実現論を塗り重ねてゆく
261185 2/5なんでや劇場1 経済学者は物欲と市場の無限拡大に対して何の疑問も抱かなかった
 
冨田彰男 ( 48 兵庫 経営管理 ) 12/02/07 AM00 【印刷用へ
2/5に行われたなんでや劇場の要約です。

共同体企業ネットワークの勉強会が近々始まる。
そこで、今回のなんでや劇場ではその実験として講義型と対話型の理論勉強会を試行する。

今日のテーマは『実現論』「序2第二節 力の原理から共認原理への大転換」であるが、新しく書かれたテキスト「私権圧力と過剰刺激が物欲を肥大させた」リンクを元に理論勉強会を行う。
前半90分を講義型、後半90分を対話型で運営する。

テキストには「経済学は、人間の物欲が無限に拡大することを前提にしてきたが、その前提こそ、経済学の騙しの起点であって、人間の物的欠乏は決して無限ではない」とある。

まず、経済学が登場して以降の代表的な経済学者が、物欲と市場拡大に対して、どのように捉えていたのかを検証してゆく。

【1】重商主義
その典型はスペイン・ポルトガルによる大航海である。
そこで国力=経済力という認識が前面に出てきた。もちろん、国力は経済力によって規定されるという認識は古代・中世から一貫してあったが、農業生産の時代には経済力といっても農業生産力の上昇⇒農業の活性化くらいしかないので、経済力第一にはならなかった。
近世、大航海による国力上昇の可能性が開かれると、経済力の上昇が全てに優先する第一目標(戦略)となり、市場拡大が絶対化されるようになった。
金貸しや商人だけでなく王侯貴族も市場拡大第一に収束し、そこでは人間の物欲が無限に拡大することは当然の事して、何ら疑問は登場しなかった。

【2】アダム=スミス
近世以降、破竹の勢いで市場は拡大するが、それによって共同体が破壊され精神破壊が進むといった弊害が顕著になる。そこでは「自然に帰れ」といった反市場主義的主張が登場する。反市場主義的主張に対抗して、市場拡大を正当化したのがアダム=スミスである。

アダム=スミスは経済学の元祖であるが、そのことは市場拡大を正当化するために経済学が始まったことの何よりの証である。
ここでも、市場拡大は絶対であり、物的欠乏が無限に拡大することに対して、何の疑問もアダム=スミスは持っていない。

【3】マルクス
市場がさらに拡大すると、資本家による労働者の搾取がひどくなり、労働者の貧困(窮乏化)が社会的な問題として顕在化する。そこで市場構造の解明に入ったのがマルクスであるが、マルクスも市場拡大を前提としてその原因構造を追求したのであって、このまま市場が拡大し続けてよいのか?という問題意識は全くない。

【4】ケインズ
労働者の貧困というマルクスの問題意識を引き継いだのがケインズである。貧困になるのは大不況のせいであり、不況を克服するためにどうする?というのが彼の問題意識である。
そこでケインズが提起したのが、国家が税金を市場に投入することで不況を脱出し市場は拡大し続けるという学説である。現在の国家財政破綻を作り出した張本人とも云えるが、ケインズも市場拡大は当然の事として何らの疑問も持っていない。要は、市場拡大は絶対で何よりも優先されることだから、国家が税金を投入してもよいという理屈である。

【5】現代経済学の主流マネタリズム
ケインズが実体経済の刺激を主張したのに対して、紙幣のばら撒きを主張したのがマネタリズムである。彼らが現代経済学の主流となったのは、物欲限界に達した先進国で市場拡大を続けるには紙幣をばら撒くしかなくなったからに他ならない。その結果、余ったお金が金融市場の流れ込み、バブルを作り出した。彼らこそバブルの張本人に他ならない。

逆に云うと、マネタリストたちは物欲に限界があることを薄々感じていいたのではないか? ところが、彼らも市場拡大を絶対視しているので、そのことは口には出せず、市場拡大を続けるためには紙幣をばら撒くしかないと主張したのである。

このように、重商主義からマネタリズムまで一貫しているのは、国力=経済力であり、市場拡大が全てに優先される第一課題であるという思い込みである。だから経済学者たちとそれに導かれた官僚たちは、物欲の衰弱が続く現在も尚、市場を拡大するために紙幣を増刷しまくっているのである。

この国力=経済力幻想を打ち破るためには、市場の縮小という論理だけでは不十分であり、共認原理による国力の上昇という論理を発掘する必要がある。これが今後の研究課題である。
 
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