るいネットで、独自に計測した放射線量が発表されて1ヶ月たった。最新の佳作記事は252937だが、日々発表される事実としての数値データは信頼に足る。政府発表の内容を信じられない現在にあっては、大変有効で有難いものである。
さて、この放射線量のデータから察するに、今のところ福島第一原発では大きな破綻は起きていないようだ。この状況から好転していくことを祈るばかりだが、原子炉の密閉性はすでに失われ、放射性物質が漏れ出ていることに変わりはない。今後、我々の関心は、低線量被爆に対する長期的な影響を考えていく段階にうつっていくだろう。その際、是非とも注意しておきたいことがある。
■なにもわかっていない
低線量被爆についてネットで調べてみると「全くわかっていない」ということがよくわかった。
人類史上、大量の放射性物質が人工的にばら撒かれた経験はほとんどない。それによって多くの人々が人工的に被爆した事例は広島・長崎の原爆しかない。米国はこれに合せて長期間追跡調査しているが、それすら「生き残った丈夫な人々」を対象にしたもので、万能なデータとしては使えないという。
■恣意的な意図が介入できる余地が多分にある
厄介なのは、放射線の影響が生体という個体差を含めた不確定な要素に対して起こることである。したがって、疫学等の統計学を多用した分析に頼るしかない。この統計学というのは、サンプルの取り方や分析の切り口によって結果がぶれる。かなりぶれる。だから、色々な学説が存在する。
意地悪な見方かもしれないが、定説が存在しないということは、恣意的な意図が介入している可能性が高い。統計学を多用した分析は、特にその可能性が高い。放射線ホルミシス効果などという原発推進派にうってつけの学説が存在する時点で、恣意的な操作を行っていることは明らかである。
■学者バカ
学者は、放射線の影響を受けた場合の“しきい値”について議論したらしい。放射線量により疾病を発症する明確な境界線があって欲しいという気持はわかるが、そんなものあるわけがない。放射線の影響を受けるのは、同一仕様のロボットではない。相手は、生体だ。個体差を含めた不確定さの塊である。それを考えれば、しきい値の議論など全くの無意味である。誰のために議論しているのか、対象を見失った議論は、学者バカの産物である。
■基準値として採用されるICRP
放射線の線量規制は、ICRP(国際放射線防護委員会)の影響が大きい。国際的な専門家(学者)の集まりで権威があるものとされている。IAEAのご意見や、日本の法令もICRPの基準値によって設定されている。
しかし、このICRPには批判が多い。評価の仕方が硬直的であるという意見もあるし、構成員が各国の諮問機関等のメンバーとダブっているという怪しさもある。政治的影響から独立しているとは考えにくい。
ICRPと対比的に設立されたECRR(欧州放射線リスク委員会)は、専門家以外も構成員にいるといい、こっちの方がまだ信用できる意見を述べてくれるような気がする。
なんだか、疑わしいところばかり書いてしまったが、これが現状認識だろう。
「なにもわかってない」。我々は、このことを謙虚に受けとめて「これからどうする?」を考えていかなくてはならない。無用な権威等に誑かされる事のない「素人の視点」が実は一番有効なのだと思えてきた。
<参考>
・低線量放射線被曝のリスクを見直す:リンク
・レントゲン、CTスキャン、ボディースキャナーなどの医療被ばくによる発がんリスクまとめ:リンク
・低線量被ばくの人体への影響について:近藤誠・慶応大:リンク
・最近の低線量被曝の影響に関する話題 :リンク
・連載・低線量放射線の影響をめぐって(その1) :リンク
・放射線と生命 :リンク
・年間限度線量の被ばくでも発がん:リンク
など |
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