政治:右傾化の潮流
252315 日本の革命思想(陽明学)、神国日本及び紅卍字会(老荘思想)が合流する戦前戦後の東洋思想指導者、安岡正篤氏
 
レオンロザ ( 中南米 ) 11/05/31 PM01 【印刷用へ
戦後、歴代首相の指南役といわれている、陽明学者の安岡正篤(やすおかまさひろ)氏が存在する。

この安岡氏は、陽明学、神国日本(勤皇思想)と紅卍字会(老荘思想)が合流する地点に存在する。

明治維新に向かう激情をつくったのは、尊王攘夷である。尊王とは、天皇家を日本統治の第一人者とすることであり、攘夷とは外国(西欧列強)の打ち払いである。

この尊王攘夷の思想には、江戸期の儒学の中で、主に「陽明学」が関係してくる。

江戸幕府・武士階級は、観念として儒教に収束している。(因みに鎌倉武士は仏教である。)
その儒教の中に、支配秩序を重んじる朱子学と現実世界の変化に対応することを重視する陽明学の二つの系統が並存する。
陽明学の徒は、水戸学(うち陽明学の系譜)、吉田松陰、大塩平八郎であり、いずれも、当時の幕府支配の転換を行動方針にしてくる。

日本の陽明学は、儒教の中の「易姓革命」(天命を革める)、つまり、天命により支配体制を交代させるという思想が強く組み込まれていく。

一方、江戸中期以降、国学(日本学)が儒学や仏教に対する批判的学問として、本格的に取り組まれる。「神国日本」の登場である。

国学を体系化し学問として完成させたのが賀茂真淵。真淵は儒教的な考えを否定して『万葉集』に古い時代の日本人の精神が含まれていると考えてその研究に生涯を捧げた。
真淵の門人である本居宣長は『古事記』を研究して、古い時代の日本人は神と繋がっていたと主張して「もののあはれ」の文学論を唱える一方で『古事記伝』を完成させた。

宣長門人の平田篤胤に至って、宣長の持つ「古道論」を新たな神道である「復古神道」に発展させた。彼の思想は江戸時代後期の尊皇攘夷思想にも影響し、日本固有の文化を求めるため、日本の優越性を主張する国粋主義や皇国史観にも影響を与えた。

陽明学の「革命」思想と「神国日本」が合流する所に、「尊王攘夷」という行動指針が提起されたのである。

一方、中華民国の時代になって、中国で一つの思想運動が登場する。道院紅卍字会である。

道院を設立するきっかけは、山東省の役所にある仙人を祭る祠で、フーチという神託法により神霊の降臨と訓示を仰ぎ、世界の最高神以下三人の神(仙人)が降り、神託を啓示したことによる。

世界紅卍字会(せかいこうまんじかい)は、1922年(大正11年)に中華民国の道院という宗教組織の慈善博愛の善行を行う事業執行の付属施設の一つとして組織された。道教系の修養団体及び慈善団体。戦前の中華民国では赤十字社に準ずる組織として活動した。

そして、日本の道院紅卍字会は、大本教の出口王仁三郎が中心となり設立され、林出賢次郎(満州国書記官)、呉清源(昭和の碁聖)、笹川良一、植芝盛平(合気道の創設者)、安岡正篤(陽明学者)が入会している。因みに、安岡氏の道名は誠恪である。

参考:世界紅卍字会日本総会
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この安岡正篤氏の軌跡をみる。

現在の大阪市中央区生まれ。少年期、母、近所の神社のおじさんなどから、四書五経の素読を授かる。1922年(大正11年)に東京帝国大学の卒業記念として執筆され出版された『王陽明研究』が反響を呼ぶ。

大学卒業後に文部省に入省するも半年で辞し、「東洋思想研究所」を設立、当時の大正デモクラシーに対して伝統的日本主義を主張した。拓殖大学東洋思想講座講師をする傍ら『日本精神の研究』『天子論及官吏論』などの著作を発表し、一部華族や軍人などに心酔者を出した。1927年に酒井忠正の援助により「金鶏学院」を設立。

金鶏学院は軍部や官界・財界に支持者を広げて行き、1932年には「日本主義に基づいた国政改革を目指す」として、酒井や後藤文夫、近衛文麿らとともに「国維会」を設立し、新官僚の本山となった。同団体から、斉藤や岡田両内閣に、後藤や吉田茂(後に首相になった吉田茂とは別人物)、廣田弘毅ら会員が入閣。

「二・二六事件の首謀者西田税らに影響を与えた一人」とも言われる。北一輝や大川周明の猶存社のメンバーでもあった。年上である八代六郎(元海軍大将)、山本五十六、更には中華民国総統の蒋介石などとも親交があり、第二次世界大戦中には大東亜省顧問として外交政策などに関わった。

戦後も、政財界とのパイプは保ち続け、自民党政治家のアドバイザーとして主に東洋宰相学、帝王学を説き、彼らの「精神的指導者」「陰の御意見番」「首相指南役」の位置にあり、東洋古典の研究と人材育成に尽力する一方で、「体制派右翼」の長老としても政財官界に影響力を持ち続けた。また、「平成」の元号の発案者と言われている。

戦後歴代首相の指南役、安岡正篤氏は、陽明学、伝統的日本主義及び紅卍字会(老荘思想)が合流する地点から、「神国日本」の守護者として存在してきたのではないかと推察される。

なお、そうみるとベンジャミン・フルフォード氏の『世界紅卍字会が白龍会と同盟関係を結んだ』は、安岡正篤氏と黒龍会の指導者:内田良平(佐賀勤皇党の系譜)、頭山満氏(玄洋社)という戦前戦後の東洋思想の指導者の系譜が現在も一定の存在感があることを示している。

世界紅卍字会が白龍会と同盟関係を結んだ
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なお、フルフォード氏によると、黒龍会は白龍会にを改名したとある。
 
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