートンの万有引力の法則の拡張という位置づけであるが,

ニュートンの理論では説明の付かない水星の近日点移動を説明でき,
重力レンズの存在を予想してそれが数年後に確認された
ことで,「より一般的な条件で成立する重力理論」として受け入れられたのだ。

 そのような目で見ると,本書の提唱する理論は

地震発生のメカニズムを単純明快な理論で説明できる
中国の黄河中流域での地震頻発の理由を説明し
2007年の時点で,2008年の四川省大地震の発生を予知していた
という3点において,新理論としての条件を満たしていると思われる。

続く 
 
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