否定脳(旧観念)からの脱却
25563 自然法、基本的人権とは何か−2
 
岩井裕介 ( 29 山口 再開発プランナー ) 02/03/04 AM01 【印刷用へ
個人の権利=人権という概念の思想的出発点といわれているのは、ホッブズ(イギリスの政治哲学者1588-1679)の著書『リヴァイアサン』であると言われます。この時代、ヨーロッパ近代の「神が死んだ」世界において、社会や人々の存在をどう根拠付けるかが問題意識の中心であったと考えられます。

ホッブズは、現実を離れた、観念操作による一種の奇矯なる思考実験を通して、そもそも人間の形成する社会、国家というものはどういう構造を持たなければならないのかを、神や古来からの慣習法といったものに一切依拠することなしに説明しようと企図しました。

ここでホッブズは、社会の構成単位として、「個人」という観念を用います。ここでいう個人とは、神もなく歴史も慣習も文化的伝統なく、親も子もない、すなわち現実の生きた人間とはかけ離れたあり方をした存在として定義されています。つまり現実存在とは対応しない、純粋に観念的な概念です。

(現実と対応しない観念上の操作という意味においては、中世キリスト教の思想と基本構造は同じであるといえます。また、人間社会という対象を徹底的に分解して「個人」というアトムに辿り着いたという意味では、デカルトと同世代の思考の産物といえるのでしょう。)

そしてホッブズは、人間は誰でも人を殺しうるということにおいて平等である、これが「個人」が構成する人間世界の究極の本性である、という結論に達しました。

その上で、「各人が、彼自身の自然、すなわち彼自身の生命を維持するために、彼自身の欲するままに彼自身の力を用いる自由」を「自然権」として概念定義し、そうした権利の行使される人間社会のありよう=「自然状態」を、「万人の万人に対する戦争」状態と表現しています。つまり「人間の自然状態」を、中世における牧歌的な良きものとしての意味合いではなく、極めて危険なもの、破壊的なもの、悲惨なものとして考えたわけです。

また同時に、ここで初めて、個人の権利=「自然権」を、それ自体自立的な概念として、つまり何故それがあるのかを問われない、(中世であれば、例えば「神」といった)根拠を全く必要としないものとして抽出しました。

しかし当然ながら、そうした権利が主張されるままであれば,人間社会は成り立ちません。そこで、ホッブズは、社会を構成するためには、そうした「自然権」を放棄する必要があり、その権利を捨て去ることを政治理論の基礎に据えたうえで、公共の福利(コモンウェルス)を第一として国家を建設すべしという国家主権論を主張しました。

 
  List
  この記事は 25562 への返信です。
  この記事に対するトラックバックURL  http://www.rui.jp/tb/tb.php/msg_25563
  ※トラックバックは承認制となっています。

 この記事に対する返信とトラックバック
126183 「人は人に対して狼になる」?? 松下直城 06/07/18 PM00
人権って何? 「なんで屋@奈良」 05/12/12 PM09
25815 Re:自然法、基本的人権とは何か−2 匿名希望 02/03/06 PM02
25564 自然法、基本的人権とは何か−3 岩井裕介 02/03/04 AM01

[過去の記事へ]
[一覧へ戻る] [新しい記事へ]


◆実現論本文を公開しています。
 実現論 : 序  文
 第一部 : 前  史
 第二部 : 私権時代
 第三部 : 市場時代
 第四部 : 場の転換
 参考文献

 必読記事一覧
01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28
大転換期の予感と事実の追求
実現論の形成過程
自考のススメ1.未知なる世界への収束と自考(1)
自考のススメ1.未知なる世界への収束と自考(2)
自考のススメ1.未知なる世界への収束と自考(3)
自考のススメ1.未知なる世界への収束と自考(4)
自考のススメ2.現代の不整合な世界(問題事象)(1)
自考のススメ2.現代の不整合な世界(問題事象)(2)
自考のススメ2.現代の不整合な世界(問題事象)(3)
自考のススメ3.自考力の時代⇒「少年よ、大志を抱け」(1)
自考のススメ3.自考力の時代⇒「少年よ、大志を抱け」(2)
1.これから生き残る企業に求められる能力は?
2.私権圧力と過剰刺激が物欲を肥大させた
3.市場の縮小と根源回帰の大潮流
4.共認回帰による活力の再生→共認収束の大潮流
5.自我と遊びを終息させた’02年の収束不全
6.同類探索の引力が、期応収束を課題収束に上昇させた
7.情報中毒による追求力の異常な低下とその突破口
8.大衆支配のための観念と、観念支配による滅亡の危機
9.新理論が登場してこない理由1 近代観念は共認収束に蓋をする閉塞の元凶となった
10.新理論が登場してこない理由2 専門家は根本追求に向かえない
11.学校教育とマスコミによる徹底した観念支配と、その突破口(否定の論理から実現の論理への転換)
12.理論収束の実現基盤と突破口(必要なのは、実現構造を読み解く史的実現論)
近代思想が招いた市場社会の崩壊の危機
新理論を生み出すのは、専門家ではない普通の生産者
現実に社会を動かしてきた中核勢力
私権時代から共認時代への大転換
市民運動という騙し(社会運動が社会を変えられなかった理由)
民主主義という騙し:民主主義は自我の暴走装置である
統合階級の暴走で失われた40年
大衆に逆行して、偽ニッチの罠に嵌った試験エリートたち
新理論の構築をどう進めてゆくか

『るいネット』は、47年の実績を持つ起業家集団・類グループが管理・運営しています。るいネットワーク事務局(Tel:0120-408-333, E-mail:member@rui.ne.jp