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257165 『反プレートテクトニクス論』星野通平著
「地殻は歴史的に塗り重ねられてできている」
 
山澤貴志 ( 46 鹿児島 ITコンサル ) 11/09/28 AM01 【印刷用へ
以下は地質学者星野通平氏の「反プレートテクトニクス論」の紹介文です。星野先生は「膨らむ地球」という説をとり、花崗岩時代,漸移時代,玄武岩時代と時代を経ながら地殻が歴史的に塗り重ねられてできているという説を唱えておられます。

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 第1章の「プレート説の誕生」では,プレート説の誕生とその内容が簡単に述べられている.第2章の「プレート説が主張する観測事実の検証」では,中央海嶺,海溝,大洋底,大陸漂移,プレート運動の原動力についてプレート説とはそぐわない具体的の事実にもとづき多くの疑問を提示し,著者のそれらの形成に関する考え方を加えている.第3章の「地球の歴史」では,著者の地球の歴史の見解が簡単に述べられ,最後の第4章の「プレート説流行の背景」では,プレート説の流行の科学的,思想的,社会的背景を述べている.

 本書の中核をなす第2章では,中央海嶺に関して,中央海嶺を構成する岩石がすべて中央海嶺型玄武岩でないことや,古い時代または大陸に起源をもつ岩石も含まれている多くの例があげられている.裂谷帯については,東アフリカ-紅海裂谷帯を例にその地形形成がプレート説では説明できないことが示されている.

 海溝については,中央海嶺と対をなさない多くの海溝があることと,海溝の堆積物は陸から供給されていること,その表層は一般に乱されていないこと,海溝の基盤に玄武岩層がないことが示されている.海溝太洋底斜面から縁辺海膨にかけて地域は展張場の構造に支配され,アルカリ玄武岩が分布し,縁辺海膨では高い地殻熱流量と正の重力異常値が観測されていることを指摘している.海溝に沿う地震帯の勾配はさまざまで,深度によってその勾配が変化することも述べられている.

 大洋底については,大洋地殻が3層構造をもっていて,それがどのように形成されるかという問題が議論されている.プレート説は大洋底地殻の成因と,プレート間玄武岩活動,大洋底のモホ面深度が11kmにあることを説明できないとしている.大洋地殻の第2層の玄武岩が地磁気の縞異常の年代を示していないことと,地磁気静穏帯についてプレート説では説明できないことを指摘している.また,大陸性岩石が太洋盆と太洋域の火山島では発見されることがあり,その年代が原生代後期を示していることを述べている.そして,西太平洋と東太平洋の岩石圏の厚さの違いは原生代末期の台地化のレベルの違いで説明している.

 大陸移動については,ヒマラヤ-チベットの隆起と生物地理をとりあげて,インド大陸のユーラシア大陸との衝突とヒマラヤ山脈の隆起の時代とは一致しないことを指摘している.そして,世界の生物地理パターンは大陸漂移が原因ではなく,むしろ中生代以降の陸上生物の分布は海水準上昇による陸橋の沈水によって支配されていると述べている.

 プレート運動の原動力については,プレート説を信じる研究者はプレートの冷却によって密度が高くなった岩層が後続のものを引っ張り込むとしているが,プレートがなぜ生まれたか,最初のプレートの運動の原動力は何だったのかを説明しなければ真相は明らかにされないと述べている.

 著者は,世界中に同時に侵食基準面を形成する海水準をもとに地殻の形成とその歴史を研究してきた・・・地球の歴史を花崗岩時代,漸移時代,玄武岩時代に区分し・・・地殻の形成と発展を総括した彼の地球膨張論が完成された.

彼の言う地球の歴史を概観すれば,地殻は次のように形成された.地球の誕生の早期にユークライト隕石が集まり,その後にエンスタタイト隕石が原始地球の表層を形成した.前者は岩流圏を後者は最上部マントル(岩石圏下部層)を形成した.花崗岩時代または始生代に,前者は大気・水圏・花崗岩地殻を分化し,後者は原生代以降,特には中生代以降より活発に未分化マグマとして地殻下部に上昇してきている.このマグマは,超塩基性岩と混合して性質のさまざまな種類の玄武岩をつくり,迸入によって地殻上部を隆起させた.

(中略)

 中生代から現在までの地球の最も新しい時代(玄武岩時代)は,カルシウムの多い玄武岩質火成岩マグマの活動によって特徴づけられる.それによって,海面上昇をともなう陸地と太洋低の隆起(造陸運動)とが起こった.この玄武岩質火成岩は,主に岩流圏起源の高温・高圧マグマで,体積を増大して岩石圏の弱線(始生代の線構造)に沿って線状の深部断層を生じ,台地域では基盤の下に水平に広がった.陸上に噴出したものは大陸溢流玄武岩となり,海洋域に上昇したマグマは原生代末期の準平原を一面におおって海洋底地殻をなした.地向斜帯では,堆積層を押し上げて地下に広がり,押し上がった堆積層は島弧や海嶺を形成した.中生代以降の海洋底玄武岩層による急激な海底の上げ底作用によって,海面は中生代以降から6km上昇した.

 著者の地球の歴史の考え方は,プレート説のような単純な循環論でなく,地殻の興味深い発展を描いている.この説では,地球の誕生から現在までに,花崗岩時代,漸移時代,玄武岩時代という時代ごとに異なった火成活動や地殻変動があり,またそれらが起こった地球表面の位置がそれぞれの時代の地殻形成とともにより上位へと隆起して重なり,地球表層の姿が変化させたことが語られている.本書を通じて,大陸の下や海底の下に隠されている地球の歴史の一部を垣間見ることができ,プレート説のような軽薄な仮説では味わえない,地球科学の奥深さとテーマの魅力を再認識することができた.
 
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