実現論を塗り重ねてゆく
261263 2/5なんでや劇場5 私権拡大の可能性が開かれた市場時代、過剰刺激が物欲を肥大させた
 
冨田彰男 ( 48 兵庫 経営管理 ) 12/02/10 AM00 【印刷用へ
後半は、市場時代を扱う。
ここでは、参加者からの疑問や提起を元に対話型で議論してゆく。

私権時代は力の序列に基づく過酷な徴税制度をはじめとする人工的な制度を通じて、庶民が貧困のままに置かれてきた。これが「人工的に貧困が作り出される」ということの中身である。

その結果、「働けど我が暮らし楽にならず」という詩に象徴されるように、先祖から子々孫々に至るまで半永久的に貧困が続くとしか思えないというのが、私権時代、とりわけ農業生産の時代の庶民の感覚である。これが、庶民の物的欠乏が不変で無限なものであるかのように見えた背景である。

●ルネサンス期には恋愛小説や演劇によって恋愛観念が庶民レベルにも広まった。古代〜中世までは王侯貴族が恋愛(不倫)をしていたのが、ルネサンス以降は都市住民も恋愛を至上のものとして、貴族の真似事をして恋愛(不倫)を始めるようになる。
恋愛観念が広まると、気を引くために贈り物をする、自分の身なりを着飾るなど、それだけで市場は拡大する。

しかし、市場が拡大した理由はそれだけではない。
ルネサンス期には華美な絵画・建築・音楽などを通じて、庶民の快美欠乏が刺激され、庶民も「自分もああいう高価な物がほしい、贅沢な生活がしたい」と思うようになり、需要が拡大する。
ルネサンスの小説家・演劇家・建築家・音楽家のパトロンに金貸しがなったのも、これが目的である。そして、近代以降はルネサンスの小説・演劇・絵画・建築・音楽などが映画やTVなどの映像に変わっただけである。

確かに市場の原資は略奪してきた財であるが、それは市場拡大の最初の原資にすぎない。略奪し尽くせば市場拡大は停止する。恒常的に市場を拡大し続けるためには、恋愛観念や華美な建築等を見せ続けることによって、人々の欲望を刺激し続ける必要があるのである。

●さらに大航海を契機に万人に私権拡大の可能性が開かれた。そうなると、庶民も王侯貴族と同じく(真似をして)物的欠乏を肥大させてゆく。

しかし、大航海時代に私権拡大の可能性が開かれたのは海賊などごく一部の人間に限られていたはずである。
それが、どのようにして、庶民が私権拡大の可能性に収束するようになっていったのか?
庶民が私権を獲得するには都市で雇われる必要があるが、その雇用機会はどのようにして創出されたのか?

近世以降の華美な建築や築城の必要、あるいは戦争のための武器製造の必要は、都市部で大量の職人を必要とする。それと商人を合わせた商工階級が都市部で拡大してゆく。そして商工階級たちの都市生活は農民の憧れになってゆく。こうして都市に人口が流れてゆき、市場拡大に拍車がかかってゆく。

日本でも戦前〜戦後には「着の身着のまま」が当たり前だった。これは季節ごとに一着しか服を持っていないということであり、しかもそれを10年〜20年に亙ってボロボロにまるまで着続けるというのが、戦前〜戦後の庶民の生活であった。それが、服を頻繁に買い換えるようになれば、その分だけ需要は膨らんでゆく。これが「生活回転の高速化」の具体的事例である。

●しかし、庶民の物的欠乏は豊かさが実現された'70年以降、衰弱に転じた。

では、私権時代を通じて'70年の庶民よりもはるかに豊かさを享受していた支配階級の物的欠乏は何故、衰弱しなかったのか?

私権統合の社会とは、万人が私権闘争のしのぎを削る社会である。
そこでは評価共認によって私権闘争の勝者が評価されるが、他人より高価な物、贅沢な物を持っていることが評価指標(ステータス)となる。しかも常に私権闘争の圧力が働いているので、支配階級たちは私権時代を通じて自らの力や地位を誇示するために、物的欠乏を肥大し続けてきた。

但し、この前提条件は、社会全体に私権圧力が働いており、万人が私権に収束していることである。ところが'70年、庶民においても豊かさが実現されると全社会的に、高価な物をもっていても評価されなくなった。このように、物財を巡る社会的な共認(評価軸)が変わったので、支配階級も庶民も物的欠乏が衰弱したのである。

●なんでや劇場資料『私権圧力と過剰刺激が物欲を肥大させた』図解
図解2−B「市場の拡大」リンク
 
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2.私権圧力と過剰刺激が物欲を肥大させた
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9.新理論が登場してこない理由1 近代観念は共認収束に蓋をする閉塞の元凶となった
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12.理論収束の実現基盤と突破口(必要なのは、実現構造を読み解く史的実現論)
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統合階級の暴走で失われた40年
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