近代市場の拡大
260742 2.私権圧力と過剰刺激が物欲を肥大させた
 
岡田淳三郎 ( 70代 大阪 経営 ) 12/01/22 AM00 【印刷用へ
それでは、この大転換の意味するところを、新概念を使って読み解いていこう。
社会の大転換が始まったのは、’70年頃である。その頃、先進国では貧困がほぼ消滅し豊かさが実現された。
経済学は、人間の物欲が無限に拡大することを前提にしてきたが、その前提こそ、経済学の騙しの起点であって、人間の物的欠乏は決して無限ではない。

人類は、500万年の歴史を通じて、ほぼ一貫して飢餓の圧力に晒されてきた。そして、人口が増え、各部族が境界を接するようになった約6000年前、乾燥(→飢餓)を契機に、略奪闘争の幕が切って落とされ、玉突き的に、世界中に略奪闘争が広がっていった。その勝ち抜き闘争の結果、力の序列原理によって統合された国家が形成され、国家は力の序列に基づく私有権の共認を統合軸として、安定した秩序を形成する。
この私有権がいったん共認されると、社会の全ての土地と物財は私有の対象となり、人々は私有権を獲得しなければ生きていけなくなる。従って、誰もが私権(地位や財産)の獲得を目指して争うようになり、私権闘争の圧力が社会の隅々まで覆い尽くしてゆく。かくして、飢餓の圧力を下敷きにして作り出されたこの私権闘争の圧力は、否も応もない強制圧力となって人々をその中に封じ込める。

こうして、私権社会が成立した。それは、500万年におよぶ共同体社会を覆す、人類史上の大転換であった。

飢餓の圧力を下敷きにしたこの私権の強制圧力の下では、力の序列に基づく収奪によって、人工的に貧困が作り出される。従って、そこでは人々の物的欠乏は、あたかも不変で無限なものであるかのように見える。従って、次の市場社会が、人々の物的欠乏が無限であると錯覚したのも当然かもしれない。

次の市場社会とは、人々を私権の強制圧力で追い立てた上で、私権拡大の可能性を囃し立て、あらゆる手段を駆使して人々の欲望を刺激し続ける社会であり、それによって私権闘争(利益競争)を加速させた社会である。
そこでは、利便性や快美性を煽る情報によって人々の欲望が過剰に刺激され、その結果、移動や消費の回転スピードがどんどん高速化してゆく。むしろ、欲望の過剰刺激と生活回転の高速化によってこそ、市場拡大は実現されると言ってもよい。だからこそ、金貸しに操られた学者たち、とりわけ市場の指南役たる経済学は、人間の欲望は無限に拡大するという仮説を暗黙の大前提とした訳だが、それは、学者たちの錯覚に過ぎない。

事実は、こうである。この過剰刺激による物的欠乏の肥大化は、誰もが私権の獲得に収束する絶対的な私権欠乏があってはじめて成立する。そしてその私権欠乏は、飢餓の圧力を下敷きとする絶対的な私権圧力の下ではじめて成立する。つまり、過剰刺激による物的欠乏の肥大化は、飢餓の圧力に基づく絶対的な私権圧力が働かなければ、成立しない。
その証拠に、’70年、貧困(=飢餓の圧力)が消滅するや否や、たちまち私権圧力は衰弱し、それとともに過剰刺激によって肥大し続けてきた物的欠乏も衰弱していった。
 
  List
  この記事は 260719 への返信です。
  この記事に対するトラックバックURL  http://www.rui.jp/tb/tb.php/msg_260742
  ※トラックバックは承認制となっています。

 この記事に対する返信とトラックバック
261185 2/5なんでや劇場1 経済学者は物欲と市場の無限拡大に対して何の疑問も抱かなかった 冨田彰男 12/02/07 AM00
260775 3.市場の縮小と根源回帰の大潮流 岡田淳三郎 12/01/23 AM00

[過去の記事へ]
[一覧へ戻る] [新しい記事へ]


◆実現論本文を公開しています。
 実現論 : 序  文
 第一部 : 前  史
 第二部 : 私権時代
 第三部 : 市場時代
 第四部 : 場の転換
 参考文献

 必読記事一覧
01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28
大転換期の予感と事実の追求
実現論の形成過程
自考のススメ1.未知なる世界への収束と自考(1)
自考のススメ1.未知なる世界への収束と自考(2)
自考のススメ1.未知なる世界への収束と自考(3)
自考のススメ1.未知なる世界への収束と自考(4)
自考のススメ2.現代の不整合な世界(問題事象)(1)
自考のススメ2.現代の不整合な世界(問題事象)(2)
自考のススメ2.現代の不整合な世界(問題事象)(3)
自考のススメ3.自考力の時代⇒「少年よ、大志を抱け」(1)
自考のススメ3.自考力の時代⇒「少年よ、大志を抱け」(2)
1.これから生き残る企業に求められる能力は?
2.私権圧力と過剰刺激が物欲を肥大させた
3.市場の縮小と根源回帰の大潮流
4.共認回帰による活力の再生→共認収束の大潮流
5.自我と遊びを終息させた’02年の収束不全
6.同類探索の引力が、期応収束を課題収束に上昇させた
7.情報中毒による追求力の異常な低下とその突破口
8.大衆支配のための観念と、観念支配による滅亡の危機
9.新理論が登場してこない理由1 近代観念は共認収束に蓋をする閉塞の元凶となった
10.新理論が登場してこない理由2 専門家は根本追求に向かえない
11.学校教育とマスコミによる徹底した観念支配と、その突破口(否定の論理から実現の論理への転換)
12.理論収束の実現基盤と突破口(必要なのは、実現構造を読み解く史的実現論)
近代思想が招いた市場社会の崩壊の危機
新理論を生み出すのは、専門家ではない普通の生産者
現実に社会を動かしてきた中核勢力
私権時代から共認時代への大転換
市民運動という騙し(社会運動が社会を変えられなかった理由)
民主主義という騙し:民主主義は自我の暴走装置である
統合階級の暴走で失われた40年
大衆に逆行して、偽ニッチの罠に嵌った試験エリートたち
新理論の構築をどう進めてゆくか

『るいネット』は、42年の実績を持つ起業家集団・類グループが管理・運営しています。るいネットワーク事務局(Tel:0120-408-333, E-mail:member@rui.ne.jp