財務省がやっているプロパガンダを検証した記事を紹介します。
Electronic Journalリンクより転載します。
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「プロパガンダ」という言葉をご存知でしょうか。
「プロパガンダ」とは、特定の思想・世論・意識・行動へ誘導
する宣伝行為のことであり、きわめて政治的行為です。問題なの
は、そこで行われる宣伝の内容には必ずしも「本当でない」こと
があっても構わないという考え方があることです。
今回、野田政権が消費増税の実現に向けてやってきたことにつ
いても数々のプロバガンダが行われているのです。問題はそれを
表面上は野田内閣がやっているのですが、実際はバックにいる財
務省が工作していることです。この財務省がやっているプロパガ
ンダをいくつか取り上げて、ひとつずつていねいに検証していく
ことにします。
財務省がホームページまで使って一番強く国民に訴えているプ
ロパガンダは、「国の財政を家計にたとえる」ことです。具体的
には、次のようなかたちの訴えになります。
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現在日本の財政は40万円しか収入がないのに借金によって、
90万円を支出する生活をしている家庭のようなものである。
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この訴えは非常に分かりやすいので、メディアが好んで取り上
げており、テレビのコメンテーターを含めて多くの識者が使って
います。しかし、基本的には「国の財政を家計に例える」のは、
間違っているのです。
これは財政悪化を火の車の家計に置き換えているので、国民に
対して「増税しないと財政が破綻する」という恐怖感を植え付け
るのに効果的なプロパガンダになっています。
産経新聞社編集委員兼論説委員の田村秀男氏は、これについて
次のように述べています。
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こうしたたとえ話が間違っているのは、国の財政というものは
家計と違って主婦が節約すればするほど黒字が増えるようには
できていないということだ。経済を刺激するような積極的な財
政政策を行なうことで税収を増やすこともできるという意味で
国家は家計よりもむしろ企業に近い存在である。しかも、国と
家計が決定的に異なるのは、通貨の発行権を持っていることで
ある。国は中央銀行による金融政策を行使することで、「借金
が雪だるま式に増えないように」金利水準や物価上昇率などを
コントロールする手段を持っている。「借金が雪だるま式に」
というプロパガンダの裏には、徴税権という自らの権力を失い
たくない財務官僚の思惑が透けて見える。 ──田村秀男著
『財務省「オオカミ少年」論』/産経新聞出版
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40万円しか収入がないのに、借金によって90万円を支出す
る生活の家庭──常識的に考えてもこのような家庭は存在しない
はずです。そのような家庭はすぐ破綻しており、だからこそプロ
パガンダとして利用価値があるのです。
しかし、国の場合は課税権や通貨の発行権を有しており、そう
いうことがあっても不思議ではないし、直ちに破綻にはならない
のです。解決する方法が多くあるからです。
よく「財政破綻」といいますが、どういう状況を指して財政破
綻というのでしょうか。昨日のEJで取り上げた土居丈朗慶応大
教授の言葉を再現します。
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政府・民主党が半年遅らせたことは財政収支改善の遅れにつな
がり、軽く考えるべきではない。与野党協議では早急に合意し
てほしい。不調に終われば、市場の失望につながり、長期金利
の上昇を呼び込むリスクもある。 ──土居丈朗慶応大教授
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この中で「長期金利を呼び込むリスク」とありますが、これは
「国債の暴落」を意味しています。長期金利というのは10年物
国債の金利のことです。現在日本国債の長期金利は1%台ですが
もし日本国債が土居教授のいうように市場の信認を失って、一挙
に5%になったとすると、国債価格は25%以上低下する──こ
れを国債の暴落というのです。
つまり、金利を高くしないと国債が売れないので、長期金利が
上がる──つまり、国債価格が下がるのです。また、金利が上が
ると日本のように国債依存度が高い国の場合、利払いが一挙に高
額になり、支払うのが困難になる可能性があります。
しかし、これで財政破綻かというと必ずしもそうとはいえない
のです。なぜなら、仮に25%の国債価格低下を暴落というなら
日本経済が回復すると、この程度の暴落はいくらでも起こるから
です。もし、日本経済が名目成長率で4〜5%になると
国債金利も4〜5%になるのは自然なことであるからです。もっ
ともこの場合は、GDPが増えて税収が上がるので、財政問題は
改善しているのです。
現在日本経済は依然としてデフレ状態にあり、名目GDPがゼ
ロないし、マイナスになっているので、少しでも長期金利が上が
ると大変なことになると敏感に考え過ぎる人が多いのです。よく
長期金利が7%になると危険水域といわれますが、仮にそうなっ
たとしても打つべき手段があり、直ちに財政が破綻というわけで
はないのです。
すなわち、長期金利が上昇してそれによって利払いが困難にな
ったとしても、国には徴税権や通貨の発行権を有しており、それ
を使えば、直ちに財政破綻ということにならないのです。
このように「財政破綻」にしても「国債暴落」にしても「国の
借金(債務残高)」にしても、いずれも定義もしないで使ってい
ます。プロパガンダを仕掛ける方は、それぞれ自分たちにとって
都合の良い数字を使っているのです。だから、プロガパンダとい
うのです。騙されないようよく事実を調べる必要があります。
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以上です。 |
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